月曜日 午後六時三〇分 Ⅱ
月曜日は振替休日になった……。
手つなぎ鬼ごっこフォークダンスパーティーの後片付けは、驚くほど早く終わった。……みんな両手が使えるから……。
「お疲れ様でした」
「「お疲れ様でしたー」」
生徒会長が片付けの終わりを告げると、みんながバラバラに帰っていく……。またしても寂しい感じがした。楽しい時間、二度とは戻らない時間……。手をつなぐ必要がないと、手をつなごうと言い出し難いことに気付かされた。
ひょっとすると、校長先生も若い頃は俺達と同じような若者だったのかもしれない……。
「帰ろっか」
純香が……恥ずかしそうに右手を出してくる。昨日まで、あんなにずっとつないでいた手なのに……ドキドキとまた心臓が高鳴る……。
そっと指先が触れると、同じ温かさを懐かしく感じてしまった。
「おいおい一真、もうリアル手つなぎ鬼ごっこは終わったんだぜ!」
その声にギュッと力が入る。
「この暑いのに手なんかつないで、あー暑苦しい」
自転車の二人乗りがそう茶化して走り去って行った。
「そっちこそ、二人乗りして警察に捕まるなよ!」
「……舞子達の方がよっぽど暑苦しいわ」
あの二人は……もう周りも気にせずにラブラブ真っ盛りだ……なんか羨ましい。
「まあ、世の中には色んな手つなぎ鬼があるのよ」
「……? なんだそれ」
ちょっと頬が赤くなった。少し怒っているようで……ごめん、ぜんぜん可愛いです――。
夕方……凝りもせずに俺はまたゲームをしていた。
一週間前に比べると腕が落ちたのか分からないが……ぜんぜんゲームに集中できないことに気付いた。連続ログイン百日の目標が途絶えたからやる気も失せていたのだが、これは一つの節目なのかもしれない。
まさか大人になってまで連続ログインを目的に毎日ゲームをやり続ける訳にはいかない。自分の部屋なのにとても広く感じる……。
ゲーム機の電源を切ろうと手を伸ばした時――!
『フッフッフ。この度は、『幸せのリアル手つなぎ鬼ごっこ』のテストプレイ、誠にありがとうございましたぁ』
聞き覚えのある、甘いアニ声――!
「――おい、嘘だろ校長先生」
またしても、『幸せのリアル手つなぎ鬼ごっこ』の広告バナーがデカデカと表示される――!
『校長先生じゃないもん!』
……頭を抱えるよなあ……。画面の向こうには頭から粒の汗を流した校長先生が語り掛けてきているんだぞ……。
ウイルスよりも酷い――校長からの甘いアニ声ダイレクトメッセージ――!
『これから正規版本編がありますが、榊一真様はどうされますか? 正規版では、世界中のあらゆる場所で、さらに大規模な手つなぎ鬼ごっこを計画してま~すぅ。みんながもっと手をつなぎ合えば、もっともっと幸せが広がると思いませんか?』
「思わねーよ! それで罰則とかをやりだしたら、殆どテロだぞ――!」
『聞こえなーいでーすぅ』
うわ、いま物凄くイラっとしたぞ……。次は警察に捕まっちまうぞ――。
……いや、今のうちに警察に突き出した方がいいのかもしれない……。
『ぜひ、この機会に事前登録してお楽しみ下さぁい! ほら早くぅ』
「いい加減にしろ」
ヒヤリとしてしまう。ログインIDとパスワードは以前と同じで変更していないから――。
何も入力せずに「✕」を押すのだが……。
『幸せのリアル手つなぎ鬼ごっこ、スタートぉ!』
やっぱり言うと思った通りだ――!
「――だから、それをやめろって……」
校長先生、ぜんぜん懲りてないじゃないか――。
『フッフッフ』
で、次は誰が最初の鬼になるんだよ……。
だれか……校長先生と手をつないでやってくれよ……。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
ブクマ、感想、お星様ポチっと、などよろしくお願いしま~す!
また次の作品でお会いしましょう! フッフッフ!