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手をつながせる作戦


 生徒会に頼んで、本当に大丈夫だったのだろうか。逆に犯人を刺激してしまわないだろうか。

 そんな不安も、二時間目の始めにアンケートが配られて吹っ切れた。


「ええー、生徒会から緊急アンケートだ。授業の前に必ず書いて回収しろと教頭先生からの命令があった」

「「えー」」

「なんだよ、その緊急アンケートって」

「先生もよく分からない。なにやら、生徒のゲーム依存症を調べるための大事なアンケートらしい」

 ざわつく教室。配られてきたのは、俺が考えたアンケートに生徒会からの質問も追加されていた。

 ……勝手に追加された項目は三つだった。


 八、あなたは現在の生徒会についてどう思いますか。百文字程度で述べよ。(

                                               )

 九、あなたにとって、生徒会のあるべき姿を百文字程度で述べよ。(

                                               )

 十、あたなと共に歩んでゆく生徒会に、いいねを送ろう。(いいね)


 ※ 豪華プレゼント当選者の発表は賞品の発送をもって代えさせていただきます。


 ――なんだこの生徒会寄りの項目は――! 百文字って……一五分で書き終えられるのだろうか。さらには、豪華プレゼントが怪しい表記にすり替わっている――本当に当たりそうだと錯覚してしまう。


 ……隣で必死に百文字書こうとしている純香は……やはり真面目だ。純香が書いたのを丸写ししてやろうと考えている俺も、真面目なのかもしれない。


「アンケートをしてくれたのはいいけど、回答数が怖いわ」

 提出し終えると純香が小さな声で言ってきた。

 実際にプレーヤー登録されていると自覚している人の数だ。多くても怖いが……。

「自分がプレーヤーだと認識しているかどうかも分からないか……」

 かといって、ログインIDやアドレスとパスワードなどを聞き出したりすることはできない。


 漠然とした数は把握できても、アンケートだけで正確にプレーヤーを絞り込むのは不可能だろう。全員が名前を書いてくれるはずがない。俺だって……名前を書いていない。生徒会長のキスなんて欲しくない。

 副会長のキスなら……いや、欲しくない。欲しくなんかないぞ――。


 純香が名前を書いていて……なんか、がっかりしたのは内緒だぞ。



 昼休み、生徒会室へとお弁当を持って集まった。

 副会長が急須で緑茶を入れてくれる。手をつなぎながら弁当を食べる光景を珍しそうに見ないで欲しいぞ。

「本当にリアル手つなぎ鬼ごっこを楽しんでいるのだな」

 ……楽しそうに見えるようだ。

「楽しんでなんかいません。罰則が怖いから続けるしかないんです」

「犯人がどこの誰かするら分からないのと、どこから監視しているのかすらも分からないんです」

「……つまり、君たちはその見えない敵と一週間、戦い続けているということか」

「そうなんです! 楽しい部分もたしかにありますが、本当に大変なんです」

 一緒にトイレに行くのもそうだし、毎日着替えるのも大変だ。利き腕が使えないのにも苦労するし手汗も凄く気になる。自転車に乗るのも危険が伴うし、体育も見学しかできない。

「見ている犯人にとってはゲームなのかもしれませんが、恐ろしい罰則付きのゲームなんて、もうゲームじゃない。鬼のような恐ろしい遊び……リアル手つなぎ鬼ごっこなんだ――」

「……そのまんまだな」

「……」

 とにかく弁当を早く食べることに専念した。今は時間が一秒でも勿体ない。


 ご飯をたくさん口に放り込むと、喉が、キューンと水分を欲しがった。



「集計した結果、我が綿串律高校の生徒でオンラインゲームをしている生徒は七割。そのうち、おかしな広告バナーを見たことがある生徒は五割もいることが分かった」

「五割も!」

 リアル手つなぎ鬼ごっこのプレーヤーが五割……三〇〇人もいることになるのか――。

 松見の野郎……一人でなんて馬鹿なことをしでかしたのだ――。誰もログインしていない深夜に、ゲーム機の前で一人一人のログインIDとパスワードを入力して試している姿が目に浮かぶ……。

「そのプレーヤー全員を手つなぎ鬼にするには……全校生徒の協力が必要だな。協力してクリアを目指さなくてはならない。逆に生徒が罰則を怖れてしまえば……」

「クリアどころか、ゲームオーバーだ」

 最悪の事態に陥る。誰かが犠牲になってしまう……。


 はあーっと全員がため息をついた。

 諦めた時点でゲームオーバーなのかもしれないが、生徒の半数を占めるプレーヤーをどうやって集めて手つなぎ鬼にすればいいのか……。


「手をつながせる方法は、ゲームに無理やり巻き込むやり方じゃなくて……別の何か楽しい方法で手をつながせるのはどうかしら」

 指先を唇に当てて考えていた純香が、思いついたように呟いた。

「楽しい方法?」

 手をつなぐ楽しい方法って、いったいなんだ。

 ――ま、まさか、腕相撲か――「リアル手つなぎ腕相撲!」

「だめだ、対戦相手がずっと固定されてしまう! 同じ相手と何度腕相撲をしてもぜんぜん楽しくないぞ」

 皆に白い目で見られてしまった。腕相撲はないだろうって目だ……。


「……フォークダンスとかはどうかしら」

「うわ、凄く可愛らしい発想だ。こっちが赤くなってしまいそうだ」

「もうっ」

 頬っぺたをプウっと膨らまして怒る純香……やめてくれ、その仕草も凄く可愛いから……。


読んでいただきありがとうございます!

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