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友達か彼氏か


 俺と純香は付き合っているって嘘でまかり通っているが、如月と慎也はどう言い訳しているのだろうか……。

 三時間目の休み時間、手をつなぎ続ける如月と慎也の周りに人だかりができている。あれでは手を離しても狙撃できないだろう。窓際の席から俺と純香は二人の様子を伺っていた。


「ねえねえ、舞子ってどうして岬君と手をつないでいるの?」

「ひょっとして、このクラスで二組目の公認カップル誕生?」

「ちょっと、やめてよ。恥ずかしいじゃない。そんなわけないでしょ」

「そうだよ。俺達はまだまだカップルなんかじゃないさ。ただの、友達さ~!」

 調子に乗っている慎也は、さっきの惨劇をすっかり忘れているのだろうか。ガラスでも踏んだ方がましだったのかもしれない。


「んん? 二組目の公認カップルって、ひょっとして……わたし達が一組目なのかしら」

 他に教室で手をつないでいる男女を見たことがない。

「……あ、ああ。みんなに誤解されて……困るよなあ。ハハハ」

「ええ」

 ……こっちを見ずにそう答える純香。友達の舞子が心配でたまらないのだろうが、表情が見えないと、どんな気持ちで「ええ」って言ったのか、ぜんぜん分からないぞ――!

 ひょっとして、上の空。上の空って、どこ? 宇宙?

 他の男子が面白くなさそうな顔をしているが……大丈夫だろうか。喧嘩や質の悪い虐めにはならないだろうが、手を離すのだけは勘弁してほしいぞ。如月にまた危険が及ぶから……。



 昼食は四人で食べた。

 ラップに包まれたおにぎりは食べやすい。純香のお母さんに感謝しなくてはいけない。

「あれ、三人ともおにぎりなの」

「え、ああ」

 そういえば、純香の家に泊っていることなんて、一度も言っていなかった。言わなくても分かっているのかとも思っていた。

「へへーん、純香のお母さんの手作りおにぎりよ。羨ましいでしょ」

 いやいや、それって正々堂々と純香の家に泊っていましたと言っているようなものだぞ、如月!

「舞子と一真は昨日、わたしの家に泊ったのよ」

「と、泊まった――!」

 慎也が中腰を浮かして驚き……なにもなかったかのように座り直す。

「ちょっと、純香! なにバラしているのよ、恥ずかしいじゃない!」

 如月が三分の二ほどバラしていたのに……顔を赤くするなと言いたい。俺の顔こそ赤い。

「聞いてないぞ……。それも『幸せのリアル手つなぎ鬼ごっこ』の効果なのか」

「……効果というより、その影響だ」

「そうなのよ。そうでもなきゃどうしてわたしが純香と榊君のラブラブを邪魔するようにお風呂に……」

「――だああ! それ以上は言わないでくれよ!」

 なにがラブラブを邪魔するように~だ!

「そうよ舞子。わたしだって……好きで二日も続けて一真とお風呂に入ったわけじゃないんだからねっ!」

 ツンデレ――! 純香がまさかのツンデレ口調――!


「……そりゃあ……ダメだぞ。そんなことが他の皆にバレたら、皆『幸せのリアル手つなぎ鬼ごっこ』の虜になってしまうぞ。現に俺はもう、それだぞ……」

 ……そりゃ……そうなるか。

 鬼になりたい男子は山ほどいるだろう。だが、冷静に考えればそんな状況になれるケースは、少ないと思う……レアだ。いや、もっと冷静に考えれば、やっぱり鬼になんかなりたくないのが普通だと思う。

 俺は最初から鬼だったから……仕方なかったんだと言い訳したい。


 だが、今日はいったいどうするつもりだ。というか、俺もどうすればいいか考えていない。

さすがに三日続けて純香の家に泊めてもらう訳にもいかない。純香のお父さんも恐い。如月と慎也だって、まさか家に帰るわけにはいかないだろう。

 よし――。

「今日はカラオケボックスかネットカフェにでも泊まるか」

「岬君はわたしの家に来たらいいわ」

「わたしは……一真の家でもいいわよ」

「布団、干しておけばよかったなあ」

 ――一斉に皆が喋ると、なにがなんだか分からないだろ。どさくさに紛れて、慎也は何を言っているんだ――!


 結局、純香は俺の家に泊りに来る。慎也は如月の家へ泊まることに決まった。

 って――! 大丈夫なのか、如月は?

「え、本当にいいの如月ちゃん」

「うん。だって、手を放すと危険でしょ。わたしだって怖いもの」

「……」

 逆に危険だぞと警告したいのは……なぜだろう。普通は……手つなぎで男を家に泊めれば……十中八九、間違いが起こる――!


 ってことは、俺はひょっとして……。十中……二? 一? ひょっとして、レアなのか……。


読んでいただきありがとうございます!

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