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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

御伽夜伽

 

 最近の特殊出生率は年年下がっているらしくて、2.1人の子供を産まないといけないらしい。知らないよ、って私なんかは思う。こんな日本なんて国の将来知ったことは無いし。

 どうでもいいよ。でもそれはあくまで子供を産むということについての話。

 恋愛について、もっと深く言うなら、「好き」について、それが私が気になる話。

 一般的に、好きって言うのは子供を産むためのイニシエーションみたいなところがあると思うんだけど、ん?一般的じゃないかな?

 ともかく、子供を産むことは嫌いだけど、その前の段階の恋愛が私はしてみたいってずっと思ってる。なかんずく、他人をすきになってみたい。こう言っている時点で好きな人間とかは現段階じゃいなくて、あ、でも、付き合った人はいるんだよ?まぁでもああいうのって誰でも手当り次第告白してるんだろうなーって思うけどね、私って都合いいし。

 好きになれたらいいなーと思ってOKしたけど、やっぱり好きになれなかった。というか、みんな盛すぎだよね、やっぱり全員がキスを求めてきたんだよ。しかも初デートで。

 気持ち悪いなって思ったけど仕方なく毎回してあげてた。キスした後に行った飲食店のトイレでうがいしてたけどね。

 今付き合ってる彼氏は初デートじゃなくて三回目のデートだったからよかったなーと思いつつ同じ人間なんだろうなって思うの。結局男なんてみんな一緒だしね。最近よく聞くでしょ?清純派俳優が未成年淫行して書類送検×引退、みたいなやつ。

 一応今日も彼氏(好きじゃない)とデートなんだけど、他の女の子が考えるようなメイクをしよう、だったり、服を綺麗に、可愛く、とかは思わなくて、思えなくて、普通の服で出かけて普通の顔で行く。

「おはよう、待った?」

「ううん、待ってないよ。行こうか」

 付き合ってた男は大抵私が着いた後に待ち合わせ場所に来ることが多かったから、今の彼氏は有能なんだと思う。好きじゃないけど。

 今日はボウリングに行くという話だった。

 順調にピンを倒していく。楽しいなと愛想笑いをして時間を過ごす。あれ?私ってなんでここにいるんだっけ?

 彼氏は意外とボウリングが上手いみたいで、スネークアイでもスペアを取っていたりしていた。凄いな、と思う反面、こういう腕を見せたくてボウリングに来たのかなと思うとちょっと気持ち悪いなと思った。好きな人だったらそれさえも嬉しく思えたのかな。

 無事にボウリングが終わって帰ろうとした時、彼氏が一時間ぐらい時間が空いてるからホテルに行きたいんだけどと言われた。

 私は無垢だったから、違和感は感じたんだけど、まぁいいかと流してしまった。あんまり口を出したくなかったし。それに一時間ぐらいで何も出来ないだろうしなと思ってた。

 でも違った。部屋に入った瞬間彼は豹変した。

 前から女慣れはしてるなとは思ってたんだけど、すぐに服を脱がしてきて、ブラジャーも私の顔を見ながら外していた。あまりの出来事で、私は対応できなくて困惑していると、いつの間にか私は裸にされていた。

 お、君もやる気なの?嬉しいな。

 とよくわからない気持ち悪いことを言って舌を絡めてきた。私はここで舌を噛むべきだったんだけど、慣れてるのか、舌を私にピッタリとくっつけてきて噛んでしまえば私の舌まで噛んでしまって痛い思いをするからできなかった。というか、そもそもそんな気力がなかった。初めての被害で気が動転していて、乖離してしまったんだと思う。

 遠ざかる意識の中、彼がズボンを脱ぎ始めた時に、意識が戻ってきて、ごめん待って、今日は生理なの。と生理じゃないのに嘘をついてやめさせるように仕向けた。

「え?そうなの。そっかなんだよ残念」

 この一言にこの男の本性が詰まっている気がした。女をそういう目的でしか見てないってことがわかった。期待していた私が馬鹿だったなとも思う。人として愛してたんじゃなくて、玩具として愛してたに過ぎないって気づいた。だから、私は後日すぐに縁を切った。


 一ヶ月も経ったころ、つまりは私が高校を卒業した後、私は大学へは行かずに働かなきゃいけなくなった。私が通っていた学校はそこまで偏差値が悪いわけではなかったので、周りの同級生は有名企業の人もいたが、とにかく正社員で働く人が多かった。ただ、私はその道を選べたはずなのに選ばなかった。ずっと私は好きについて考えてしまっていたから。

 強姦被害にあって、少し男性恐怖が怒ったあと、それでも好きという感覚が欲しかった私は、3ヶ月程経った後にまた別の男と付き合いだした。級友から見れば私はビッチだって言われるんだろうなって思ったけど、まぁ、幸い、と言っていいのかわからないけど、友達はいなかったので失うものはなかった。

 だけど、得るものもなかった。

 つまりは、好きがわからなかった。

 実は、正社員で働くという人間の他に同級生と結婚するから働かないという選択肢を選んだ女子がいた。とても羨ましいと思った。なにせ、誰よりも幸せそうだったから。私もやっぱり知りたいと思った。

 働きたい職業がなかったので、好きを知れる場所に行こうと思った。

 そして辿り着いたのがこのキャバクラだった。先生に心配はかけたくないので、適当な会社の認定を貰ってから卒業してすぐにやめてキャバクラに入った。

 このキャバクラでは私が一番若いから、一番モテて指名ナンバーワンだった。そして、周りからの嫉妬もナンバーワンだった。

 ただ、好きにはなれなかった。40のおじさんが触ってはいけないという旨を伝えているのに胸を触ってくるのだ。笑って誤魔化して、店の人に指摘してもらうまで待つんだけど気持ちが悪い。そして、話も気持ち悪かった。大抵の男は、まず自分の自慢話をするのだ。俺は社長だ、俺はお金を持ってる、俺は有名企業に務めてる....etc

 みんな肩書きだけだった。

 ハロー効果を狙ってるにしても、さすがに自慢がすぎるし、すぐにセクハラに走るので好きになることは無かった。

 しかも、帰りに着けてきて、住所がバレて変な手紙がポストにあることもあった。

 これはとても馬鹿だったとしか言い様がないんだけど、キャバクラに来るような人間は、色んな女の篩にかけられて落ちてきた芥の人間しかいないという当たり前の事実に気づけていなかった。

 世の男性は、キャバクラで社員とのコミュニケーションをーとか言ってるけど、もし結婚していたらこんなところには来ない。

 ここは、女にセクハラをして楽しむ場所だった。あれ?なんで気づかなかったんだろう。

 恋愛ごとがある場所、って考えてキャバクラかな?と思ったんだけどこんな場所だとは思ってなかった。恥ずかしいな、無知なのがバレちゃうね。体はムチムチだし社会は無知無知だ。

 だけど生きるためにはやめられなくてどれからグダグダと一年間やってしまった。ちなみにもう処女は捨てた状態で経験人数は二桁になっていた。また振袖に手を通していない未成年なのにダブルスコアも離れた人間は罪悪感もなく襲ってくるすごいなって思う。ある種の才能を感じる。

 そして、一年前は嫌がっていた好意をすんなりと受け止めてしまった自分にがっかりしていた。あの時は、好きじゃないとそう言うことはしないんだと思ってたのに、今じゃ全然できるようになってしまった。でも、気持ちよくなったことがないだけ、まだ救いようがあると思うの。わかんない、気持ちよくなった方が女として得なのかな?ともちょっと思ったりはするけど。

 だけど、最近良いなと思う人が出来た。その人は御曹司みたいで、身なりがきちんとしていて、今まで私が会う人間とは違った。なんというか、キャバクラにいては行けない人、ホストになれそうな人だった。

 初めは、お金を搾り取ろうという気持ちで臨んでいたんだけど、話術と言い、話し方や知性がいつも話す人よりもあって良いな、と思うようになり始めた。

 ほかのキャバ嬢からいつも以上の視線を感じるほどにいい人だった。

 年齢は20代後半らしいけど、私は結婚相手としていいなとも思っていた。要は、

 私は少しずつ好きになっていっていたんだと思う。

 これが好きっていう感触なのかなと5回目に会うあたりで気づき始めていた。話していて楽しいし、いつもキャバ嬢に靴の中に入れられていた画鋲もあの人のおかげで苦じゃなかった。ほかの嫌がらせもそう。あの人がいつか来るんだと思うと耐えられた。

 そして、他の男との性行為を断るようになり、いつしか、自分であの人を思いながら慰めるようになった。気持ちいいと思うことがなかったこの行為が気持ちいいと感じられるようになり、それはとても素晴らしいもののように思えた。本当はダメだと言われている連絡先の交換もひっそりと行って休日に会うことになった。

 しかも週に一回だ。

 私は、ほかの男なら二回目では100%ホテルに連れていかれていたので、勝手にこの人もそうなんだと思っていたけど、全然そうじゃなかった。遊園地だったり、カラオケだったり、公園だったり、と普通の場所でデートしていた。私は本当に好きだったから、ラブホでデートでも全然よかったんだけど、そんなことはなくて、残念だなと思いつつ、でもそんなところがいいなと思っていた。

 笑顔を盗撮して額縁に飾ったりもしていた。

 だけど、ある日、性欲が抑えられなくなった。多分あの人のことを考えすぎてたんだと思う。今まで人を好きになったことなんてなかったから、余計に性欲の扱いができなくて、好きが止まらなくなってしまった。だから、今日はホテルに誘うんだ、そう決めていた日のことだった。

「君のことが好きだ。付き合ってくれないか?」

 急な話だった。それはミシュラン三ツ星のレストランで言われた。いつも行っているような場所ではなく、お値段が高い場所だったのでどうしたんだろうとは思ってたんだけど、そういうことかって納得した。

 と同時にすごく嬉しかった。

 二つ返事でお願いします。と答えた。

 そして初夜を迎えた。

 それからしばらくして、私はその人と結婚を考えるようになった。付き合って六ヶ月も経つが、倦怠期なんてなくて、ずっと楽しかった。私たちは相性がいいんだと思った。だからずっと結婚したいって言ってくれるのを待っていた。

 たけど、バラ色になると思っていた人生は途端に玉虫色になった。

 それは、ある日のことだった。

 突然会いたいと深夜に言われて、彼の家に会いに行ってみると、

「実は俺には嫁がいるんだ」

 と衝撃な告発をされた。

 咄嗟のことで唖然となってしまって何も言えなくなった。

「私を愛してるって言ってくれたのは嘘なの?」

「いや違うんだ。それについては嘘じゃない。だから、俺はずっと君と結婚するために嫁と別れようとしてるんだ。ただ、嫁が別れないと聞かないんだ。だから、僕は仕事を当分やめて嫁と争うことにしたんだ。だから、500万円俺にくれないか?裁判費用として」

 訳が分からなくて一度彼の家に出ようと思った時に、後ろから彼に抱きしめられて、

「ごめん。俺が悪いのはわかってる。でも、お前のことが好きなんだ。お前と結婚したいんだ、お前じゃなきゃダメなんだ。俺、お前がいないとなんにもできなくて、お前が、お前だけが支えなんだよ。だから頼む。お願いだ」

 ずるいよ。

 こんなこと言われて抜け出せるわけないじゃん。好きなのに裏切れないよ。

 キスをして、ベッドで一緒に深い夜を過ごして仲直りした。

 キャバ嬢の儲かりはよかったので500万円はすぐに用意ができた。とはいえ、少し痛い出費だったが、結婚できるんだと思えばそれぐらい苦しくなかった。嬉しかったから。

 結婚してるのはショックだった。

 でも、結婚したいと思うほどいい男なことはわかるし、仕方ないかなと思った。

 そして、これは本当によくないと思うんだけど、結婚してる男性と蜜月になって逢瀬してるという事実に興奮もしていた。

 もし結婚するならキャバ嬢を辞めたいなーと思っていた時、

「ごめん。弁護士費用に100万円かかるみたい。あと、本気で裁判したいから、仕事辞めちゃったんだよね。生活費用として6ヵ月戦うと思うから600万円くれない?」

 ここで、少し疑うべきだったけど、当時の私は嬉しいと思ってしまって素直にお金を払った。その後も、

「ごめん。仕事辞めたんだけど、なんか儲かる話があるらしくて300万円必要なんだよね」

「ごめん、探偵を雇いたいから100万円必要なんだよね」

 逐次お金を請求するようになって、いつしか会う時間がお金を渡す時間と、それを不服に思った私を宥めるためにベッドで濃密に過ごす時間しかなくなっていった。

 デートがなくなっていった。

 でも、結婚するためには仕方ないんだ。

 そう思って2ヶ月払い続けた。

 合計額は1500万円は超えていると思う。

 そんなとき、急に彼と連絡が取れなくなった。彼の家に行ってみると、引っ越したと大家に言われてしまった。彼の名前は知っていたので、探偵に聞いて調べて貰うことにした。

 すると調査結果は、私が知っていた名前は偽名で、しかも、ほかの女にも同じようなことを言ってお金を貰っていたらしい。

 簡単な話、結婚詐欺というものだ。

 私は結婚詐欺師に騙されていたのだ。

 ずっと、「好き」を求めていた。ずっと、「好き」が知りたかった。

 そして好きを知ることが出来た。

 出来たのに、こんなにも苦しい。

 私は利用するために生まれたの?

 結局私は男に利用される運命なんだ、あの人も玩具としか見てなかった。

 探偵には、証拠を突きつけてお金を取り返しましょうか?と言われたけど、私にはそんな気力が残ってなかった。

 それに、偽りだとしても私には好きを教えてくれた人だからそんなことは出来なかった。

 あぁ優しいな私。

 優しいからこうやって利用されるんだよ。

 また好きが分からなくなってしまった。

 私の人生ってなんなんだろう。

 なんのために、生きてるんだろう。

 好きってどんな味なんだっけ。

 また最初からだ。元通りになってしまった。

 その失意のままキャバ嬢をやめてしまっていた。

 好きが知りたくて悩んでいたのに、

 好きの快楽が忘れられなくなってしまった。

 好きなんて知らなくてよかったのに。

 好きなんてなければいいのに。

 あぁ、でも愛されたい。

 愛されたいなんて、二年前まで言わなかったのに、あーあ。

 でもとりあえず働かなきゃいけない。


 苦しんでいたって誰も助けてくれないから。

 私がなんとかするしかないんだ。

 絶対に今度はキャバ嬢なんてやらない。

 まともな職に就くんだ。まともな職に就いて、普通の人に愛されて結婚するんだ。

 やっぱりキャバクラに来る男なんて碌でもないんだ。まだ私ならやり直しが聞く。若いんだから。これからなんだから。だから絶対に私はもう夜職に就くことなんてしないんだ。

 そうして新しい職場を見つけた。

 新しい職場で、あの人のように偽名を使って私はこう名乗った。

「こんばんは、デリバリーヘルスのマイカです。」 

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