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今夜、月より彼女が綺麗に見えたなら  作者: 九丸(ひさまる)
3/5

月夜の晩は嫌なんだよ3

「ねえ、なんかすごく嫌そうな感じが滲み出てるんだけど」


 突然ぶつけられた言葉が痛い。


「い、いや。そんなことはないよ」


 亜希は前を向いたまま続ける。


「わたしと歩くの苦痛?」

「そ、それはない。違うんだ」


 俺は慌てて否定した。そう。違うんだ。亜希と歩くのが嫌なんじゃない。亜希と一緒に月を見るのが怖いだけなんだ。



 あれは五年前。ゴールデンウィークに実家に帰省した際、親父と居酒屋に行った帰り道だった。


 穏やかな夜風に吹かれながら、満天の星空に浮かんだでっかいまん丸の月に照らされていた。そんな光にあてられたわけでもないだろうが、古びた商店街を歩く親父の口は饒舌だった。


「いいか響一。隣に立ってる彼女より月の方が綺麗に見えたら、それは別れ時だ」


 俺も酔っていたせいか、笑いながらその話に興味を持った。


「なんだよそれ。おもしろい話だね。親父の持論?」


 バカにするなという顔を俺に向けて力説し始めた。


「そうだ。俺の持論だ。文句あるか? 考えてみろ。月は確かに綺麗だ。今夜の月なんて特にな。あれ? スーパームーンか? でっけえなあ」


 筋がそれそうだっので、俺は先を促した。


「そうそう。だからな、月が綺麗なのは当たり前。でもな、好いた女ならそれ以上に綺麗なはずだろ? 月に負けるわけないんだよ」


 親父は赤ら顔で自信満々だ。


「そりゃあ、波もあるさ。微妙な時だってあるだろう。でもな、負けてなきゃ大丈夫。まだ続けられる余地はある。もちろん努力は必要だけどな」

 

 



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