話し合い
「・・・帝国ぅ?何いってんだ、俺はただのC級ランクの冒険者だよ。何いってんだ、お前」
ただの冒険者ってのは無理があるけど帝国ってのはぶっ飛びすぎじゃない?
私がそう思っていると、ベルゼブブはちらりとこちらを見て説明口調で話し始めた。
「”匂い”ですよ。野菜や果物などは地面から水を吸い上げる時にその土地の魔脈から魔力を一緒に吸い上げ、水は光合成などで使用されるので魔力はされます。つまりその土地の魔力に強く影響されるのです。
魔力は土地によって”匂い”が違います。食べ物から摂取して蓄積した魔力を嗅ぎわけることで人間ならある程度の出身地や生活のランク、魔物なら生息地や”匂い”の濃さから強さも推定することが出来るのです。
特に、帝国はマアル魔脈を中心に発展したことは歴史で習ったと思いますが、この魔脈は”匂い”のクセが強いので分かり易いのです。一般人だと分からないでしょうが、ある程度魔力に慣れていれば嗅ぎ分けることが出来るんです。お嬢様ほどのお方なら訓練を積みさえすればすぐにわかるようになります。」
「で、俺らからマアル魔脈の”匂い”とやらがしたって訳、か」
お嬢様に向けて話していたのですが・・・とベルゼブブは少し苛立ちを露わにしたが、すぐに気を取り直して続けた。
「端的に言えばそうです。王国と帝国の間ではここ二百年の間入国制限が行われてますからね。それに、マアル魔脈の匂いがする人間がわざわざ数あるギルドの中で最も身分調査の厳しい冒険者ギルドにいる、というのは何かあると考えた方が自然でしょう。冒険者である、ということは王国内での自由が大きく広がりますからね。危険を冒してまででも取得したいでしょうね、王国を調べるため潜入してきたのであれば。」
リーダーらしき男は真剣な表情でベルゼブブの話を聞いていたが、やがて何かを決めたようで元のニヤついた笑いに戻った。
「へぇ〜、やるじゃねえか。じゃあ、俺の所属してる部隊も、ってそこまでは分からないか。ま、それは教えてやるよ。”濡れ鼠”だ。二十年ぐらい前から雇われ傭兵をやってる。そこそこ大きい組織なんだが、知ってるか?
俺らはその”濡れ鼠”の中の一つのチームで、帝国の諜報機関”竜の目”に雇われて働いてる。今の仕事は王国最強と名高いファーベル家の跡継ぎの始末、だったんだがさすがは最強と呼ばれるだけあるな。今あんたに瞬殺されたの、うちのチームの精鋭達だったんだぜ。」
おそらくその決めた何かが関係しているのだろう、先ほどまで誤魔化そうとしていたにも関わらずペラペラと、おそらく一番秘密にしておかなくてはいけない組織やチーム、そして依頼主と依頼内容について話し始めた。
「何のつもりだ?」
どうやらベルゼブブもその点を気になったようだ。怪訝そうに尋ねた。
「そう怪しむことはない。俺らは帝国直属じゃなくてあくまで雇われだ。確かに金をもらえば働くが、命が危ねえんならその仕事からは手を引く。その証として情報を公開しただけのことだ。つまり、俺らじゃお前たちには勝てねえ、って認めたってこと。で、どうする?これでも信用できないってんならどうしようもないが。」
どう致します?とベルゼブブが念話で聞いてきた。
うーん。攻撃してこないのなら見逃してもいい、かな。
「わかった。しかし、次手を出してくるようなことがあれば、容赦はしないぞ。」
わかってる、そんなバカはしねえよ、と言ってリーダーらしき男と素お仲間たちは去って行った。
これで危機も去ったことだし、仲間探しに戻るか!