転生
不定期で投稿します
カチャカチャカチャ。真っ暗な部屋にキーボードを叩く音が響く。
カーテンを閉め切り、パソコンに向かう姿はまさに引きこもり。
クラスに馴染めず、休みを繰り返すうちに、頭の中から外に出るという考えは消えていた。
不登校歴は明日でちょうど二年。祝ってもいいかもしれない。そして、相変わらず外に出るつもりはない。
新しい生活を始める気はないが、新しいゲームは大好きだ。
今はこの前セールで安くなっていた戦略ゲームをしているが、なかなか難しい。
「うっわ、同盟破って侵攻してきた!まじかー、今はきついってー。」
一回目はボコボコにされ、二回目もボコボコにされ、次こそは!と意気込んで始めた三回目も早くもピンチに追い込まれている。
「イージーのくせに敵強すぎでしょ。もっと手加減してよ。」
AIにキレつつコペットボトルに手を伸ばす。持ち上げた軽さで中身がないことに気づく。
そーいやさっき飲み干したんだった。新しい飲み物を取りに行こうとゲームを一時中断し、立ち上がる。
その瞬間、立ちくらみを起こし地面に倒れこむ。…パソコンのコードを引っ張りながら。
視界が暗くなる中、最後に見えたのは私に向かって落ちてくる27インチのモニターとどデカいスピーカー。
結果はご想像通りだろう。パソコンは私の頭に直撃、物音に気付いた家族が倒れている私を発見、すぐに病院に搬送されたが間に合わず死亡。原因は頭部の打撲。
こうして、私の引きこもり生活は幕を閉じたのであった。
…これで終われば良かったのだけど。
目がさめると、ラノベなんかでよく見た光景。小さくてプニプニした手、短い足、ふくよかなお腹。
いわゆる転生ってやつだろう。死んで転生、ど定番の展開だ。
ただ、定番じゃない部分が一つ、私の目の前に浮かんでいるコマンドバーだ。
非常に見覚えがある。当然だ。さっきまで見ていた戦略ゲームのものなのだから。
よくわからないが、私は、戦略ゲームのコマンドバーを持って転生したらしい。