そして、朝
朝、ミア王女が目を覚まし、服を着替えているとドアをノックする音が聞こえた。
よほど焦っているのか、荒々しい音だ。ミアは首を傾げる。
時刻はまだ07:03頃。日が出て間もない。こんな時間に何の用か?
ミアはドアにいそいそと近付く。
「はい、どなたでしょうか?」
「姫様。ネリオ伯爵が殺害された件について姫様に伺いたいお話がございます!!」
「え?・・・えっ!?・・・・・・ええっ!!!」
最初、意味が理解出来なかったのかミアは呆然としていたが、やがて意味が理解出来たらしく愕然とした表情で大きく目を見開き、声を上げた。
朝の一幕であった。
・・・・・・・・・
王城、ネリオ伯爵が借りていた一室。其処に、騎士と兵士達が集まっていた。部屋の中心には大きな血のシミが広がっており、それを国王とミアが真剣な瞳で見ている。
国王の傍に控えた魔術師の一人が、部屋の隅に隠していた水晶球を取り、国王の前に掲げる。
すると、水晶球から光が溢れて昨夜の光景が映し出された。
景色と音声を記録する魔術道具だ。売りに出せば、豪邸が一件は買えるだろう貴重品だ。
このような魔術道具は秘匿される物なのだ。
・・・まあ、それはともかく。
其処に映っていたのは、ネリオ伯爵と私兵が密談を行っている場面だった。話の内容から察するに、恐らくは信長の暗殺を目論んでいたのだろう。
ミア王女を助け出し、自身の出世を目論んでいたらしい。中々腹の黒い話だ。クルトは呆れ返った。
しかし———
「っっ!?」
瞬間、ミアの表情が驚愕に染まる。其処に、一人の青年の姿をした魔物が現れたからだ。
魔物。そうとしか呼べなかった。青年は魔の気配を放っていたからだ。
どす黒く、邪悪な魔の気配。心胆寒からしめる、邪悪な笑みだった。
青年は信長の分身を名乗り、即座に私兵を殺害した。そして、直後に暗闇に呑み込まれる映像。
何も見えない、暗黒の闇。それが室内を覆ったのだ。
「「っっ!!?」」
驚愕の表情を浮かべる、国王と王女。何も見えない。
聞こえるのは青年の哄笑と、何かを咀嚼する音。思わず、ミアは顔を蒼褪める。
それは、伯爵の殺害される場面だった。映像は此処で終わった。
「以上ですな。もはや、彼の魔王信長が関与しているのは間違いありますまい」
宮廷魔術師長、クリフォト=ノワールが慇懃に告げる。
そして、それを聞いた国王、クルト=マルクト=ジ=ステラが頷く。
「うむ。して此処からが本題なのだが・・・ミアよ、信長殿と昨夜何を話したのか?」
「・・・・・・それは」
蒼褪めた顔で、俯くミア。その時・・・。
「ふむ、それについてはわしから話そうか」
「「「!!?」」」
突如聞こえた声に、全員がぎょっとして室内の一点を見る。
果たして何時から其処に居たのか。其処には信長が居た。
ちょっとした豆知識。
信長は甘党だったらしい。好物は金平糖。