決着
初手は魔王マーラが放った。天を轟かす絶叫と共に、黒い嵐が巻き起こる。視界一杯を黒が埋め尽くし暴風が吹き荒れ、雷が轟き、桶をひっくり返したような豪雨が降りしきる。
それは、まさしく惑星すらも砕き魂魄すらも消滅させうる極大の災厄だ。魔王マーラの放ったこの黒い大嵐は当然の如く、物質界の法則から外れている。異界の法則により生み出された大嵐だ。
立っている事すらままならず、アルトラとアロウは片膝を着く。
・・・しかし。そんな中で、信長は悠然と嗤う。この程度、脅威ですら無い。
太刀を一閃する。それだけで、黒い大嵐は断ち切れて消失した。例え、異界法則であろうと魔王信長からすれば関係無い。そのような物、斬って捨てれば終わりだ。もはや、次元が違う。
そんな信長に、尚も魔王マーラは嗤う。いや、笑う。満足そうに。
「そうだ、それで良い。これで、これでようやく・・・・・・」
「満足して逝く事が出来るか・・・?」
その言葉に、マーラは穏やかに口元を歪めた。それは、遠回しの肯定だ。
対する信長は、興が冷めたように溜息を吐いた。或いは、本当に白けたのかもしれない。
「やはり、貴様は死にたかったのだな。いや、対等に戦える相手が欲しかったか?」
「・・・そうだ。わしは生まれ付いて、対等に渡り合える物が一人として存在しなかった。例え創世神であろうとわしが本気を出せば、恐らくはわしが勝つだろう」
生まれつき、突出した力を持つ魔王マーラ。全てを超越していたが故、それ故彼は世界そのものに飽きていたのだろう。だからこそ、己と対等に渡り合える存在を欲した。
そして、その為に魔王マーラは自身の化身である信長に期待したのだろう。
・・・何時か、信長が己の化身という枠を超えて対等の存在へ新生する事を。
・・・しかし。それを聞いた信長は心底面倒臭そうな顔をした。
「・・・・・・白けた。わしはもう帰る」
「何だと?」
魔王マーラは怪訝な顔をする。瞬間、信長は視線だけで魔王マーラの方を向き告げた。
「また、此処に来る。その時は一緒に酒でも飲もうぞ」
そう言って、信長はアルトラとアロウと共に帰った。その場に、魔王マーラが残された。




