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第六天魔王、異世界に降臨す  作者: ネツアッハ=ソフ
決戦、第六天魔王
30/34

暴走、信長

 信長の中で、何かが切れた。信長の意識が、寸断(すんだん)される。理性が吹き飛ぶ。


「ああああああああああああああっっ!!!!!!」


 信長は激情(げきじょう)のまま、波旬に鉄砲の銃口を向ける。しかし、波旬はその鉄砲を前に物怖じ一つせずに嘲笑を浮かべて見ている。鉄砲に対し脅威(きょうい)を感じていないのは明白だ。


 だが、それでも信長は躊躇(ちゅうちょ)せずに引鉄を引く。炸裂(さくれつ)。鉄砲の銃口から放たれた球状の弾丸は、狙い違わずに波旬の左胸に直撃した。筈だった。しかし、依然として波旬は笑みを浮かべたままだ。


 どころか、そもそも波旬の身体に傷一つ付いていない。かすり傷一つとしてだ・・・


 波旬にダメージは欠片も無い。しかし、それでも信長は波旬に鉄砲を撃つ。まるで、その表情は理性を失くした修羅(しゅら)のよう。そんな信長の様子に、アルトラとアロウは呆然と見ていた。


 しかし、それでも波旬は嘲笑を浮かべ、黙って見ている。その姿に、アルトラは何かを察した。


 ・・・そう、波旬が信長に何かしら干渉(かんしょう)をしたのだと。


「波旬、信長に何をしました?」


「ふはっ、少し精神に負荷(ふか)を掛けて暴走させてやったまでよ」


 何でも無いという風に、波旬はそう答えた。そう、今の信長は云わば暴走状態だ。


 自らの化身(アバター)たる信長の精神に干渉し、負荷を掛ける事で理性を壊して暴走させた。つまり、今の信長はそういう状態にあるという事だ。まさしく暴走状態だ。


 暴走しているが故に、理性など欠片(かけら)も存在しない。理性なき故、信長に声など届かない・・・


 信長は、鉄砲を捨て刀を抜いた。そして、そのまま斬り掛かる。しかし、それに対しやはり波旬は嗤うばかりで何もしない。只、其処(そこ)に立っているだけだ。


 波旬の肩に、信長の刀が食い込む。しかし、それだけだ。刀は波旬の皮膚(ひふ)一つ斬れない。


 そう、信長の刀は、波旬の薄皮一枚切る事が出来ない。


 信長は、影から眷属(けんぞく)である魔物の群れを召喚した。魔物の群れが、波旬に殺到する。それでも、波旬は身動き一つ取らずに立ち尽くしている。余裕の現れだ。


 魔物の群れは、一体だけでも山を(くず)す程の質を誇るだろう。そんな魔物が何十、何百と波旬に殺到し食らい付き襲い掛かる。しかし・・・


 事実、魔物の群れは波旬に触れた瞬間に自壊(じかい)して消滅した。波旬はまだ嗤っている。


 波旬にダメージは、欠片も無い。ありはしない・・・


「どうした?そんな物か・・・では、今度は此方(わし)の番だ」


 そう言い、波旬の人差し指が信長の額を突いた。それだけだ。それだけで、信長は吹き飛んだ。


 ・・・遥か彼方。五つの山を貫通(かんつう)して。

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