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第六天魔王、異世界に降臨す  作者: ネツアッハ=ソフ
決戦、第六天魔王
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信長の本音

(うそ)・・・だ・・・・・・っ」


 ようやく絞り出したその声は、(かす)れていて上手く言葉になっていなかった。その目は愕然と見開かれて唇はわなわなと震えていた。信じられない、そう明確に表情が訴えていた。


 嘘だ・・・。そう、再びその口から声が()れる。


 それも当然の話だろう。光秀が信長に受けた仕打ちは数え上げればキリがない。それ程までに明智光秀という男は追い詰められていたのだ。何時も信長は光秀に(つら)く当たっていた。


 ・・・しかし、信長はそれに対し(いな)と答える。それは違うと。


「嘘ではない。わしはお前を誰よりも認めていた。お前と真っ直ぐ向き合っていた。故に、お前の才能を腐らせないよう敢えて(きび)しく当たっていたのだ」


「・・・それは。では、何故それをもっと早く‼」


 言おうとして、光秀はそれを止めた。その答えは、既に明らかだったからだ。


 信長は心底呆れたように溜息を吐く。それは、あまりにも簡単な理屈。解りやすい理由だった。


「言えばどうなっていたか?其処からおごりが生じ、傲慢(ごうまん)へと発展していく恐れがあろう」


「それは・・・そんな事・・・・・・」


 光秀は、それを否定する事が出来なかった。それを否定する言葉を知らなかった。


 腐らせたくなかった。故に、厳しく当たっていた。


 信長が恐れていたのは其処だ。自身が評価されている事を知り、既に才能を認められている。それを知れば人はおごり高ぶる。自ら才能(さいのう)を伸ばそうとしなくなる。


 才能を伸ばそうとしなければ、人は腐るしかないのだ。腐った果実は切り落とさねばならない。


 ・・・それを、信長は恐れたのだ。故に、信長は敢えて光秀に厳しく当たった。その行動が、後に本能寺の変へと繋がったのは皮肉(ひにく)だが。それは、もはや後の祭りだ。


 信長は力なく笑う。それは、呆れや自嘲(じちょう)の念が含まれた複雑な笑みだった。


「全く・・・本当に馬鹿者(ばかもの)よな・・・・・・。それに、馬鹿者はわしもか・・・・・・」


「っ、それは・・・‼」


 何かを言おうとして、光秀はそれをためらった。何故それを言えようか?裏切り者の自分が、その他でもない自身が裏切った主君を(かば)おうなどと。それこそ断じて言ってはならぬ事だ。


 しかし、それを察して信長は皮肉めいた笑みを浮かべた。


「所詮、わしも馬鹿者(うつけ)よ・・・。家臣の裏切りは主の(せき)、所詮わしも未熟者という事か・・・」


 家臣の裏切りは主の責。それは、何よりも重要な事だ。


 家臣が裏切ったなら、それは主が未熟な証拠(しょうこ)。その責も果たせないで何が主君か?


 そう、自嘲めいた声で信長は断じた。尾張の大うつけ、それはかつて自身が呼ばれた名だ。


 それを、今更ながらに思い出した信長(うつけ)はそんな自身を皮肉気に笑った。

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