創世神、アルトラ
直後———波旬は言い知れぬ悪寒を感じ、背後に跳躍した。
「ぬっ」
波旬を眩いばかりの極光が襲う。無限光・・・その極光に、波旬は歓喜の声を上げる。灼熱の極光が周辺一帯を焼き尽くす。その余りの熱量に、大地がドロドロのマグマに変わる。
「貴様かっ、創世神アルトラっ!!!」
「少しおいたが過ぎましたね、波旬。貴方はやり過ぎた」
空間から溶け込むように、それは降臨する。創世神アルトラ、光輝を纏った女神が顕現した。
人類総てが醜い豚に思えるほど美しい顔立ちは、現在怒りに歪んでいる。それ程、この事態は女神には誤算でしか無かった。つまり、イレギュラーだ。想定外の事態だ。
故に、女神当人が降臨した。美しい顔を怒りに歪めて。
波旬はしかし、少しも悪びれない様子で嗤う。その顔は、ほんの僅かも動じてはいない。
むしろ、少しだけわくわくしている。
「そう言うな、創世神。貴様が我が化身をこの世界に送り込んだおかげで、わしも愉しめたのだ」
「私は、その為に織田信長をこの世界に送った訳ではありません。勘違いしないで下さい」
「はははっ、そうであろうな!!!」
波旬は心底愉しそうに嗤う。しかし、アルトラは不快そうに顔を歪める。嗤う波旬と、それを睨む女神という対極の二柱。この二柱が存在しているだけで、空間が圧力に悲鳴を上げる。
空間が、軋む音と共に歪んでゆく。その歪みにより、周囲一帯に特殊な重力場が発生する。
アルトラがその手に、錫杖のような杖を召喚し構える。しかし・・・
波旬はその手でそれを制した。口元に、余裕の笑みを浮かべて。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ははっ、そう急くな。今回はわしも愉しんだ。故、今は大人しく退くとしよう」
「逃げるのですか?」
「今は退く、と言ったのだ。何れ、機会があれば我が化身と共に我が領域に来るが良い」
———その時こそ、存分にもてなそうぞ。存分にな。
そう言って、波旬は信長にその身体の主導権を返した。その場に崩れ落ちる信長。
信長の身体に一切の傷は無い。そう、信長の身体に一切の傷は無いのだ。異様な程に。
・・・信長が元に戻った事を知ったアルトラは、ふぅっと深い溜息を吐いた。
「・・・・・・さて、この状況をどうしましょうか?」
アルトラは周囲を見回す。其処にはもはや荒れ果て、崩れ去った大地があった。その光景に、アルトラは思わず深く深く溜息を吐くのだった。もう、収拾がつく気がしなかった。
・・・本当に、どうしようか?アルトラは気分が重かった。




