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プロローグ

 皆さんは七夕に向けて何か願ったことはあるだろうか。

 そしてその願いは叶っただろうか。


 色とりどりの短冊に願いを書く。

 もはや恒例行事になっているが、一体誰が叶えてくれるというのだろう。

 織姫や彦星だろうか。

 はたまた星の力だとでもいうのだろうか。


 冷静に考えれば何とも妙な儀式だが、願いというもの自体がそういう不確かなものなのかもしれない。


 願い。

 それは未来に望むもの。

 こうあればいいなという理想。


 多くは自分のために、幾人かは他人や世界のために。

 何か成されよ、何か得られよ、何か起これと。


 内容は多種多様だが、短冊に記すとなると大抵はポジティブな内容だ。

 そう、その願いは言わば光。


 輝かしいものであるのだろう。


 しかし、どうだろう。

 願いとは本当に綺麗で素敵なものだけで構成されているだろうか。

 その意思は澄みきった心からくるものだけだろうか。


 きっとそこには裏がある。

 きっとそこには闇がある。


 誰かの希望は誰かの絶望。

 七夕には闇が潜んでいる。



 ※ ※ ※



 創設八十年。

 山間部に建つ第七中学校にも七夕の竹飾りが設置されていた。

 もちろんそこには生徒達が書いた短冊がぶら下がっている。


 本日は七夕。

 土曜日で授業はないが、七夕飾りを自由に見られるよう一般公開されていた。


 誰もが見られる場所にあるということは、誰に見られても問題ない内容だということだ。

 そう、言うなればこの願いは光。


 概ね素晴らしいと評されるようなものばかりだ。


 そんな第七中学校は古びた木造建築の校舎だが、夏休みには取り壊しが決まっている。

 老朽化が限界に達しているのだ。

 夏休みが明ければ仮校舎での生活が予定されている。


 一般公開がされているのもそういった経緯が理由だ。

 地元の人達に別れを惜しむ機会をと。


 しかし、当の生徒達はどうだろう?

 この校舎との別れを惜しんでいるだろうか?

 中学生という多感な時期に、悩みや心配事は山のようにあるだろう。


 そういう忙しい彼らにとっては、そこまで気になる事でもないのかもしれない。

 懐かしむほどの時間を生きてきたわけでもなく、現在進行形で生徒なわけだし。



 そういえば彼らの……特に一部の生徒の間ではとある話が噂になっていた。

 彼らが夢中になっているのはこちらの方だろうか。



 その噂はいつから、どこからささやかれ始めたのかは不明である。

 しかしこの日を境に、彼らは巻き込まれることとなったのだ。


 恐ろしい怪奇現象に。

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