午後の授業もおわり
「今日はここまでだ」
17時ちょうど、コラン先生の言葉でようやく授業が終わった。
教室に、ほっとしたような息が漏れる。
午前中は戦術、午後は魔法理論に属性制御、そしてマナ干渉の初歩。
内容はどれも難しくて、5歳の体にはちょっと堪える。でも、理解はできていた。不思議と、話がすんなり頭に入ってくるのだ。
——私は、やっぱりこの世界の“中の人”なんだなって、改めて思った。
「ふぁ〜……リィーエル、大丈夫? 疲れてない?」
隣の席から、バニラさんが優しい声をかけてくれる。
「はい。ちょっと疲れましたけど……でも、すごく楽しかったです」
「そっか。えらいえらい」
頭をぽん、と軽く撫でられて、少し照れくさくなる。
「おーい! おつかれさまーっ!」
扉が勢いよく開いて、元気な声が響いた。
入ってきたのは、昼間からハイテンションだったトマスさん。手には大きな籠が抱えられている。
「メイドリア、準備できてるってさ! ほら、歓迎会だよ歓迎会!」
「うおーっ!」
「トマス、もうちょっと静かにしなさいって……!」
周囲がざわざわと騒がしくなっていくなかで、私は窓の外をちらりと見上げた。
空はうっすら夕焼け色に染まり始めていて、学園の影が長く伸びている。
「……歓迎会、楽しみだな。どんな料理が出るんだろう」
ぽつりと呟いた声は、誰にも聞かれなかったはず。
でも、自分の胸の中に小さな火が灯ったような感覚があった。
これから始まる日々に、不安はある。
でも、それ以上に——今は、楽しみの方が大きい。
そんな自分の変化が、少しだけ誇らしかった。