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この星の名前は  作者: いちじく
第一章 学生編
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特級クラスへようこそ

「よし、一旦休憩だ。再開は半時からな」


 8時半に始まった授業も、気づけば10時。ようやく休憩。

 5歳だからといって授業が特別扱いされることはなく、内容は普通に高度だった。けれど、不思議と頭には入ってくる。


 マナ切れが起きた場合の応急処置と、そこから起こり得る二次災害。

 わからないところがあると、中級生や上級生が自然に補足してくれる構造。すごく効率的で、ちょっと感動した。


「俺はハルト! 中級生だ、よろしくな!」


「わっ、リ、リィーエル・サルバドールです」


「ちょっとー、かわいこちゃんいじめないでよ〜。あたしはバニラ。同じく中級生」


「はーい! 中級生のトマスでーす! リィーエル、食べ物は何が好き?!」


「んふふ。私は、トマスの“頭”ですかねぇ」


「げ、シーナ! 僕の頭は食べ物じゃないってば!」


「んふふ、冗談ですよぉ。リィーエル、よければ今度、実験に付き合ってくださいねぇ?」


 スパーンッ!


「あなたたち! 新しいクラスメイトが来て嬉しいのは分かるけれど、相手は“幼子”よ? そんな調子で話したら、怖がらせてしまうでしょう?」


「……マリアンヌ先輩、すみません」


「謝る相手は、わたくしではなくてよ」


「リィーエル、ごめんね」


「はしゃぎすぎちゃった、ごめんなさい」


「ごめん……」


 ハリセンで全員の頭を叩いたのは、とても綺麗なお姉さん。思わず見惚れてしまい、頬が少し赤くなる。


「だ、大丈夫です。むしろ、皆様がお声をかけてくださって嬉しいです」


「大人びてんな……本当に5歳か?」


「サルバドールといえば有名な商人家ね。教育が行き届いてるってことよ。さすが、というべきね」


 家のことを褒められるのは、ちょっと照れる。

 今は両親のおかげで評価されているけれど、いつかは——自分の力で、褒められたいな。


「そういえば、このクラス、ヒト族が多いんですね」


「ああ。ヒト族じゃないのは、俺とマリアンヌ、それから……ダージャくらいか? あとはみんなヒト族だな」


「そうね。ヒト族って、他のクラスにはいないし、ある意味この特級クラスは“ヒト族のためのクラス”なのよ。……まあ、本当の理由は別にあるけどね」


 トマスさんの言葉に、少しだけ首をかしげる。本当の理由って……?


「とりあえず、仲間の名前は覚えとけよ。改めて紹介する」


 そう言って、青髪の彼——ハルトさんがみんなのことを順番に教えてくれた。


「俺はカルフ族のハルト・ディー。コランの息子だ。中級生だけど、貴族じゃねぇし気軽に呼んでくれ。

 そんで下級生のトマス・カルマ。農家の息子で、最近は他の大陸にも出荷してるって話だ」


「うん。サルバドール商会のおかげでね。僕の父さんとリィーエルの父様は、昔からの幼馴染なんだって」


「……そうなんですね」


 知らなかった。家のこと、まだまだ分かっていない部分が多いな。


「中級生のバニラ・メルフォ。メルフォ家ってのは、通信機を開発した家系。あれのおかげで戦場の連携が段違いに楽になった」


「問題は“セル”よねぇ」


「そう。作るのが大変で素材もレアだから、値段が高くなる。庶民にはなかなか手が届かないわけよ。

 でも、もしあれが日常に広まったら……すっごく便利なんだけどなぁ」


 この世界には機械がほとんどない。もしも現代の技術者が転生してきたら、一気に文明が進みそうだ。


「上級生、シーナ・R・カルバニア。魔科学の名家出身だ。色んな魔法陣の原型は、カルバニア家の実験で生まれたって話。

 ……ただし、彼女に実験に誘われたら逃げろ」


「失礼ですねぇ。私はただ、興味のあることを試してるだけですのに」


「そのせいで、僕の髪型はこうなったんだけどね?」


「ふふふ、それもまた良きサンプルです」


 ……濃い。キャラがとても濃い。でも嫌いじゃない。


「次は上級生、カルフ族のマリアンヌ・G・スカディ。このクラスの委員長だ。貴族様だけど、いい意味で貴族らしくない」


「あなた、ほんとに貴族嫌いよね。初めまして、リィーエルさん。弟とはすでに顔を合わせてると聞いたわ」


「えっ……弟……? もしかして、メリフェル様のことですか?」


「ええ、あの子よ」


「……たしかに、目元が似ていらっしゃいますね」


「彼も母様似だから、すぐわかるの」


 そ、そうだったのかー! 女の人だと思ってたけど……良かった、性別の話しなくて!


「で、あそこにいる寝てるのが、下級生のグレム族、ダージャ・アリメシア。

 朝の休憩時間は基本、寝てるから気にすんな」


「ありがとうございます。では、私も——」


 座ったままの挨拶は失礼だ。前に出て、ちゃんと伝えよう。


「改めまして、リィーエル・サルバドールです。わからないことだらけですが、皆様にお力をお借りしながら頑張りたいと思います。どうぞ、よろしくお願いします!」


「硬いなー。もっとくだけてもいいんだぜ? 子供なんだからさ」


「逆に、ハルトはもうちょっと丁寧になろうよ」


「なんだとこの野郎!」


「いった! 髪ぐりぐりすんなって!」


 騒ぎながらも、皆の顔は優しくて。

 問題児クラスって聞いて不安だったけど、みんな温かく迎えてくれた。


 個性は強いけれど、ここなら——きっとやっていける。


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