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この星の名前は  作者: いちじく
第一章 学生編
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初めての教室、騒がしき仲間たち

 8時まで、あと1時間。

 起きたのは6時ちょうど。昨日と今日は、母様が持たせてくれたサンドイッチがあるので食堂には行っていない。そのせいで、まだメリフェル様以外の生徒に会っていない。……つまり、今、とても緊張している。


 髪型は大丈夫だろうか。寝癖はついてない? 顔に何かついてない?

 鏡の前で何度も確認しているうちに、気づけばもう7時半。慌てて、コラン先生の部屋へ向かった。


 確か、扉に向かって——


「『ハロー、ミスター・コラン。今日の天気は?』」


 すると扉に顔が浮かび上がり、こう答えた。


〈『ハロー、我が愛する生徒。今日は晴天だ』〉


 ゆっくりと扉が開く。まるで門番のような魔法。……すごい。


「失礼します」


「……ん? 誰だ?」


 部屋に足を踏み入れた瞬間、思わず言葉を失った。

 床は見えないほど書類と本に埋もれ、黒髪はボサボサ、眼鏡にはヒビ、ネクタイは緩み、教師の証であるバッジも斜め。

 第一印象は、ひとことで言えば——「だらしない人」。


「本日から特級クラスに入る、リィーエル・サルバドールです」


「サルバドール……? ああ、そんな話だったな。ステータス書が……確か……」


 そう言いながら、先生は紙の山に頭から突っ込んでいった。

 ……見つかる気がしない。ちょっとだけ、力を貸そう。


(私のステータス書……『目の前にある』)


 能力を発動。気づかれないよう、さりげなく。


「コラン先生、もしかしてこれですか?」


「ん? おお、そんなところにあったか! ありがとう。……ふむ、リィーエル・サルバドール。年齢5歳、マナ値は……なるほどな」


 何か納得したように頷いて、顔を上げた。


「すまんな。俺はコラン・ディー。特級クラスの担任だ。特級について、説明は受けたか?」


「はい。1階が教室、2階が寮で、食堂と運動場は他クラスと共用。……あとは、“問題児クラス”と呼ばれていることも聞いています」


「まあな。問題ばっか起こすやつが多いからな。特級は、下級・中級・上級が混ざってる。

 一気に上に行くやつもいれば、ずっと下のままのやつもいる。……どうやって上がるかは、まあ追々だ。時間もちょうどいいし、教室行くぞ」


「わかりました」


 立ち上がったコラン先生を見て、思わず後ずさった。た、高い……!

 メリフェル様よりもずっと背が高い。180はあると思う。猫背を伸ばしたら、それ以上かも。


「一緒に入って、紹介する」


「はっ……! はい!」


 気づけば、もう教室の前。心を落ち着けるため、両頬を軽く叩く。


 ——よし、頑張ろう。


 ♢✦♢✦♢✦♢✦♢✦


「おめーら、静かにしろー!」


「コラン先生〜、ハルトが寝坊です〜!」


「ああ? またか。『テレポート』対象、ハルト・ディー」


 青髪の青年が、空に描かれた魔法陣から“ドスン”と降ってきた。痛そう……。


「いてて……あ、おはよー、コラン」


「『アゴーニ』!」


「熱っっっ!! わっ、『ヴァダー』! ……っ、コラン先生、ごめんなさい!」


「わかればいい。さっさと席に着け」


 何が起きたのか、よく分からない……。

 コラン先生が火を飛ばして、青髪の彼が水で消した。

 ……って、家名が同じ。もしかして兄弟? 見た目からして……やっぱり兄と弟かな?


「新しいクラスメイトだ。リィーエル」


「はい。リィーエル・サルバドールと申します。ふつつか者ですが、よろしくお願いします」


「というわけだ。おめーら、5歳児に負けるなよ。リィーエルは前の席がいいな。そこに座れ」


「はい!」


 さっきまで賑やかだった教室が、私の自己紹介と同時に静まり返った。

 時間が止まったかと思ったけど、先生が話し始めたのでそうでもないらしい。


「さて、今日は戦術授業だ」


「普通に授業始めるなよ!」


「なんだ? 不服か?」


「不服っていうか……クラスメイトが増えるって聞いてなかったじゃないですか! 歓迎会とか! 歓迎会とか! 歓迎会とかー!」


「トマス、オメーは飯が食いたいだけだろ」


 トマトのヘタみたいな髪の子が、しどろもどろになっていた。かわいい。

 それを見て、さっきの青髪の彼がまた「歓迎会しよう!」と声をあげた。


 ……問題児クラス、って言われる理由が、なんとなく分かってきた。


「うるさいと燃やすぞ」


 コラン先生、見た目からは想像できないくらい、怖い。


「18時半、メイドリア集合だ」


「え?! 歓迎会?! ひゃっほーう!」


「騒ぐなっつってんだろ馬鹿息子。誰か、リィーエルを案内してやれ。……以上。授業始めるぞ」


 「やったー!」という声とともに、先生がチョークを投げた。ゴスッという音がしたけど、誰も気にしていない。

 そして、なぜか普通に授業が始まった。……気にしたら負けだ。




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