『水越歩』
「案内人……?」
この人なに言ってんだろう? 案内人……。私をどこに連れていこうとしているんだろう? そんな思いから私は訊いていた。
「はい。私は貴女を行くべき世界へ導く、ただの案内人です」
女の人は静かに語ると私を見たまま微笑んでいるだけだった。
「私を何処に案内人してくれるの?」
この疑問は当然だと思うの。だって、行き先も分からないのに連れていかれるなんて怖いし……。
「それを決めるには貴女の事を教えてもらわないといけませんね……」
「私のことぉ……?」
なんか良くわからない。目的地は決まってないのかなぁ? それなら何処に案内してくれるつもりなんだろう? 私のことぉ? 私の好きな場所に連れてってくれるのかな? それならあの有名なネズミがマスコットキャラを勤める遊園地か、美味しいケーキ屋さんがいいなぁ……。
「はい。貴女がどうしてここにいるのか……。まずはそれをお伺いさせてください」
どうしてここにいるのかって……。そんなのは私が聞きたい。だって……。
「えっと……。起きたら、なんか白い世界にいたの……」
私はこれしか言えなかった。だってこれしかないもん。私もなんでこんなところにいるのか、分からないんだから……。
「もう少し前の事を教えて頂けますか?
本日、貴女の身に起きたことを……」
案内人さんの静かな声が、頭の中に染み込んで来て、私は今日あった事を思い出していた。
そう、今日は……。