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アヌビスの翼  作者: ふんわり塩風味
水越歩の場合
1/16

『水越歩』

 気が付くと、私は深い霧の中を歩いていた。

 どうしてこんな所にいるのか思い出せないけど、とにかく先に進まなきゃって思いだけが頭を過る。

 前も後ろも霧しか見えない変な所……。足元も床なのか地面なのか分からないし……。

 だけど進まなきゃ……。この先になにがあるのか分からないけど、そんな気がする。

 こんなに霧が出てるのに寒くはなく、たくさん歩いたのに疲れてない。

 なんだか、夢の中にいるみたいな感じ……。

 歩いても歩いても一面真っ白……。

 なんだか、疲れて来ちゃった……。

 ああ、精神的にね……。体は元気、元気。

 でも、ね……、なんにもないところをただただ、歩いてると、前も後ろも右も左も分からなくなるし、時間の感覚も狂って、なにがなんだかわからなくなるの……。

 もう、歩きたくない……。

 だけど歩かなきゃ……。なんか知らないけどそんな気がする。

 そんな事を繰り返しながら歩いてたら、なんか広いところに出た。

 今まで歩いていたとこも広かったのかも知れないけど、霧で回りが見えなかったし……。

 だけどここは、遠くまで見える。と言っても、教室くらいかな? その向こうはやっぱり霧がもやもやってしてる。

 何故か霧が晴れている空間っていうのかな? まぁ、そんな場所を歩いていると、真ん中に大きなテーブルがあって白い着物の女の人が立ってる。

 ちょっと怖いけど、私はあの人に会いに来た気がするの。だから、話してみなきゃ……。

 私が近付くと、女の人は深くお辞儀をして、テーブルの傍らに並んでるソファーへ導いてくれた。

 これって座っていいってことだよね?

 ああ、でも、そんなに丁寧にしてくれなくていいのに……。 

 私がソファーに座ると、女の人も向かいに座って紅茶を淹れてくれた。

 それにしても、本当に綺麗な人……。

 少し青み掛かった銀色の長い髪を頭の上で結い上げて、白い豪華そうな着物を綺麗に来た、何処か人間離れした人……。

 人間って言うよりは、お伽噺の天女さまや雪女って言った方が相応しい気がする。


「えっとぉ……。こんにちは……」


 なにを言えばいいのか分からず、取り合えず挨拶をしてみた。


「こんにちは。水越歩さん」


 女の人は見掛けには寄らない優しい笑顔で挨拶を返してくれた。私はなんだかほっとしたけど、どうしてこの人は私の名前を知ってるんだろう?


「あの……、貴女は誰ですか?」


 変な話だけど、私はこの人に会いに来たのにこの人が誰か分からなかった。


「私は案内人です」


 女の人は柔らかな笑顔でそれだけ言うと、私を見つめるだけだった。

 

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