6話:冒険者と村の食堂
ジョーイとウィズは村に唯一ある食堂で食事をしていた。ここの店主であるマリーは、ポニーテールの似合うお姉さんである。
若くして店主になっているのには理由がある。最初に村に見せ構えたマリーの父親であるポールの作る飯は不味かった、そうとにかく不味かった……ただ食堂はここしか無い為、客はどんちゃん騒ぎをする為に仕方なく、その不味い飯を我慢して食事をしていた。
ところがある日、ポールが熱を出し倒れた。フラフラしながら客が待っていると言って店へと歩き出したマリーが見かねて、代わりに食事を作る事になった。その食事は決して上手いと言う事は無かったが、少なくとも不味くは無かった。
そして次の日、常連客は料理はマリーが作るようにポールへと懇願した。それならばと言ってポールは自らの店を娘に任せ、自分は店を開店する前からやっていた畑作業に戻る事となった。
そしてその後、マリーは一人で店を切り盛りし、黒字にするまでに至ったのである。今では立派な看板娘である。そんな看板娘に食事を取りながらウィズは軽口を言う。
「マリー、お前の作る飯は相変わらず普通だな。」
「何よ! 気に入らないならわざわざ来なくても良いのよ。それに10も年上のお姉さんに向かって呼び捨てとは随分ね」
マリーは慣れた感じで、ウィズの軽口を流しながら料理を作り続ける。他の客はいつも見慣れた光景なので、もはや何とも思わない。
そんなやり取りをしていると、カイナが冒険者3人をつれて食堂へとやって来る。3人は席に着きカイナと何やら話している。そこへマリーが水を持ってトコトコと歩いて行く。
「いらっしゃい。見ない顔だね」
「おっ! 客はムサイ男ばっかだけど、なかなかカワイイじゃねえか」
アレクは視線をマリーの大きな胸の方に向けながら、そう話す。
「褒めても何もでないよ。それで何を食べるんだ? メニューはそこの壁に掛けてあるからそれ見て決めとくれ」
「めんどくせぇし、肉料理を適当に持ってきてくれ」
「あいよ」
マリーは注文を聞いて厨房へと帰って行った。
「アレクさー。依頼なんて早く終わらせてもー帰りたいよー」
「文句言うなよ。今セーラが何とかしてくれてっから、俺らはここでゆっくり飯でも食っとこうぜ」
「わかったよー」
ケミーは、持ってこられた水でブクブクしながらブー垂れている。ケミーをなだめたアレクはカイナに話しかける。
「おぃ、案内の兄ちゃん。一つ聞きたい事があるんだが、あの蛇を倒した奴ってのは誰なんだ?」
「あー、どうしてですか?」
「そりゃー、一回手合わせしてみたいからに決まってんだろ。」
「えーとですね……」
ウィズに迷惑を掛ける訳にはいかないと、カイナはあたふたし始める。そんなカイナの肩にウィズは手を乗せ。
「俺だよ、あの蛇を仕留めたのは」
「なんだ、ガキじゃねえか」
「ガキで悪かったな。んで俺と手合わせしたいって? いいぜ。」
「ノリがいいじゃねえか。おもしれぇ。ちょうど暴れたりなかった所だ!」
「武器はこっちで用意する。刃が抜いてある奴があるから、ちょっと訓練所まで来てもらう」
「良いね。面白くなってきたぜ」
ウィズとアレクはそんな事を言って二人して何処かへと行ってしまった。
ウィズとアレクが店から出て行った丁度その頃、マリーが料理を持ってきた。
「ちょっと、注文した奴はどこいったんだい」
「バカとバカやりに行ったよ。両方とも脳みそまで筋肉で出来てるのかな?」
「なんだいそりゃ、あたいとしてはお金を払ってくれる人がいればそれでいいよ」
ジョーイの話を聞いてマリーはケミーとサイラスの方へと視線を送る。
「お金なんて、僕が払うから早くちょうだいよー」
ケミーは早く食事したいとマリーに催促する。そしてケミーの前に置かれたステーキを見て、目を輝かせる。周りの客たちは目をその姿をみてほっこりとする。
その一方、一部の客はサイラスの方を見て、フルプレートのままどうやって食べるのだろうと興味深々である。サイラスが肉をフォークに刺し、口元に持ってくるとヘルメットの口の部分が開き、目にも止まらない速度で口に運び、開いた部分が閉じた。この一連の流れをみた客たちからは「おぉ!」と歓声が上がった。
そんなこんなで、マリーの食堂が賑やかになっている。そんな騒ぎを耳にしながら、ジョージは窓の外をボーっと眺め、ぽつり呟く。
「ウィズ…大丈夫かな……」




