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4話:新たな仲間

「おい、お前ら、出ろ!」


 薄暗い部屋、ウィズがドアを開けた時に、一筋の光が入る。窓が無いこの部屋は、村に唯一存在する鍵付きの部屋である。盗賊を捕らえた際に一時的に閉じ込めておく為の部屋である。この部屋には、先日、捕らえられた盗賊達が全員押し込められている。


 突然入り込んだ光に盗賊達は目を細める。盗賊達がここにぶち込まれて、二日目だ。食事は一日一回であり、体力もかなり低下し、もはや盗賊達に抗う力は残っていない。言われるがまま扉の外に出ると、そこには、村人が包囲するように待ち構えていた。


 村人の中から一人の老人が出てきた。何かを纏めた紙を見ながら盗賊のボスに話しかける。


「わしは、この村の村長であるゴドゥインじゃ。お主らの事は少し調べさせて貰った。どうやら、お主らに盗賊の才能は無いみたいじゃの。ふむ、今まで殺しは一人も無し。魔物に襲われた子供を見て助けに入るなんて報告まであるのぉ。」

「うるせぇ、殺しはしないのがウチの流儀だ。」

「それで今までよくやってこれたのぅ?」

「まだ、始めたばっかなんだから仕方ねぇだろ!」

「さてお主らには二つ選ばしてやろう。この村で罪を償うか、町に連行されて罪を償うか……この村で罪を償う方をワシはオススメするがのぉ」

「具体的に俺達に何をさせるつもりだ。俺達に出来る事はすくねぇぞ」

「これはご謙遜を……元騎士団の面々が」

「なぜそれを……」

「調べた所、公然の事実だったらしいぞ、知らぬは本人ばかりかの。今の所、被害者がウチの村しかおらんから罪も大して重くない。この村で働いても、せいぜい5年かそこらで刑期終わると思うぞ。あとやって貰う事は、この村を魔物から守って貰う事じゃ。他にも農作業をちょいと手伝って貰うかのぉ。衣食住は保証してやるぞ。ウィズとジョーイにいつまでも頼ってばかりじゃ負担が多すぎるからのぉ」

「ふん、分かった。ここで働いてやる。野郎ども! それで良いか!?」

「「「分かったぜ、親分!」」」

「俺はヴォルブだ!村長、これから宜しく頼むぜ。」


 ヴォルブ達にとって渡りに船な話である。ヴォルフは村長が言った通り、とある貴族の騎士団で働いていた。騎士としての実力はそれほど低いものでは無かったが、ヴォルフ達の下品さ、口の悪さに耐えかねた貴族がクビを言い渡したのだ。 


 突然、仕事が無くなって自暴自棄になったヴォルブは昔の隊員を集めて、盗賊を始めたのである。皆、頭が悪いにも関わらず行動力だけある事が仇となり、盗賊団を結成すると言う愚かな選択を取る事となった。


 元々、騎士団で民間人を守る仕事をしていただけに、盗賊の仕事を始めて一度足りも襲撃をした事が無かった。うだうだしている間に他の盗賊に街を追い出されたと言う始末。


 今まで上手く行かない事ばかりであったが、衣食住が保証されるならば、少なくとも今の状況よりは良くなるはず……苦労を掛け続けた部下の為にも、ここからやり直そう、そう思ってヴォルブは村長の提案を受け入れた。部下達もそれで良い口々に言った。


 その姿を遠く離れた所で、ウィズとジョーイは眺めていた。


「本当に良かったのか、ジョーイ」

「あぁ」

「あいつらはお前にケガをさせたんだぞ」

「まあ盗賊なんて褒められるものじゃないけど、生きて行く為には仕方なかった事らしいし。それに、あのヴォルブって人は最初から殺意のような者を感じなかったよ。それに部下を見殺しにして一人だけ逃げるなんて事をしないってのが僕は気にいったよ」

「お前がそう言うなら、俺はそれでいい」


ウィズとしては戦力の増強は喜ばしい所だった。ジョーイ、ウィズだけで村を守るには限界があると、今までに感じていたからだ。これからは、安心して狩りに望めるな、そうウィズは思った。

 こうして、この寂れた田舎の村に新たな住人が住み着いた。

  

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