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35話:2体目のリヴァイアサン

 もう少しだ、あと少しでリヴァイアサンの頭部にたどり着ける。目の前に作り上げられる道をウィズは無心で歩き始める。一歩でも足を踏み外せば、地上へと真っ逆さまだ。ウィズそんな状況でも涼しい顔をしている。焦りは死を意味するからだ。


 最後の矢を踏み、ウィズはとうとうリヴァイアサンの頭部に上り詰めた。


「ふぅ、さて……これからだ」


 頭部に登りつめた丁度その時、地面と水平になりウィズはリヴァイアサンの目を目掛けて走り出した。動く地面に注意を払いながら、ウィズは一瞬で距離を詰める。


「喰らえぇ!」


 ウィズはリヴァイアサンの目にアイスブランドを振り下ろす。


「やっぱりここは柔らかったか!」


 ウィズは剣を何度も振り目の中をどんどんと切り進む!一振り、もう一振りとリヴァイアサンの目の中でまるで穴でも掘るように斬撃を繰り返す。


 切り刻む度にリヴァイアサンは痛みに悶え、体を激しく動かす。その度にウィズは体の外へと放り出されそうになるが、剣をリヴァイアサンの肉に突き刺し耐えていた。


 進めば進むほどリヴァイアサンの肉の壁はウィズを押しつぶすかの様に迫り来る。だがウィズはそれを力で持って押し返しグイグイと進み続ける。切れば切るほど血があふれ出し、血の匂いが辺り一面に立ち込める。ウィズの鼻はもう利いていないだろう。だがそんな事は関係無いと言わんばかりに肉に阻まれながらも前へと進み続ける。


 ウィズが肉体を切り刻み始めて数分が経った頃であろうか……ウィズは頭の方へと切り進み、ついに脳にまで達した。


「これで止めだ!」


 ウィズはアイスブランドを脳に突き立てる。リヴァイアサンの脳は氷漬けにされ、一匹のリヴァイアサンがそのまま息を引き取った。


 脳が凍結した瞬間、まるで地面に吸い寄せられるようにリヴァイアサンの体は倒れこむ。途轍もない重量が地面へと落下する。辺り一面にはまるで台風でも通ったかのような風が吹き荒れ、当然その風は目の遥か奥にいるウィズの元へと吹き荒れる。


「やっばい!」


 異変を察知したウィズはリヴァイアサンの体から脱出を図る。自分の切り進んだ肉の壁、そして血液によってぬかるむ足場、そして前から吹き荒れる風が脱出を大きく阻む、ウィズは強化魔法を全開で力にもの言わせて脱出を図る。


 ウィズが目から飛び出した時にはもはや地面が見える所まで来ていた。ウィズは咄嗟にブラックスフィアを空へと打ち上げる。これで誰かが存在に気付いてくれるだろうと言う思惑だ。下にいるのは歴戦の冒険者達だ。それに気づいた一人の冒険者が、土魔法を唱え始める


「坊主! 上手く飛び移れよ!」


 地上にいる一人の冒険者はウィズの為に、滑り台の様なものを土で形成しながら声を張る。勿論ウィズには聞こえないが、その魔法を見てどう対処するかはすぐに察する事は出来た。前から吹き荒れる風の強さ、落下の速度、全てを感じ取り直感のまま土で出来た滑り台へと飛び移る。その滑り台は徐々に斜面が緩くなっており、徐々に落下の勢いを殺していく。こうしてウィズは地面へと安全に落下する事が出来たのであった。


 ウィズが地面に上手く転がり落ちた時、冒険者達から歓声が上がっていた。リヴァイアサンの一匹をほぼ犠牲なしで討伐する事が出来たからだ。死者が一人も出ずに大型モンスターを討伐する事は滅多に無い事である。結果から見るとウィズ達の活躍は大きいものであったが、それはもう一匹のリヴァイアサンを地面で戦っていた冒険者達が上手く引き付けていたからと言っても過言ではない。故に士気はどんどんと上昇していく。


「ウィズ大丈夫かい? はいこれポーションね」


 息絶え絶えのウィズに向かってジョーイはポーションを差し出す。ポーションを飲みながら、ウィズは周りの状況を確認する。


「ジョーイ戦況はどうなっている?」

「今の所順調かな。戦死者は0だよ。でももう一匹が不穏なんだよね」

「どういう事だ?」

「君が一匹目に止めを刺した時からかなり動きが変わっているんだ」

「今まで本気を出していなかったって事か……」

「そういう事。まだ力を全部引き出してないと考えているよ僕は。エリーもそう言ってるしね」

「そうか……」


「ウィズー! 中々活躍したそうじゃないか?」


 ウィズとジョーイが話しているとそこに血まみれの幼女、シャルロットが両手に剣をもって現れた。


「すごい状態だな。血まみれじゃねえか」

「何を言っておる。それはお主も一緒であろう。それに妾はこうすれば良いだけじゃしのぉ」


 シャルロットの体は見る見る崩れていき、一度ガス状になった。するとポタポタと体中についていた血液は引っ付く先を失ったかの様に地面へと落下していく。そして再び人の形になると彼女はもとの綺麗な状態へと戻っているのであった。


「シャルだけ、ずるいな」

「お主もシャドーウォークを使えば出来るじゃろう?」

「そんな魔力の無駄遣い出来る訳ないだろ」

「知っとるよ。言ってみただけじゃ」

「そんな事より……」


 ウィズの視線はもう一体のリヴァイアサンの元へと向く。視線の先には最早油断など無いと言わんばかりの顔をする敵の姿があった。そしてリヴァイアサンは止めを刺したウィズの顔をジッと見ている。そしてリヴァイアサンの口角が上がったように見えた。


 そしてその直後、まるでリヴァイアサンは脱力した様に体の力が抜いて、地面へ向かい倒れて来た。その姿を見てウィズはすぐに地面へと視線を移し、声を張り上げる。


「やばいぞ! 氷にヒビが入っている。このまま倒れて拘束を解くつもりだ!」


 その言葉を聞いた冒険者は瞬時に散開し、足場が割れた後の事を考えながら安全だと思う場所へ移動する。それはウィズ達も例外ではない。


 その一瞬の判断はさすが歴戦の冒険者達だった。リヴァイアサンが氷の地面に体を叩きつけた瞬間一本の亀裂が入り、その被害はどんどんと拡大していく。そしてものの数分で氷の地面は真っ二つに割れてしまった。


そしてリヴァイアサンを水中へまんまと逃がしてしまった。今までほとんど動く事が出来なかったリヴァイアサンであるが、奴等のホームグラウンドに逃してしまったのは最悪の状況である。周囲に動揺が広がり水中からは不気味な物を感じる。これからリヴァイアサンとの本当の闘いが始まったと全員が息を呑んだのであった……

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