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3話:盗賊襲撃

 アースニードルスネークの素材や肉は、村人達によって見る見るうちに処理され、荷車に満載された。村人達が、手早く処理したのにも理由がある。血の匂いを嗅ぎつけた魔物が寄ってくる事があるからだ。今回は特に大物である。体も大きく、体液の量も多い。命の危険があるからこそ、この速さなのである。勿論、早く帰りたいと言う理由が一番ではあるが。


 これほどの大物を仕留めたのだ。帰り道では解体作業を行っていた村人達の機嫌は良く。歌いだす者まで現れた。しかし、そんな村人達とは異なり、真剣な顔つきで歩みを進める二人がいた。ウィズとジョーイである。


 そう、狩りを終え帰路につく、このタイミングが一番危険なのである。解体作業を終えたとは言え、まだまだ素材からは血の匂いが僅かにではあるが出ている為、魔物が襲ってくる可能性は僅かながらある。また襲ってくるのは魔物だけではない。それは盗賊だ。


 ウィズ達がいる村は、かなり田舎の方なので盗賊などは、あまり見かけない。だが大きな町を追われた盗賊団が偶に流れてくることがある。奴らは手段を択ばない。時には人質を取って脅してくる事もある。だからこそ、最初の一手を取らせないよう十分に警戒を行う。


 あともう少しで村に着くと言う所で辺りの雰囲気が変わった。辺りは木々に覆われており、視界は悪いが確かに何かがいる気配がする。それも一つだけでない。


「あれだけ派手にやれば来るよな」

「これだけの大物だし、仕方ないよ」

「さて、じゃあもうひと働きしてきますか」

「まってくれ、ここは僕に任せて。ハニーもやるって言ってるし」

「じゃあ頼むわ。危なくなったら言いな」

「そこで、僕達の勇姿を見ていてくれ」


 エリーがジョーイの前に出てきて、チラッとジョーイの方を見る。ジョーイは僅かに頷き、手に持った杖を掲げる。そしてジョーイは一言……


「スプラッシュ!」


 そう唱えた。


 ケインが使っていた魔法を思い出させるように、間欠泉のように地面から水柱が何本も上がる。気配を絶っていた盗賊達は突然、空中に打ち上げられ何も出来ないまま地面へと激突する。


 突然の事態に村人達は慌てふためくが、すぐさまウィズが盗賊を取り押さえるよう指示するとそれからの動きは早かった。荷車に置いてある縄を持ってきて盗賊達を一人、また一人と縛り上げて行く。勿論、魔法でも唱えられでもしたら厄介であるので、口には布を詰め込んでいく。


「ふぅ、これであらかた捕まえたかな? エリーよくやったぞ」

「相変わらず、精霊魔法は便利だな。魔法の詠唱も要らないんだな。」

「ハニーと僕の信頼関係あってものだよ。本当は魔法名も唱えなくていいけど、僕たちの実力ではまだ連携を取れないからね。おっと、ボスが出てきたようだね」


 そこには青いバンダナをつけた男が立っていた。盗賊のボスとは思えないほどに細い体格。だが服の上からでもわかるほどに鍛え上げた筋肉。先ほどジョーイ達の魔法を受けたにも関わらず、殆ど濡れていない服。それを見ただけでウィズとジョーイは警戒のレベルを上げる。


「さっきまでの奴らとは違うようだな。ジョーイ、手伝おうか?」

「エリーと僕の力を見くびって貰っては困るね。手伝いは要らないよ」


 そう言ってエリーとジョーイは盗賊のボスの元へと歩いて行く。


「誰だ、俺の部下達をこんな有様にしてくれた奴は!」

「僕だよ。そっちも僕達を襲う気で包囲してたんだから文句を言われる筋合いはないよ」

「てめぇか! お前を殺して、仲間の敵は絶対に取ってやる」

「いや、皆死んでないから」

「うっせぇ!」


 盗賊のボスは腰に両手を回し、二本のダガーを取り出して、ジョーイに向かって走り出した。ジョーイは盗賊のボスをしっかりと見据えて、魔法を唱える。


「ショットスコール!」


 ジョーイがそう唱えた瞬間、盗賊のボスとジョーイとの間に無数の水滴が弾丸のように降り注ぐ。盗賊のボスは自分の羽織っていたマントを上空に向けて広げて、弾丸のような雨を防ぐ。


「水に耐性のあるマントか、厄介だな」

「まだだ! 大地の力よ、我を守る壁をなせ!アースウォール!」


 盗賊のボスがそう唱えた瞬間、ショットスコールから身を守るように土の壁が形成されて行く。その後、盗賊のボスは煙玉を地面に叩き付け、煙の中に身を隠す。


「盗賊らしい戦い方だね。でも僕はそっちに合わせてあげる気は無いよ。ダイダルウェーブ」


 すると、ジョーイの前面に大量の水が現れ、まるで津波のように流れて行く。津波は煙ごと盗賊のボスを巻き込んで木々をなぎ倒しながら前と進む。


「一方的だなおい……近づけやしねえ。おまけにもう一人戦える奴がいるってか。まったくやってられねぇ」


 津波に飲み込まれ数100m引き離された盗賊のボスは、厳しい戦いを強いられているこの状況に文句を言いながら、ゆっくりと体を起こす。盗賊のボスは流されながら、木々に何度も打ち付けられて体中ボロボロであるが、自分にずっと付いてきてくれた仲間達を裏切る事は出来なかった。フラフラとジョーイの元へと向かう。


 盗賊のボスは手持ちの煙玉を全てジョーイに向けて投げつける。そして間髪入れずに魔法を唱える。


「土よ。人の形を成して壁となれ! ダミーウォール!」


 ジョーイの周囲に盗賊のボスの姿に似た土の塊が10個ほど生成される。広範囲に煙玉をまかれ、完全に視界を奪われたジョーイの周囲に無数の人影が写る。


「クッ……味な真似をするね」

「どうやら、てめぇは魔法だけが取り柄みたいだな。これは躱せっか?」


 盗賊のボスがそう言い放った瞬間、人影と人影の間がキラリと光る。ジョーイは咄嗟に魔法を唱え、光と自分との間に水の膜を張る。水の膜に光が触れた時、それはナイフである事がはっきりと分かる。ジョーイは体を捻り、ナイフを躱そうとするが、間に合わず左肩に直撃する。ジョーイは痛みに耐えながら、周囲により厚い水の壁を形成する。


「やるね。盗賊にしているのが惜しいくらいだ」

「そうかぃ、褒めても何もでねぇぞっと!」


 更にナイフが2本ジョーイに向けて飛んでくる。水の壁にぶつかりかなり速度の落ちたナイフをジョーイは杖で叩き落とす。


盗賊のボスは、ジョーイの視線をナイフへと向いた事を確認し、背後から水の壁に向かって体当たりをする。盗賊のボスは両手に持ったナイフを振り上げ、ジョーイの両足へと振り下ろす。勝った……盗賊のボスは勝利を確信していた。


「この時を待っていた。あなたが僕に近づく時を!」


 ジョーイがそう言った瞬間、地面から水の柱が噴き出し、ジョーイを巻き込んで盗賊のボスを空中へと吹き飛ばす。満身創痍で無理やり体を動かしていた盗賊のボスは、何も出来ずに地面へと叩き付けられる。盗賊のボスはもはや指一本動かす事は出来なかった。


 同じように地面へと叩き付けられたジョーイは、水の壁がクッションとなり、致命傷とは、なら無かった。ただ、肩にはナイフが刺さっており、無傷と言う訳にはいかなかった。


「皆さん!大丈夫ですか?」


 ジョーイは村人達に声を掛ける。村人達はそれぞれ安全を確認してジョーイに向かって「大丈夫だ!」と口々に言う。

「お~い……ウィズ。この人縛っておいて! 多分もう動けないけど注意して」

「わかった! ってそのケガ大丈夫か?」

「肩にナイフを一本受けただけだよ。幸い毒も塗られてないようだし、大丈夫だよ」


 ジョーイは村人の所へ、痛みを堪えながら歩きだす。村人達はジョーイの肩に刺さったナイフを引き抜き、瓶に入っている液体を傷口にぶっかける。この液体はポーションと言い、飲むと体力が回復し、傷口にかけると、傷が塞がっていく優れものである。


 ポーションの力によって、ジョーイの傷口は見る見る内に、癒えていく。肩から出ていた血は止まり傷口は完全にでは無いが、塞がった。


「ジョーイさん、これで傷口はなんとか塞がったけど無理しないでくだせぇ」

「わかったよ。もうすぐ村に着くから、それまでは大人しくしてるよ」

「無茶はしねぇでくだせぇ」


 ジョーイは治療をしてくれた村人のカイトが注意する。カイトは治療に使った道具を片付けて、他の村人の所に戻り、出発の準備をする。そうこうしている間にウィズは盗賊のボスを縛り上げて、他の盗賊と一緒に、歩かせる。


 襲撃された場所から少し進むと、森を抜けて村が視界に入ってくる。村の入り口には帰りを待つ女たちがこっちに向かって手を振ってる。こうして、ウィズとジョーイの波乱に満ちた狩りは終わりを告げたのであった。



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