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28話:戦いの終わり

 勝利の声が鳴り響く中、仲間を失ったのか涙する冒険者、兵士がいる。死体は山積みにされて火をくべられる。炎を見つめながら、失った者との思い出に浸る。すぐに火葬してしまうのは、冒険者の習わしと言える。この風習は、死体がグールなどになってしまわないようにする為であったとされる。


「全員、静粛にお願いします!」


 着飾った男性が一番目立つ場所に立ち、声を張る。服が全く汚れていない事から非戦闘員である事はすぐに分かる。この男性は一度咳払いをすると、再びこの場にいる全ての者に聞こえるように声を出す。


「私は、このブルーサントスの領主であるガイン・シュタイナーです。まずはこの村を守ってくれた冒険者、兵士諸君に感謝したい。諸君らのおかげでこの町の被害は最小限に抑えられたと言えよう。あれほどの数のマーマンを前に戦った雄姿を私は称えたい。そして力及ばす敗れた者を私は忘れない。犠牲になった者達の遺族には町からの援助を約束しよう。さて話も長くなっては疲れている君達に申し訳ない。堅苦しい話はこれで終わりだ。私の館で宴の用意がされている。来られる者はぜひ来てくれ。そして負傷した者達、治癒術師がもうすぐ着くそれまで耐えてくれ。それでは私は失礼する」


 ガインが立ち去った後、冒険者、兵士たちは戦いの終わりを喜び、宴へと向かう。そして負傷者達は治癒術師と呼ばれる回復に特化した魔法使いによってどんどん治療されていく。治療に特化しているだけあって、回復がポーションとは段違いだ。傷口はすぐに埋まり、四肢が欠損した者も元通りだ。どうやら四肢欠損の治療は効果絶大なだけあり、回復に特化した精霊使いだけが使用できるようである。


 ウィズは初めて回復魔法を見て、驚きを隠せない。遠目に回復魔法を唱えて治療している人を眺めてたウィズに気付き、一人の男性が声を掛ける。


「君達は、先陣を切ってた子達だね。戦いぶりは見せて貰ったよ」

「そうですけど、治療の方は大丈夫なんですか?」

「それはもう終わりましたよ。治療を初めてかれこれ一時間ですからね。それに治癒術師は私だけではありませんから。失礼ながらお名前を聞かせて頂いても宜しいかな?」

「俺の名前はウィズ、田舎育ちだから、家名とかは無いぜ。あんたは?」

「おっと、失礼しました。私の名はナイアス・マクレーン。ブルーサントス支援部隊の隊長をさせて頂いてます」


 ウィズは隊長と言う肩書を聞いて思わず顔が強張る。貴族などの偉い人に会うのは初めての経験だ。シャルロットは偉い人だったらしいが、出会い方ゆえに、そんな畏まる事は無かった。


「どうしたんだい? いきなり怖い顔して」

「いや、隊長って言うから偉い人なのかなって」

「ははは、緊張してるのかい? いいよ隊長って言っても4人しか居ない部隊だよ」

「そ、そうなんですか」

「そうそう。それにあんなに活躍した君に畏まられるのもねぇ」

「わかった。じゃあ遠慮なくいつも通り話すぜ」

「ありがとう。でだ! 回復魔法なんだけど……」


 ナイアスが話始めた時、ブルーサントス支援部隊の別の隊員がウィズの様子を見て一人つぶやく。


「あのガキ、やらかしたな……あの人に回復魔法の話させたら長いぞ」


 その隊員はそうつぶやくと、巻き込まれないように足早に離れていった。それを聞いてしまったウィズは少しだけだが、回復魔法に興味を持ったことに後悔する。


「まず、回復魔法と言うのは特別な魔法で回復魔法に適性があるものしか使用できません。基本の魔法の属性である火、水、風、土、雷、無、これらとは関係の無い魔法です。これをそのままですが特殊系統と言います。回復魔法はこれにあたりますが、この特殊系統と言うのは使える人が限られており、また特殊魔法が使えるものは他の属性を不得手とする傾向にあります。使えるものが少ない、そして基本となる魔法を不得手となるそれほどのデメリットがありますが、恩恵も大きい。ポーションなどで直せない四肢の欠損もそうですが、戦闘で披露した体力もまた癒す事が出来る。後方支援としては絶大な効果を発揮するのです」

「本当に使える人少ないのか? ここに4人もいるのに?」

「それはここの領主であらせるガイン様のおかげですよ。普通の町ならば、一人いれば良いほうです。ただこの町は、海、山から魔物の脅威があります。その分冒険者、兵士の消耗が多い。戦えるものが少しでも減らないようにとのお考えで他よりも高い給金で我々を雇って頂いてるのです」

「へー」

「さて、同僚に話が長いと言われてしまったので、このぐらいにしておきましょうか」

「聞こえてたんですね……」

「まぁね。それで君はこのあとパーティーに行くのかい?」

「俺はいいや。避難した知り合いも探さないといけねえし」

「それは残念だ。それではこれでお別れだ」

「あぁ、色々教えてくれて助かった」

「私も回復魔法について話せて良かったよ。何か困った事があればいつでも言ってくれ。領主様の館で私の名前を言ってもらえれば取り次いで貰えるからね。それでは失礼するよ」


 ナイアスはそう言って、領主の館へと向かっていった。話が終わるのを待っていたのか、シャルロットがすーっと近づいてくる。


「待たせかシャル」

「いや、かまわぬよ。それでは妾達も行くとしよう」


 そしてシャルロットに手を引かれながら、ウィズは二人の帰りを待っているであろう宿屋の親子とジョーイの元へと向かうのであった。



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