25話:商会での取引
ウィズ達は心を決めてその金色に光る商会の入り口にいる人に声を掛ける。周囲にいる人達の視線を気にしながらゆっくりと近づいて行く。入り口には金色に光る服を身に纏っている。その服の背中にはゴールドフィーバー商会と書かれている。だせぇ、心の中でそう思いながらウィズは口を開く。
「あのー、ここに換金に来たんですが、馬車を止める場所とかありますか?」
「いらっしゃいませお客様。馬車の置き場所ですか? 今から係りの者に案内させますので」
「あぁ、頼む」
その後、またもや金色の服に包まれた人が現れた。この従業員はテキパキとウィズ達の馬車を誘導していく。そして従業員に先導されながらウィズ達は店内へと入る。ドアの開いた先には至る所が金色に塗装されており、とても目に悪い状態である。そして中に入ると小太りの男性がウィズ達を迎える。そしてその男性に言われるがまま、カウンター席まで案内される。
「いらっしゃいませお客様、本日はどういった御用ですか?」
「これを売りに来た。あと両替だ」
ウィズはカウンターの上にマンドレイクの入ったリュックを置き、更に村長から貰った金貨を置いた。店員はカウンターに置かれたリュック手に取り、中の物を確認する。
「こ…これは!?」
マンドレイクを見て、店員が驚いた表情を浮かべる。たった一つだとここまで驚いたりはしなかっただろう。だが、リュックに満タンに詰められたマンドレイクだ。何処かで群生地を見つけたに違いない。そう確信した。
「お客様、これほどの量を何処で?」
ウィズはシャルロットに視線を送ると、彼女は首を振る。どうやらエレメントガーデンの事は他人に知られるわけにはいかない、そう言う事だ。
「それは教えられねえ。どうせもうそこには行けねえしな」
「そ…そうですか、残念です。これを安定供給して頂けるのでしたら我が商会も安泰だと思ったのですが」
「悪いな」
「いえいえ、これはこちらの思惑ですのでお気になさらず。それではお値段を付けさせて頂きますね」
「こちらのマンドレイクですが、状態が良いようですので、白金貨1枚でどうでしょうか?」
「俺はそれほど目利きが出来る訳じゃねえし、うちの村長が進める商会を信じているから、その値段でいいわ」
「おや、何処かからの商会でしたか? その様子だと紹介状も無いようですね」
「つい最近、巨大なヘビを卸した村があるだろ、そこの村長がこの店が良いと教えてくれたんだ」
「そうですか、これは良い縁を得ました。まさかこれほどの大きな取引になるとは思ってもみませんでした」
「それより両替なんだけどさ」
「あぁ、そうでした。では今お手持ちの金額は……」
店員は後ろに控えていた別の店員に軽く支持を出し、ウィズとジョーイがカウンターに置いた金の入った袋を確認し始める。中からは金貨などの金銭が出てくる。
店員が中を改めた結果、ウィズとジョーイの麻袋からはそれぞれ、金貨76枚ずつ入っている事が分かった。そして貨幣についてあまり詳しく知らないウィズは店員にこう口を開く。
「俺、あんまり両替について詳しくないんだが、少し説明してくれよ」
「かしこまりました。ではまず貨幣の価値をこちらに示してあるのでご覧ください」
店員は一枚の羊皮紙を取り出し、カウンターの上に広げた。そこには
銭貨
銅貨:銭貨100枚=銅貨1枚
銀貨:銅貨100枚=銀貨1枚
金貨:銀貨100枚=金貨1枚
白金貨:金貨100枚=白金貨1枚
オリハルコン貨:白金貨100枚=オリハルコン貨1枚
と書かれていた。
「これは貨幣の価値をあまり知らない人の為に用意した物なんですが、今回は良い取引をさして頂いたのでこちらの方は差し上げますね。あと手数料もサービスさして頂きます」
「ラッキー! あんた良い人だな」
「いえいえ、あのマンドレイクから得られる莫大な利益に比べれば大した事ありませんよ」
「そうなのか?」
「えぇ、この薬草は解毒薬の材料としてかなり重宝されておりますので、加工して王都で売ればなかなかの売り上げになります」
「そっか」
「それでは早速両替をしましょうか。私のオススメは金貨10枚ほどを銀貨と同課にする事ですかね。あまり金貨を両替しすぎると、手持ちがかさ張ってしまい不便ですからね」
「なるほど、じゃあそれでお願いするわ」
「あの私が言うのも何ですけど、我々を信用しすぎでは?」
「俺はあんた達の商会を進めてくれて村長を信じているだけだ」
「そうですか、ですが私から少し苦言を言わせて頂きますと、もう少し商人と言うものをお疑いになる方がよろしいかと……」
「そ、そうなのか?」
「はい、お客様は皆、若く侮られ易いと思います。当商会は年齢、種族、性別の差別無く丁寧に対応する事を徹底さして頂いてます。ですが、これはどこの商会でもと言う訳ではありません。最初の段階で追い払われる事だってあるでしょう。時には捨て値のような値段を付けられる事もあるでしょう。ですので、商会に物を持ち込む時はある程度値段の目星をつけてから持ち込む事をお勧めします」
「だが、俺には物の値打ちなんてわかんねえし」
「それでは、こちらの本なんて如何ですか? 銀貨3枚ですが、冒険者の為に作られた素材買い取り値段の目安表です」
「売り方が上手いな」
「商人ですから」
「じゃあそれも貰っていくぜ」
「お買い上げありがとうございます。それでは商談もまとまって来ましたので」
ちょうど先ほど何処かへと向かっていた店員が一つの麻袋を持って来た。取引をしている店員は中から黒い布に包まれた物を取り出し、カウンターの上に乗せ、口を開く。
「こちらが白金貨1枚になります。ご確認下さい」
「これが白金貨か……」
ウィズは目の間に置かれた貨幣を手に取る。初めて触る高額のお金だ。こんな物を持ち歩くのはあまり気のりしないが背に腹は代えられない。白金貨の確認を済ませるとウィズは黒い布に包み直し麻袋へと入れる。
「確かに受け取ったぜ。両替の方はジョーイに任せるぜ」
「全く君は、全部勝手にやって飽きたら僕に丸投げか……わかったよやるよ」
ジョーイは無言の圧力に負けて、続きの取引を行う事にした。そしてその後店員は10分後に別の店員が持ってきたお金をジョーイに手渡し。ジョーイがその量を確認して。商談は終了となる。
そしてウィズ達が商会から立ち去ろうとした時、今回取引に関係した店員が入り口に並び、ウィズ達を見送った。
投稿が遅くなって申し訳ございません。