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21話:突然の呼び出し

「おーい、ウィズよ。今日はこんな朝早くからどこに行くのじゃ」

「村長の家だ。何か重要な話があるらしい」

「村長がねぇ……お主何かやったのか?」

「やってねえよ」

「とりあえず行ってみたらわかんだろ」

「じゃな」


 そう言ってウィズは扉を開けて自宅から出ようとするが、その服の裾が引かれる。それはシャルロットによるものであった。


「妾も行くのじゃ、着替えるので少しまてぃ」

「一人で良いだろ……」


 ウィズがそう言いかけた瞬間、彼女の表情は変化する。瞳はジト目になり、何かを訴えかけてくる表情だ。その言葉の無い抗議に観念したのかウィズは


「あー、わかった、わかった。待ってるから早く着替えてこい」

「まあ相棒として当然じゃな」


 パジャマ姿のシャルロットはトコトコと自分の部屋へと戻る。シャルロットの部屋からどこどこと音がなり、そして音が鳴り止むとバンとドアが開かれ、腰に両手をあてたシャルロットが、


「待たせたな! いくのじゃ」


 ウィズはそれを見て一人こう思う、俺の家をもっと大切にして欲しいと……そんなウィズの心境などお構いなしにシャルロットはウィズの手を引き、村長の村へと連れて行こうとする。ウィズはその手に引かれて足を進めた。


 二人が村長の家にたどり着くと、既にジョーイが中で飲み物を飲みながら待っていた。椅子でゆったりと待っている事から、何か問題が起きた訳ではなさそうだと、ウィズは安心する。


「おはよう、お二人さん。今日も仲がいいね」


 ジョージはウィズがシャルロットと手を繋いで家に入って来た事を見てからかう。そして急に恥ずかしくなったウィズはシャルロットに握られた手を振り払う。シャルロットからは不満の顔が見られるが、そんな事は気にしないウィズであった。


「うるせえ、それより何で呼ばれたのか聞いてないのか?」

「それが僕にもさっぱりなんだよねー。エリーはどう思う? わかんないって? だよねー」


 ジョーイはエリーに向けて、そんな事を言っている。そしてそんな姿をみてシャルロットは眉を顰める。


「お主、ジョーイと言ったか……そちの精霊の事なんじゃが、名前がエリーと呼んでおるが、そやつの性別は……」

「えっ? メスだよ。こんなにかわいいのにオスな訳ないじゃないか」


 エリーは左右に体を振って、違うと必死にシャルロットへと伝えるが


「ふむ、お主がそう言うのであればそうなのじゃろう。妾の勘違いじゃった、すまんのぉ」

「分かってくれればそれでいいんだ。おっとどうやら村長さんが来られたようだね」


 ジョーイがそう言うと村長が自室から大きな袋を二つもって現れた。村長の持つ茶色の麻袋からはジャリジャリとお金の音が聞こえてくる。村長がその袋を机に置くとドサリと重量感のある音が部屋中に響き渡る。


「これ、全員こちらに座りなさい」


 村長はその麻袋を置いた机にウィズ、シャルロット、ジョーイを集める。そして村長は片方の麻袋を手に取り口を開けると中には金貨が入っていた。庶民が持つことは殆ど無いはずの金貨が何枚もある。そして村長は口を開く。


「ほっほっほっ、驚いたであろう。これはウィズとジョーイが今まで倒してきた魔物や獣の素材を売ったお金じゃ。若いお前達にこんな金を持たせておく訳にはいかんのでのぉ。ワシが預かっておった。今日はこれをお前達に渡す為に呼び出したのじゃ」

「なんで突然今日なんだ?」


 ウィズは突然大金を渡される理由が不明な為に、村長に質問した。


「ふむ、良い質問じゃ。それはお前達これを見よ」


 村長は一枚の紙切れをウィズ達に見せた。その中には王立魔法学園と書かれていた。


「なんだよこれ。これって貴族様が行くとこじゃねえの?」

「そうじゃな。だが一般人も通っておるのぉ。この紙を見せたから大体察しはついておるじゃろうが、お前達、その金を使ってこの学園に行ってみたりはせんか?」

「こんな所行っていい事あるのか? 正直俺達はここでの生活に不満何てないんだぜ」

「ふむ、まずはこの学園について説明せにゃならんのぉ。ここの学園は大まかに分けて騎士コース、魔法使いコース、学者コース、商人コース、貴族コースと4つの進路で教育しておる。この学園を出ると、良い仕事につきやすくなると言ったメリットがある。ワシは常々思っておった。お前達ほどの実力を持っているにも関わらずこんな田舎で燻って良いのかと……」

「俺達が出て行ったら誰がこの村で狩りとかするんだ? 村が崩壊して行く宛の無かった俺達を拾ってくれたこの村がひもじい思いをするのは俺は嫌だ」

「なにを言っておる。今はまだ頼りないかもしれんがヴォルブだっておるじゃろ」

「でも……」

「無理にとは言わん、とりあえずお前達にはこの金と受験票を渡しておく。これは1月後にある学園の入学試験を行う際に必要なものじゃ。捨てるも良し、受けに行くも良し、それはお前達が判断することじゃ」

「分かったとりあえずどうするか考えるわ」

 

 ウィズは何とも言えない表情でその麻袋と紙切れを受け取った。そしてもう用は済んだと言わんばかりにシャルロットを連れて扉の方へと向かっていく。


「ウィズ! ワシら村の皆はお前達に幸せになって欲しいのじゃ。その事だけは忘れる出ないぞ」


 ウィズは村長の声を聴き立ち止まり、そしてすぐに扉の外へと歩き出したのであった。そしてウィズが扉の外に出た後も話は続く。


「ジョーイ、お前はどうする?」

「僕は行こうかな。少し魔法の腕を磨いてみたいし。それに都会って少し興味あるしね」

「そうか、お主にも渡しておくぞ」


 ジョーイもまた村長より麻袋と紙切れを受け取った。


「色々お気遣いありがとうございます。ウィズは今日の夜にでもじっくり考えて答えを出すと思いますよ」

「ウィズにとっては余計な気遣いだっただろうかのぉ」

「別に無理に行く必要はないですし」

「ジョーイの話を聞いて少し気が楽になった。まさかウィズがこの村にそこまで恩を感じているとは思っておらんだ」

「何言ってるんですか。移住してきた者全員この村にはずいぶん感謝しているんですよ。それも自らの命を懸ける程度にはね」


 そしてジョーイもまた麻袋と紙切れを受け取って帰って行った。その姿を見届けた村長は一言思わず出てしまう。


「ふっ、どうやらワシ達の村は良い拾い物をしたようじゃな」


 この時、村長の瞳はうっすら湿っている事は誰も知る事はない。 

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