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2話:あれから3年……

 あの悲劇から3年の時が過ぎた。ウィズは草木の生えない荒野に立っていた。


 ウィズの目の前には全長40mほどの体を持ち、人間を好んで襲うアースニードルスネークと言う名の蛇が対峙している。巨大な体を持ちながら無音で移動するその蛇は、尻尾を徐々にウィズの元へと近づける。


 普段はこのまま人間を締め上げ、圧殺し動かなくなった所をゆっくりと捕食すると言うスタイルで、狩りを行っている。しかし、この日だけは違った。目の前にいるこの人間は他の人間とは異なると本能で感じ取る。


 野生にいきるアースニードルスネークは魔力を感じ取る事が出来る。目の前に存在する人間はいつもの人間とは違う。その感性が普段とは異なる動きを取らせた。そう、ウィズを包囲する長いシッポは気を反らす為のものである。アースニードルスネークの本当の目的はその名の通り土魔法による攻撃である。


 アースニードルスネークは徐々に尻尾を絞めていき、ウィズを包囲していく。当然ウィズは自分が包囲されている事を早くから察知している。


 しかし頭から尻尾までの動きを一度把握する為に、ウィズはワザとアースニードルスネークの動きを見逃していた。ウィズは尻尾までの動きを察知した瞬間、包囲から逃れる為に、空中に飛び上がりアースニードルスネークの体を飛び越えた。


 幅だけでも3mほどある蛇である、勿論普通の人間にはこの高さを飛び越える事は出来ない。しかしウィズの習得した魔法がそれを可能にした。


 『身体強化』の魔法である。強大な魔力を消費し、一時的に強い腕力、そして俊敏な動き、そしてその動きに付いていける動体視力を強化する力だ。効果だけ見れば非常に強力な魔法だが、無理に筋肉を動かしていることから使用中は常に激痛が走ると言ったデメリットもある。


 巨大な魔物を討伐するには必須の魔法として古くから人々に伝わっている。ウィズはその身に宿った大量の魔力を消費する事により長時間使用する事が可能にした。


「大地の気よ! この身を包み込み、秘められた力を解放せよ!」


 ウィズがそう唱えた瞬間、光が体中を包み込む。ウィズがグッと踏み込み、一つの弾丸のように空へと飛び出す。腰に下げた剣を引き抜きアースニードルスネークの顔へと近づく。その剣先は空を切り裂き、アースニードルスネークの首を切断しようと迫る。


 しかしその刃が届く事は無かった。ウィズの刃はアースニードルスネークの首の前に展開された分厚い土の壁に阻まれた。


 剣が土の壁に突き刺さったった、アースニードルスネークの目が僅かに細くなる。壁から無数の土の棘が飛び出す。アースニードルスネークの脳裏には串刺しになった獲物姿が浮かぶ。今までこの魔法で何人もの人間を葬ってきた実績がアースニードルスネークを慢心させた。


 アースニードルスネークがゆっくりと土壁を除き込むと、そこには誰も居なかった。ただ剣が突き刺さった壁があるだけである。周りを見渡しても人間の姿が見えない。


「ココだーーー!」


 ウィズは普段持ち歩いてる予備の剣を引き抜き、アースニードルスネークの頂上から落ちてくる。ウィズはそのままアースニードルスネークの首へと剣を突き差し、首を切断するように引き抜く。切り口からウィズに向かって大量の血液が吹き上がる。


 アースニードルスネークは初めての痛みに思わず鳴き声をあげ、のたうち回る。その衝撃でウィズは地面へと吹き飛ばされる。その勢いで地面へと突っ込むと、強化魔法を使用しているとはいえ、ただでは済まない。ウィズは勢いをころす為、『エアーシールド』と言う魔法を詠唱する。


「風よ! 我を包み込み、この身を守りたまえ!」


 風の層が体を球状に覆い、地面にぶつかった際、クッションのように衝撃をころして、ウィズの体を守る。風が地面の土を舞い上げ、ウィズの視界を奪う。手早く魔法の効果を切りアースニードルスネークを確認すると、息も絶え絶えになり倒れ込んでる。


「チッ、やっちまった。折角、気に入ってる服だったってのに……」


 体中に血液と土埃をあびて、服がドロドロである。口の中に入った土をペッと吐き出しながら、アースニードルスネークへと近づく。


 アースニードルスネークに手が届く距離に近づいたウィズは、ふと先ほど手放した剣が地面に落ちている事に気付く。ウィズはアースニードルに背を向けて剣を拾いに向かう。


「おっと、この剣だけは失う訳にはいかない」


 それはクレアから手渡された大切な剣である。剣を拾い上げた時、後ろから僅かに風の流れを感じ取る。ウィズは咄嗟に振り向く。大きな口を開いたアースニードルスネークがウィズに迫る姿がそこにはあった。


 その後、ウィズは死んだフリをしていたアースニードルスネークにより、丸呑みにされてしまう。いや、自ら飛び込んだと言った方が良いかもしれない。アースニードルスネークの幅は3ⅿあるとは言え、消化管の中はかなり狭く身動きがあまり取れない状態であるが、ウィズは背中の腰につけた短剣を2本抜くと消化管の方に刃を立ててグルグルと回転しだした。


 人間を丸呑みして、安心していたアースニードルスネークに突然の変化が訪れる。喉の辺りから徐々に痛みが広がっていき、先ほど切られた以上の苦痛が襲い掛かる。消化管がウィズによってズタズタに引き裂かれ、体内はもう無茶苦茶な状態である。最初は痛みで暴れまわっていたが、徐々に力を失っていきぐったりとし、ピクリとも動かなくなった。


 普段ならアースニードルスネークはその鋭利な歯で獲物をかみ砕いて体内に取り込んでいたが、今回は丸呑みしてしまったが故に体内を直接攻撃され敗北を期した。


 ウィズはアースニードルスネークの皮膚を引き裂いて、体の外へと出る。その体は消化液、体液、血液でベトベトである。手早く風の魔法を使い体にこびり付いた液体を吹き飛ばす。


「ふぅ、油断した。まさか生きていたとは……」


 咄嗟の判断で何とかなったものの、命に関わる油断であった。背後を取られ、敵に致命的な攻撃を許してしまった。


「さて、素材を回収して貰うか」


 ウィズは狼煙を上げて、村へと連絡を行う。しばらくすると、ジョーイが村人達を引き連れてウィズの元に向かってくる。


「なんだ?えらくベトベトだな。頭から水掛けてやろう『ウォーター!』」


 すると、ジョーイの後ろから、人の頭くらいの大きさがある金魚の様な生き物がぷかぷか浮きながら前に進んでくる。その金魚の体から青い光が放たれる。ウィズの頭の上から水が滝のように流れ出す。


「ぷっは、ジョーイすまねえな。スッキリした」

「礼なら俺のマイハニーに言ってくれ。なぁエリー」


 ジョーイはそう言って金魚の頭を撫で始めた。そして撫でられている金魚はさぞかし不満そうであった。ジョーイにエリーと呼ばれている金魚は怒りで震えていた。


「えっ? なんだって、俺はメスじゃないって? またまたーエリーは恥ずかしがり屋さんだなー」

「なんで、お前はエリーの事をメスだと思ってるんだ? 本当にオスなんじゃないのか?」

「こんなにカワイイのにオスな訳ないじゃないか!!」

「ふぅ、エリーお前も苦労してるな……」


 そしてその尾びれをジョーイの体へと叩き付ける。エリーは手加減していたが、ジョーイは吹き飛び地面に倒れ込む。その姿をみたエリーは急におどおどし始める。ジョーイに寄り添い心配し始める。


「お前らも仲がいいんだか、どうなんだか……まぁとにかく運搬係の護衛お疲れさん」


 ジョーイはピクピクした体を起こして、エリーに支えられながら近くの切り株に腰を下ろす。


「ふぅ、まぁ今日は一度も魔物に合わなかったからな」

「そうだったのか、ラッキーだったな」

「それにしても、かなりの大物だな。これは明日までどんちゃん騒ぎだな。お前も今日は飲むのか?」

「明日は……」

「そうだったな、明日は墓参りの日だったな。それにしても俺達がこの村に避難して来てもう3年か……あの事件で村人の半数は死んだ。ダニーもジェシーも死んだ……」

「そうだな、だからこそ生き残った俺達は前を向いて生きて行かなきゃいけないんだ。クレアもそう望んでいた」

「暗い話はここまでだ。今はこの大物を倒し、無事生還した事を喜んでおこうじゃないか。ハニーもそう言ってる」

「エリー、ありがとな」


 二人は村人達がアースニードルスネークを剥ぎ取る姿を眺めながら、昔を思い出す。


 ドラゴンが村を襲った後、瓦礫の中に埋もれていたがなんとか助かったジョーイ。ジョーイは瓦礫が落ちてくる瞬間、ダニーとジェシーが体を張って守ってくれた事を目撃した。ジョーイは瓦礫から這い出した後、すぐに二人が息絶えているのを理解した。二人への感謝、そして二人を失った悲しみから涙が込み上げてくる。


「誰か、手伝って! この子を助けてー!」


 ジョーイの耳に、誰かは分からないが、村中に響き渡るほど大きな声が聞こえてくる。


「へへっ、悲しんでる暇もくれないんだな。分かってるよ、ダニー、ジェシー、さっさと行けば良いんだろ。お前らならそう言うさ」


 ジョーイはそう呟き、声の元へと駆けだして行った……


 ジョーイは救助を求める人の元へと辿りつくとそこには、ウィズの姿と、村のパン屋の女将さんが涙を流しながら瓦礫の方へと指さしている。


「アニーが……娘がまだ中にいるの!」


 ジョーイとウィズは二人だけでは、どうにもならないと判断し、動ける者をかき集めた。  


 ウィズとジョーイは崩壊した村中から生き残った村人達を指揮し、救助活動を行った。クレアの死を受け入れたウィズの顔にもう涙は無い。生き残った村人の力を合わせて、10名の人を救い出した。その後、動ける者は家族、友人を失った悲しみを押し殺し、村人の墓を建てた。


 その後、すぐにウィズは村人を受けて入れてくれる村を探す為に旅立った。ジョーイは村人達を纏め上げ、ウィズが帰ってくるまで、この荒れ果てた村を守り続けた。


 必死の交渉と、昼夜を問わず走り続けたおかげで、ウィズは1週間足らずで受け入れ先を見つけて村に戻る事が出来た。ウィズが即座に行動を起こしたおかげで、食料が枯渇し飢えて死ぬ者は一人も居なかった。また、ジョーイが村人を纏め上げ、けが人の治療、血の匂いを嗅ぎつけた魔物の処理を行っていた事を忘れてはいけない。


 そしてその後、二人は生き残った村人から賞賛の言葉を何度も掛けられた。しかし二人は満足はしていなかった。もっと力があれば……そう考えウィズは魔物を討伐する力を、ジョーイは魔法の力を、手に入れる為に動き出したのである。 




 


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