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18話:ウィズの暇なひととき

 シャルロットは村では人気者であった。特に子供達に。整った顔立ち、頭の上にちょこんと乗った王冠、そして何百年と生き続けた知識、それらの要因によって彼女は子供達から姫様と呼ばれて慕われていた。憎んでいた人間に、この様な対応をされてしまい。彼女の人間に対する憎しみが薄れつつあった。ウィズの住む村では精霊と上手く共存していると言う事もあり、彼女が村の人間と衝突する事もほとんど無かった。


「姫様ー! あそぼー」

「ぬあー、うっとしいのである。妾は忙しいのじゃ」

「うっそだー。一日ぶらぶらしてるしー」

「う、嘘じゃないのじゃ」

「ほらーいこーよー」


 ウィズはもみくちゃにされている彼女を見ながら笑みを漏らす。


「おーい、シャル! 今日は別に遊んでていいぞ」

「おい、バカなことを言うでない」

「「わーい! いくよー」」

「おいこら、はなせー離すのじゃぁぁ」


 連れ去られていく彼女を見送りウィズは久しぶりの休暇を満喫すべく、ジョーイの元へと足を運ぶ。今日はシャルを含めた3人で釣りに行く予定だったのだ。だがシャルは拉致されてしまったので、二人で行く事になったが……


 ウィズとジョーイは釣り道具を片手に持って、川へと向かう。


 小川についたウィズは早速、釣り針に餌をつけ、川へと投入する。風が吹き、草や木が音を奏でる。そしてゆっくりとした川の流れの音を聞きながら、のんびりと魚が餌に食いつくのただ待つ。ジョーイも少し離れた場所で釣りを始めたようだ。


「おーい、ジョーイ釣れたか?」

「大きい声を出さないでくれるか? 魚が逃げてしまう」

「良いだろそれぐらい」

「今日こそ僕が釣り勝負に勝って見せるんだから邪魔しないで」

「気楽にいけよ気楽に、そんなに力んでると釣れるものも釣れないぞ」

「う……うるさいな。僕には僕のやり方があるんだよ」

「わかった、わかった」


 そんなやり取りをしながら、再びウィズは釣り竿を振るい始める。


「たまにはゆっくりと過ごすのも悪くないな……」


 ウィズはついつい独り言が出てしまう。川を泳ぐ魚の姿を眺めているだけで、心が落ち着いて来るようである。餌を投入して数分が経った頃、浮きが水面の下へと沈む。


「き、きたーーー」


 ウィズは釣り竿の先を上にあげて針を上手く魚へと引っかけると、糸が切れないようにゆっくりと、しかし着実に魚を引き上げて行く。そして水面に魚の姿を確認するとウィズの顔は次第に緩んでいく。糸を手繰り寄せ川岸へと魚を誘導するとそのまま、素手で魚を掴み一気に引き上げる。


「うおっしゃぁああ」


 俺は釣りあげた魚をジョーイに見せつけると、ジョーイの眉間に皺がよる。ドヤ顔をしているウィズは満足したのであろうか、再び餌をつけ釣りを始める。


 釣りを始めて4時間がたった頃であろうか。成果を見てみるとウィズは20匹の魚を釣り、ジョーイは0匹だ。そうジョーイは釣りに来て一度たりとも魚が釣れた試しが無い。


ジョーイの釣りが下手だとか、餌が悪いとかそういう問題では無い。ただ単純にエリーが妨害しているのだ。エリーも精霊とはいえ魚類として、自分の契約相手が魚を釣ると言う行為に思う所があるのだろう。ウィズはその姿を見て俺達はちゃんと食べているんだから良いんじゃないのか? といつも思っているが口には出さない。


 そしてウィズはジョーイの妬みの視線を受けながら帰路へと付く。肩に下げた大量に魚をチラチラと見るジョーイのその挙動をみているとウィズは少し可哀想と言う気持ちになっていく。


 村に着くと広場から騒がしい音が響き渡る。騒動の中心に向かって歩みを進めるとシャルロットが台の上に乗って声を張り上げる姿が見られた。


「第一回、精霊お見合い大会開始じゃー! 精霊と契約したいかー」

「「うぉぉぉぉぉ!」」

「契約したいかー」

「「ウォォォォ!」」


 シャルロットを拉致した子供たちが相当盛り上がっている。嫌な予感しかしないが、ウィズとジョーイはそのよく分からない会場へと足を進めるのであった……


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