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14話:目が覚めると……

 目が覚めるとウィズの頭はシャルロットの膝の上に置かれていた。世にいう膝枕である。彼女の太ももは肉付きはさほど良くは無かったがウィズはそれほど悪い気持では無かった。体中の傷はポーションを掛けられたのであろうか、すっかり無くなっている。


 視線をシャルロットの顔へと向けると、彼女の眠る姿が見えた。今まで敵として見ていて、それほど良く顔を見てはいなかったが、見た目は中々のものだった。ほっそりとした体系は世の女性達が羨むスタイルである。更に純白のドレスと真っ白な髪とそして通り掛かった男性が一度は振り返ってしまう程、カワイイ顔立ちである。更にちょこんと頭の上に乗っている王冠が彼女のかわいさを引き立てている。先ほどまで死と隣り合わせの戦いをしておきながら、そんな彼女に膝枕をされてやや照れるウィズであった。


「おっ、起きたようじゃのぉ」


 シャルロットは口から垂れている涎を服で拭い、ウィズに声を掛ける。初めてあった時とは違ってどこか晴れやかな顔をしている。


「あぁ、さっき起きたばっかりだ。すまねえな、ここまでして貰って」


 ウィズはシャルロットの膝から頭をゆっくりと上げる。だが、やはり無理して体を動かした反動だろうか体中が軋む。そして、戦闘中に負傷していないはずの左目に何故か違和感を感じる。そう思い片目を閉じるが今までとそれほど変わらなく見えている。


「気にするでない。お主は……ごほんウィズは傷を治す事だけ考えておれば良いのじゃ」

「どうしたんだ? 何かあった時と態度が……」

「そうかのー? 妾もウィズと会って人間全てが悪いと言う考えは直す事にしたのじゃ」


 シャルロットは、視線をそむけ吹けてもいない口笛を吹き始めた。おかしい、何かがおかしい。シャルロットは明らかに何かを隠している。


「お前、何か隠してるな?」

「なななな、何も隠してないのじゃ」

「嘘つけ!」


 そしてシャルロットの顔をじっと見つめているとある事に気付く。彼女の瞳が左目だけ赤い瞳になっている事だ。ウィズと同じ瞳の色だ。そしてもう片方の目は濁った金色の瞳。ウィズの記憶では出会った頃は、両方とも金色の瞳であった。気を失っている間に何かが起きたのでは? と言う疑問は確信となる。


 ウィズはジト目でシャルロットの事を見つめると、数分後、彼女は耐えかねて口を開く。


「わかった、わかった。どうせ、すぐに分かる事じゃ」

「お前、やっぱり隠し事してたんじゃねえか」

「うるさいのぉ……あとお前ではない、妾を呼ぶ時はシャルと呼ぶがよい。こう見えて昔は偉い人であったんだぞ。妾を名前で呼ぶ事は光栄な事なのじゃ、覚えておくがよい」

「わかったから話を進めろ」


 ウィズのその言葉にぶすっとするシャルロットであった。


「むー、わかったわい。まずは妾が精霊である事は理解しておるな。精霊と人間がするといったらあれしかないじゃろ」

「契約か」

「そうじゃ、ウィズが気を失っている間に、済ませておいたぞぃ」

「俺はそんな話は知らんぞ」

「気を失う前にちゃんと許可を取っておいたのじゃ、ウィズもちゃんと返事をしておったし。それに、妾がここから出るように言ったのはウィズ、お主じゃ。ちゃんと責任をもって妾を面倒みるのじゃ」

「面倒って……とろこで契約したら何か良い事あるのか?」

「もちろんじゃ。妾が使用する魔法を使えるようになるぞ。しかし、お主の魔力では妾の魔法を使うには少々足りなくてのぉ。対価を頂いた」


 シャルロットは当然のようにウィズに対価を貰っていた。気を失っている間に契約を全てやってしまい、目が覚めたら色々な物が取られている。まるで悪徳商人のようだとウィズは思う。


「それで対価と言うのは?」

「ふむ、まずは属性魔法が全て使えなくなっておる。いや、使えなくなっていると言えば語弊があるのぉ。そうじゃな、使いにくくなったと言えば良いじゃろうかな。更に妾とウィズの瞳を交換さして貰ったのじゃ。それと毎日、妾に美味しいご飯を用意するのが対価なのじゃ」

「おい、その対価わりにあってないんじゃないのか? それに最後のは絶対関係ないだろ」

「それで使えるようになった魔法は追々教えてやろう。妾には仲間が必要なようじゃしな。よもや言い始めたお主が仲間になるのは嫌じゃとは言わんよな」


 反論出来ないウィズの顔は、何とも言えない者だった。そしてはぐらかされた事に気付いてはいなかった。


「わかった。何をするのか分からないが協力してやるよ。だが人間を滅ぼすとかはダメだからかな」

「わーとるわい。もうそんな事は考えておらんわ。妾も意地になっておった所があったのじゃ。妾の町を襲った人間が、一部の者であるなんて事は本当は理解しておった。だが、妾のこの町を見るたびに怒りがこみ上げてきてしもうてのぉ」

「そうか……それで俺は何をすればいい?」

「んーそれは追々考えていくのじゃ。妾達の寿命は長い、そんな急ぐ事は無かろう。しばらくはウィズの元で暮らしながら、どうするか決めるのじゃ」

「町長やっていた割には、いい加減だな……」

「ふむ、実務的な事はあまり関与しておらんかったからのぉ」

「じゃあ何やってたんだよ」

「ふむ、主に侵入者の排除じゃな。一度、実務を取り仕切っていた者に町長の座を譲ろうとしたんじゃが、断固として拒否されてしまってのぉ」

「ふーん」

「ふーんとはなんじゃ! 聞いておきながら! まあ良い許してやる。それより旅の準備じゃ手伝え」

「手伝えじゃねえよ。俺はそんな事より、マンドレイクを探しに来たんだ。時間もそんなに余裕がある訳じゃねえんだ」

「マンドレイクじゃったらいくらでも生えとるわぃ。我が町の特産品じゃからのぉ。お主は一直線にこの場所に来たから分からんかったと思うが、下の階層には畑まであるぞぃ」

「だったら、俺はそこで取ってるから準備は自分でしろよ」

「ムー、そうか……じゃが一つだけ注意しておく、マンドレイクは上の部分だけ刃物で切断して採取するようにな。ほっておいたらまた伸びてくるでな」

「わかった!」


 ウィズは剣を下げて、畑のある部屋へと駆け下りる。忙しい奴じゃとため息をつきながら、シャルロットは走り去るウィズの姿を眺めているのであった。



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