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お出かけしてみた。(後編)

「おし、それじゃ乾杯っと」


恵太が爽やかに微笑みながら、ワインの入ったグラスを僕へと向ける。


「う、うん!」


僕は、ちょっと泣きそうになりながら、両手でそんな恵太のグラスへと自分のグラスを合わせる。


うぅ…… なんだか顔が熱くて、頭がくらくらする。


やばい、やばいよぉ…


僕…… なんだかいっぱいいっぱいで、泣きそうだよぉ。


チンッ!


ぷるぷるしながらも、なんとか乾杯をした僕と恵太。


軽く合わせたグラスの音は、とても澄んでいて綺麗な音だった。


きっといいガラスを使ったグラスなのだろう。


いや… 良いのを使っているのは何もこのグラスに限ったことじゃあない。


ぱっと見ただけで、このレストラン全体が相当に高価な物で構成されていることがわかる。


それに、なんて言ったって…… あの天空レストランなのだから。


天空ラストラン… それは魔法の力で浮いている浮島に作られた、超高級のレストランだ。


僕も冒険者だった時に聞いた事はあるけど…… なんでも相当に高いらしい。


確か…… 一回聞いた話だと一人一食1ゴールドルピーだとか。


ちなみに1ゴールドルピーは大体大雑把にだけど10万位の感覚でこの世界では使われている。


まぁ、今の恵太の稼ぎなら、なんてことないんだろうけど……


いったい…… 恵太はこんな凄いところに僕を連れてきて、何がしたいのだろうか?


「お? 料理が来たみたいだぜ?」


「にゃ…? あ、ほんとだ」


なんだかちっちゃい料理が、更に綺麗に盛られて僕達の所にきた。


これが、前菜って奴なのかな?


なんだかちっちゃくってかわいいなぁ。


色とりどりで鮮やかだし…… あ! これトマトかな?


「シノ……?」


「…………んにゃ?」


「いつまでもニマニマ見てないで食べたらどうだ?」


「にゃ…… なんか食べるのもったいないよぉ」


「料理なんだから食べろよ……」


恵太が僕を見ながら、少し呆れたようにして笑っている。


むぅ、そうは言うけど…… なんだか綺麗過ぎて崩したくないんだよ。


「にゅ……」


で、でも……


料理だもん、だべなきゃもっと勿体無いもんね。


「いただきます………」


はむり…… もくもく…… ん……


「んにゃ!?」


お……… おいしぃ!!!


「にゃ! にゃぁ!?」


僕はあまりの美味しさに動揺してしまった。


目を見開いて、料理と恵太を交互に見つめる僕。


「そうか、美味しいんだな? よかったな」


そう言って、優しく微笑んでくれる恵太。


「うんっ!」


僕はそんな恵太に満面の笑みで答えるのだった。


――――


「はふぅ……」


僕は軽くお腹に手を置いて軽くため息をついた。


なんだかお腹いっぱいで幸せだ。


「満足か?」


恵太が僕を見ながら優しく微笑んでくれる。


にゅぅ…… なんだろぅ。


やっぱり恵太の笑顔をみてると気持ちがほわほわしてくるよ。


「うん…… すごく美味しかったよ」


「そんな幸せそうな顔をしてくれるんなら、俺も連れてきたかいがあったな」


そう言ってフッと微笑む恵太。


「にゅ…… むぅ」


そんな恵太の微笑は、今日の恵太のかっこいい服装とあいまって……… なんだかすごく大人っぽい。


な、なんだよそんな顔しちゃって…… いつもの恵太と違う…… ずるい。


「けいた……」


「ん? どうした?」


僕は恵太を直視できなくて、目を少しそらす。


ぅあ… やば… ちょっと顔が熱い。


ば、ばれてないかな?


「そろそろ教えてよ」


「ん?」


「なんで…… 突然僕をここに連れてきたの?」


「ん~~…… 丁度いいか……」


「え?」


恵太はそう言うと椅子から立ち上がって僕の方へと近づいてくる。


う…? な、なに?


「シノ…… 手を」


「にゃ…… にゃ!?」


僕の前に立った恵太は… 爽やかに微笑んで僕のことを見下ろしながら、しなやかな動作で僕の前に手を差し出す。


そんな恵太は凄く紳士的で…… 


凄く…か……かっこいぃ…


どき……ど…き… する…


「にゃぅぅ……」


僕は恵太の手を真っ赤になりながらとる。


なんだか恵太のこの目に…… 逆らえない。


「こっちにきて」



「やっ……!? ぅぅ… にゃぁ…」


僕の腰を抱き寄せて微笑む恵太。


僕は恵太に触られて、一瞬どきっとして固まるけど… すぐに恵太の笑顔でふにゃっとしてしまった。


ぅぅ… な、なんだか僕、いっぱいいっぱいになってきたよぉ……


恵太は僕を抱き寄せたまま、テーブル近くの窓に寄る。


「ほら…… 見えるぞ?」


「え?」


恵太が窓の外を指差して、僕にそう言う。


僕は恵太の指差す方向へと目を向ける。


そこにはどんよりとした雲が………………え?


「ぅ……… わ…ぁぁ……!!」


「すごいだろ?」


どんよりとした雲の先…… そこには……


「き…… れい…」


星のように煌いた…… 美しくて大きな滝があった。


天の河を陸に置いたかの様な滝に、キラキラと蛍のような飛沫が舞って、闇夜にかかる、オーロラのような虹……


そんな綺麗な大滝が…… 壮大な風景がそこには広がっていたのだ。


「凄いだろ? この天空レストランのメイン…… 星霊水の大滝巡りだ」


ぁ…う……


「…は…………ぅ」


言葉が……… でない。


「シノ……」


「にゃ……………ぁ?」


恵太が僕を見つめてる。


僕は泣きそうになりながら恵太を見上げる。


なんだかこの景色を見ただけで… 感極まってしまって…… にゃぅ…


「今日は火の月の7日何だけどさ……」


「にゃ………?」


「火の月って地球になおすと八月だってこと知ってた?」


「にゃぅ……?」


恵太は…… 優しい笑顔で僕を見下ろしてくれる。


恵太の視線が僕に降り注ぐ。


「8月7日…… 誕生日おめでとう…… シノ」


そして恵太は僕にそういったのであった。


「…………………………………え?」


僕はそんな恵太をポカンとして見つめる。


一瞬思考が停止してしまう。


な…


え?


誕生日?


ぼく…… の?


けいたが…… おぼえててくれた…… の?


けいた……


え…


うそ…


















うそ…


うそぉ!?


「にゃ……!?」


僕は…… 僕はその意味を理解した瞬簡に体がびくりとしてぞくりとしてざわざわするのを感じた。


「え… あぅ… にゃぁ ぅえぇ!?」


うれしさと、申し訳なさと、うれしさと、動揺と、うれしさと、驚きと、うれしさと、感激と、うれしさで……


僕はもう訳が分からなくなってしまった。


「お、おい…… どうしたんだよシノ」


恵太が僕の頬に手を触れる。


僕を心配そうに見つめている。


ご、ごめん…… ごめんよ恵太。


「うぇ…… ひぐっ…… にゃ… う…… ぅぅ… にゃぁぁ…」


「お、おい…… 泣くなよ…… もしかしてイヤだったか?」


ごんめね…… 突然泣いちゃって迷惑だよね?


ごめんよ…… いやだなんてことはこれっぽちも無いんだよ?


ただ… もぅ、嬉しすぎて訳わかんないんだよぉ…


「ひっく…… ぐす… にゃ ぁ あ…り……が……とぉ…!!」


僕は恵太の服をすがるように掴む。


そして精一杯見上げる。


首を振って、嫌なわけ無いって伝えて…… そして、頑張ってお礼をいった。


恵太…… 僕… 本当に嬉しすぎるよぉ…


「………………そっか」


しばらく見つめた後に…… 目を細めて嬉しそうに微笑む恵太。


「喜んでくれて…… よかったよ」


その「本当に嬉しい」と言ってくれている恵太の大人びた笑顔に僕は……


「けい……たぁ!!」


その笑顔が可愛くて、そしてかっこよくて、幸せで嬉しくて……


もう本当に… 


どうしようもないくらいに……


「けいたぁ……」


恵太が……


















「にゃぅ」

















僕は恵太が愛しい。



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