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抵抗してみた

最 終 回 !!

「それで……? これはいったいどういうことなのですか? なんでまだのうのうと恵太さんの家にいるのですか? そしてなんで恵太さんが冒険者ギルドに来ないのですか?」


今、シャリアさんが僕たちの家のリビングで僕の向かいの席に座っている。


シャリアさんは僕を強く睨んでいて…… それが僕にとって物凄く怖い。


僕は他人が怖いのに…… 恵太以外の人間は本当に怖くて、ましてや敵意を向けられてるなんて……


眩暈がしそうだ… さっきから本当に怖くて怖くて仕方が無い。


目を伏せて視線を合わせないようにして、恵太が一昨日僕に買ってきてくれたお気に入りの服の裾をぎゅっと握り締めて…… なんとか平静を装ってる。


いや…… 


本当は平静なんて全然保てて無い。


先からシャリアさんの声が、視線が… 怖すぎて震える。


気を抜いたら今にも泣き出してしまいそうだ。


にゃぅぅ……





で、でも……


今、逃げる訳には…… 行かない。


だって、僕は恵太から離れたくない…… いや、離れられない。


シャリアさんが言うようにはできない。


僕は嫌なんだ…… 恵太から離れるなんて…… ぜったいぜったい、恵太のそばがいいんだ。


だから…… だからそれをきちんと伝えなくちゃ。


他ならぬ…… 恵太に対してのことだから………


恵太に対しての気持ちだから……


僕は… 退けない!


「にゃ……ぅ… ぼ、ぼく…」


「は? 何ですか? なにか言い訳でもあるのですか?」


シャリアさんが僕を睨みつけて少し声を荒げる。


こ、こわいよぉ…… そんなに睨まないでよぉ…


や、やばい…… 体の奥から震えてきた……


腰から力が抜けちゃいそうだよぉ。


で……


でも…… 言うんだ……!


いわなくちゃ!!


「ぼ…くは… 恵太から…… は、はなれません!」


「…………………………は?」


シャリアさんの放つ空気が、ピシっと音を立てて冷たくなる。


僕はその空気間に…… 吐き気がするほどのプレッシャーを感じる。


こわい…… こわい… こわいよぉ……!!


ぅあ…… やばい… なみだでてきた……


だ、だめ…


でもないちゃだめだ……


泣いちゃったらなにも話せなくなっちゃう……!!


だから、がんばれ…!!


ちゃんと言うんだ…… 僕!!


最後まで…… 


「け、恵太と離れたくないんです!! 恐慌とか関係ないんです……!! 恵太と…… ずっとずっと…… 死ぬまで一緒に居たいんです!!」


声が… かすれる。


手が… 震える。


でも… 言うんだ… 最後まで言い切るんだ!!


「ぼ、僕は…… け、けいたが…… す…すきなんです……!! 大好きなんです!! 愛してるんです……!! だから…」


僕は……


「恵太から… 離れません!!」


い… 言えた…ぁ


泣かないで… ちゃんと最後まで言えたよぉ… けいたぁ!


「へぇ……」


僕が最後まで言い切った後、シャリアさんは少し間を置いてから、小さくそう呟く。


その声は…… 全く抑揚がなくて、冷たくて…… そして。


「ひぃ………ッ」


凄まじいまでの殺気が込められていた。


「あなた…… 馬鹿なの?」


「がっ……!? っつぁ!?」


シャリアさんが突然消えて、次の瞬間僕の前に現れたかと思ったら、その直後には僕の首を鷲づかみにして締め上げていた。


「あなたが恵太さんを好きとか、そんな事はどうでもいいのよ…… 私が言っているのはあなたの存在が恵太さんのじゃまになっているという事なのよ?」


「ぁ…ぅあ… くるしぃ…」


シャリアさんが僕の首をぎりぎりと締め上げる…… 爪がのどに食い込んで痛い。


「あの…… 凛々しくて気高い恵太さんが… なぜあなたの為にあんな他人に頭を下げるような仕事をしているのかしら?」


「は… くぅ… ぁ」


息が… できな… ぃ。


「あなたはやはり有害ね、駆除すべきだわ…… あの人にふさわしいのは私、あなたじゃない」


「ぁ……ぁ…ぅ」


………しんじゃ……ぅ。


「私の方があの人を愛しているの…… だから貴方は死になさい」


「…………ぁ」


あいしている………?


僕よりも……けいたを……?






チリン……





恵太がくれた…… 鈴の音がする。





そうだ……





僕の大好きな恵太が…… くれたプレゼント……












「ち…… がう…」


「え?」


「ちがう!!」


「きゃ!? な、何を!?」


僕はテーブルの上にあった花瓶を思い切りシャリアさんにぶつける。


「………ッぁ… はぁっ! はぁっ!! はぁぁ!!」


シャリアさんがひるんだ隙にシャリアさんの手から抜け出す。


「このおっ!! 無駄な抵抗を!!」


だけど…… 抜け出しただけだ。


もう後は無い。


だって、恐怖で体は硬直してるし…… 酸欠で頭はくらくらするし…… 腰がぬけてて立つ事も出来ない。


今の僕に出来る抵抗なんて…… 今のが正真正銘最後の抵抗だ。


今の僕に出来ること何てもう何も無い。


できるささやかな抵抗といえば、涙を堪えることと……


「確かに…… 恵太にふさわしいのはシャリアさんなのかもしれない、僕は恵太にとって有害でしかないのかもしれない…… でも!!」


この心一杯の……


「恵太を一番愛してるのは僕だ!」


恵太への思いを…


「これまでの幼馴染としての思いでも、ここで暮らし始めてからの思いでも… 恵太に抱いてもらった思いでも…」


言葉にするだけだ。


「全ての恵太を愛してる… 僕が一番愛してる!! 僕が…」


力いっぱいに…


「僕が一番恵太を大好きなんだぁ!!」


言葉にするだけだ!!






「はっ… はぁ… は… ぅ…くぅ……」


感情が…… 感情が高ぶりすぎて呼吸が乱れる…… 涙が出てくる。


でも…… 言えた。


ちゃんと最後まで言い切れた… 


やった… やったよ… ぼく…「恐慌」に負けなかった。


泣かないで最後までやれたよ…


えへへ… やったぁ…! 


けいた、「がんばったな」って…… 言ってくれるかなぁ?


けいたぁ……



「そう…… わかったわ」



シャリアさんが僕を見下ろす。


僕は息があがったまま…… シャリアさんを見上げる。


上を見上げると、涙がぽろぽろこぼれて頬を伝う。


もう、涙も止められないし、動くことも出来ない。


さっきので完全に気力を使い果たしてしまった。


もう…… 怖くて、心細くて… 力が… でないよぉ。



「もう…… あなた死になさいよ」



ガツン!!



「がぁ…ぅ…!? ぇ…ぁぃ?」


え…?


な…… え?


あたま…… これ…


ちかちかして…… ぁ… いた…


いたい!?



「目障りなのよ… 本当…… 死んで?」



ガツン!!



「にゃ…ぁ!? あ ぁぁぃ」


いた… いたぁ……


あたま… これ… 血だ…


くらくらする…


目の前が… まっかだ……



「あなたなんて…… いなければいいのよ…… そうよ、死ねばいいのよ」



這いつくばって床に倒れてる僕……


僕が顔を上げて、ふらふらした視線を向けるとそこには…


血のついた魔法の杖を持った…… シャリアさんが僕を見下ろしていた。



ガツン!!



「ひゃ…ぅ… ぁ…」


あ… やば…


これ… 死…


い……たぁ



「死ね、しね、死になさいよぉ!!」



ガツン!!



「ぁ………ぃ…」


あ……


け……た。


けい……たぁ…


たす…け…


て…



「シネぇぇええぁぁぁぁ!!!」



ドガアアアアアア!!!



「ぐぎゃああああ!!??」



































「悪い…… 遅れた」


「けい……た?」


「ああ…… そうだよシノ…… ごめんな… こんなになるまで」


突然……


シャリアさんが杖を振りかぶって、思い切り振り下ろした瞬間。


突如空間から現れて、魔法障壁でシャリアさんごと吹き飛ばした恵太。


恵太は…… 僕を強く抱きしめ、回復魔法をかけながら、僕の顔を泣きそうな顔で覗き込んでいる。


「けいた…… そんな顔しないで? 僕は大丈夫だよ?」


恵太の回復魔法で少しだけ意識が回復してきた。


まだ、凄くズキズキするしくらくらするけど大分ましにはなった。


だから…… そんな泣きそうな顔しないでよ…… けいた。


「ありがと、もう大丈夫だから…… ね?」


僕は恵太の頬を両手で包んで、にこっと笑ってみる。


大丈夫だからね? 心配してくれてありがとね?


「…………ちょっと待っててな」


恵太は僕の事を一度ぎゅっと抱きしめると、すっと立ち上がってシャリアさんを見やる。


「おい……」


そして…… 僕が今まで見たこと無いような怖い顔で、シャリアさんを睨んでいた。


「お前…… なにやってんだよ…… わざわざご丁寧に認識阻害の結界まで張りやがって…… 俺がもしシノの危機をぎりぎりで察知できてなかったら……」


恵太は体を一度ぶるりと震わせて青ざめる。


そして……


「け、けいたさん……!?」


次の瞬間には鬼の様な形相を浮かべたのだった。


「お前は許さない」


そんな恵太の様子を見て、瞬間に青ざめるシャリアさん。


「ち、ちがうの!! これは全部あなたの為なのよ!! あなたをあるべき姿にするために!! バットステータス如きであなたを束縛するこの女を…… あなたから引き離すためなのよ!!」


青ざめながら… 必死で弁明をするシャリアさん。


そして、そんな彼女を禍々しい目つきで見下す恵太。


「俺のため? バットステータス如き? 引き離すため?」


「そう!! そうなのよ!! あなたの為なの!! そんなステータス異常如きであなたを束縛するなんて…… そんなのしていいことじゃないでしょう? 恵太さんだって本当は迷惑してたんでしょう!?」


「………………馬鹿か?」


恵太はそう言って、シャリアさんに手をかざす。


そして短く呪文を唱える。


「ひゃ…ぁ…!?」


するととたんにシャリアさんがびくりと震えてうずくまり、顔を真っ青にする。


「え……!? や… やだ… やめて!! な、何をしたの!? わ、私に何をしたの恵太さん!! こ、怖い、怖い怖い!! な、なんなの!? なんでこんなに怖いの!?」


そう言ってがたがたと震えだすシャリアさん。


これは…… 多分…


「わかるか? それが恐慌のバッドステータスだ…… 最近完成した俺のオリジナル呪文だ」


「え……ぁ… こ、これが……!? こんなのが…恐慌の?」


ガタガタと震えて、奥歯をカチカチ成らして、激しくうろたえるシャリアさん。


「おい…… クソ女」


「え……!?」


恵太は震えるシャリアさんを、冷たい目で見下して声をかける。


「お前は全部間違ってる」


そして、僕を真剣なまなざしで見つめて声をかける。


「シノが俺のそばいにいるのは、シノがそれを望んでいるからだけじゃない…… 俺もシノがそばにいることを望んでいるからだ…… シノがいないと困るのは俺も一緒だ」


「な………!!」


はっきりと言い放つ恵太に…… 絶句をするシャリアさん。


「お前は俺にとって最悪なことをした…… よりにもよって、俺にとって一番大切なものを傷つけた」


「ぇ……あ…う」


「許さない…… 絶対に許さない…… そうだな…… あんたは別次元に飛ばそう」


「え………?」


「これも最近完成した魔法でさ…… コントロールが難しいんだ…… 本来の用途は瞬間移動だけど……」


恵太は… 冷たくニヤリと笑う。


「適当に発動すれば…… どこに飛ぶかは分からない」


恵太はシャリアさんの頭を掴む。


「ひっ!!」


それに慄くシャリアさん。


「運がよければ、この世界のどこか遠く…… 悪ければ別の時代や、魔界…… そして何も存在しない次元の狭間」


「え!? あっ!? え…ぁ…足がぁ!?」


恵太はそう言いながら、同時進行で空間転移魔法を発動させる。


発動はゆっくりで…… シャリアさんの足首から、少しずつ黒い虚空がシャリアさんを別空間へと飲み込んでいく。


「もちろんバッドステータスの呪いも解かない……」


「や!! やぁ!! た、たすけてぇ!! あああ!! く、くびぃ… 首まできたぁ!!」


「じゃあな…… せいぜい元気で暮らしてくれ…… クソ女」


「やアアアアあああああああああああああああああああああ!!!                  ぁ 」


とぷん…… と小さく音を立てて虚空へと消えたシャリアさん。


後に残ったのは、最後の悲鳴の残響だけだった。


――――


「なあ…… シノ」


「なぁに?」


恵太が僕の事を後ろから抱きしめて座っている。


さっきから30分くらいこの体制のまま、無言で僕の事を抱きしめていた。


「お前の事さ…… 監禁していいかな? 

誰の手にも脅かされないようにさ…… 俺だけがお前といられるようにさ……」


恵太がそんな事を言って僕をぎゅっと抱きしめる。


恵太の顔は背中だから見えない。


「いいよ…… 僕を監禁して?」


僕は自分の首に回された恵太の腕に触れてそう答える。







「冗談だよ…… 俺がシノにそんな事する訳無いだろ?」


恵太はそう言って背中越しに笑う。


「いいよ…… 僕は恵太になら何されたって」


そう言って恵太の胸に体重をかけて体を預ける。


少しだけ恵太の腕に力が強く篭った。


「ねぇ、けいた」


「なんだ?」


「恵太にお願いしたいことがあるんだ」


「いいよ…… なんでも叶えてやるよ」


「頭…… まだ痛いんだ…… なでて?」


「こうか…?」


「うん…… そう、気持ちいい」


僕がそう言って恵太の腕の中でまどろんでいると、不意に恵太が僕の耳元で小さく囁いた。


「血まみれのお前を見て、本当に血の気が引いた…… 死ぬかと思ったよ」


僕はその言葉に、なんだか嬉しくてふるりと小さく体を震わせた。


「ねぇ、恵太」


「なんだ?」


「もう一つお願いしてもいいかな?」


「いくらでも言え」


僕は体をひねって後ろを向く。


そして恵太と目を合わせて…… はっきりと言った。


「一生僕と一緒にいてください…… 僕は世界一大好きなあなたと死ぬまで一緒にいたいのです」


「シノ……」


「もし…… いいのなら誓いの口付けをしてください…… ダメなら……ぅん!?」


言い終わる前に恵太が口付けをしてくれる。


なんだかこの強引さが…… うれしい。


うん……


やっぱり幸せだ。


恵太といるのが幸せで、やっぱいり僕は恵太とずっと一緒にいたい。


幼馴染とか、元男とか、恐慌とか…… 全部関係ない。


だって……





「…………ちゅ… んにゃぁ…けいたぁ…! ほんとに大好きぃ………!!」


今僕はそう思ってて…… そして、それが全てなのだから……


ね? 恵太?






いやぁ…… 終わってしまいました僕呪です。


いかがでしたでしょうか?


まぁ、自分的には結構大好きな話でした。


猫耳っていいよね?


さて、この話もまた後日段のエピソードを用意しておりますが、これもまたいつ書くかはきめておりません。


気が向いたときにでも書きます。


ちなみにTS短編の第三段の構想も練り終わってるので、お仲間は俺の事をお気にいりにして全裸待機すべしw


最後なんでちょっとしたキャラ解説。


シノ


猫娘。


恵太大好き。 もちろん男の時は親友としての好き。


しかし、女になってからは依存により、想像以上に早くベタ惚れ状態に。


しいて言うなら、「常時つり橋効果状態」。


つまり、恵太が逞しくてかっこよく見えて仕方ない状態。


だから、惚れたってしかたないよね? だって女の子なんだもの。


それでも愛。


築いた信頼と、今までの親愛から生まれたその気持ちはきっと本物。



恵太


超強い魔法使い。


惚れたって仕方ないでしょ? だってシノかわいいもん。


可愛い娘と一緒にくらしてて、しかもその娘がかいがいしく世話を焼いてくれる娘だったら惚れてまうやろ?


男なんてそんなもんやろ?


そういった浅いところから、ガチの好きになっちゃうのが男ってもんでしょ?



見たいな感じ。


あれ? キャラ紹介ではなかったなw



まぁとにかくまた会いましょう!


大丈夫! わりと直ぐ次回作かくと思うから!!


また!

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― 新着の感想 ―
tsっ娘との共依存なんて最高じゃん
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