噂の失神王子様
外に出てみると雲一つない晴天
それまで気にしてなかったが、今は何月だろうという、普段ならあり得ない疑問が生まれた
それほど寒くないし、暑くもない微妙な気候
だから、秋か、春あたりだろうと推測できた
しかし、季節なんて俺にとってはどうでもいいことで、不思議と全然気にならなかった
なんせ、季節なんてもんは、嫌でもそも内わかるから
その日、俺は「俺はお前の親友だからな」とか言ってる、同年代くらいの方と森に来ていた
なんと、王家の騎士団のお偉いさんの息子さんだとか・・・
そいつは、リキノといって、俺の幼馴染らしい
俺的には初対面なんだけど。
リキノは、浅黒い肌の健康的なイケメンだった
俺はこの世界に来ても、容姿は全く変わっていないので、黒髪黒目だったが、彼はナチュラルな金髪で目は、透き通るようなエメラルドグリーンだった
サーフィンとか、絶対似合うよ!
って教えてあぜたかったけど、「なんだそりゃ」ってことになっちゃうのは目に見えてるので、やめた。
それより、馬に乗れるのかって?
もちろん!
乗馬やってたんだよ、いやいや前の世界で。
金持ちだったからさ。
「なぁ、ユナ・・・」
ななな、なんですか?
「ん?」
俺たちは一体どんな関係なんだ?
どんな話し言葉で喋ればいいんだ?
「どこだったかのお姫さんが、森で狩人に殺されたって話知ってるか?」
はい、昨日盗み聞きしたので。
「あぁ」
「どうも、あの魔女だとかいう王女がそのお姫さんを殺すように狩人に命じたらしいぜ。おかしいと思わないか?せっかく養女に迎えたのに、すぐ殺させるって」
I think so,too.
魔女だとかいう王女?ただの魔女じゃなくて?王女なの?
「あぁ」
「なんか、話の流れ的に、白雪姫と似てるよな。探してみないか?そのお姫さん」
おぉ~!!
ここにも俺と同じ
新・白雪姫説を信じてる方が!!!
やはり親友だ。
いや、心友だ。
「あぁ」
てか、俺さっきから「あぁ」しか言ってないんだけど大丈夫?
「おまえはいっつも『あぁ』しか言わないよなー」
いっつも?
じゃあ、大丈夫。
「そうか?」
「そうだよ、ほかに言葉知らないのかと思われるぜ?一国の王子がさ、それで大丈夫なわけ?」
「あぁ」
あっ!ヤバイ、「あぁ」って癖になってきた。
またしても返事が『あぁ』だったことから、リキノの機嫌を損ねたらしく、俺はリキノに『王子としての自覚』(心ん中で付けた)という題材で、森の奥に奥にと進みながら、長々と説教された
気付いたのだが、リキノはバッチリ俺と目を合わせて話していた
なので、俺の顔を見て失神しちゃうのは、女の子だけらしい
1時間位、馬を進めると、休憩することにした
「俺、ちょっと寝るから」
リキノはそう言うと、木の根を枕にしてさっさとお昼寝してしまった
おいおい・・・マイペースすぎだよ。
さっきまであんなにオレに説教くらわしてたのによ!
てか、高貴な身分のお方がよくこんなジメジメしたところに寝れるよな。
なんか朝なのに薄暗いし・・・
そう、今思ったが今は朝なのだ
俺は朝が苦手だから、休みの日は、俺に午前中という世界は存在しない
なのに今日!!
このよくわからん世界に来ちゃって、毎日午後起き天国だと思ったのもつかの間
リキノは、(何時か分からないが)『朝』迎えに来た
俺を、狩りに
午後すぎに、可愛いイチちゃんの声で起こしてもらう予定だったのに
しかし、満足に寝てないのにも関わらず、全然眠くないし、疲れてない俺は、近くを歩いてみることにした
てか、なんで歩いても歩いても同じ景色なんだ?
まぁ、そうか。
森だしな・・・
しばらく歩くと・・・どこからか、女の人の声が聞こえた
声の正体も、なんて言ってるのかも分からない
俺の小さい好奇心が、俺を声のする方に近づけさせる
すると木の開けたところに誰かがいた
よく見ると、真っ赤なドレスを身にまとった女の人が地面にしゃがみこみ、何かに向かって話している様子が見て取れた
彼女の赤いドレスは、薄暗い森によく映えた
・・・誰と話しているんだ?
ここから見る限りでは、彼女の他に人はいない
彼女が話しかけているであろう部分をジッと見つめる
よく見ると
・・・青い花?
ははは、はなと喋ってんのか??
それともあれか?
会話してんじゃなくて、一方的に花に話しかけてる?
犬とか飼ってる奴が、犬に一方的に話しかけてんのと同じで・・・
よし、もっと近づこう
俺はきずかれなようにいないように、忍び足でゆっくりと彼女に近づいていく
すると、女の声だけでなく、男の声も聞こえてきた
えぇ??
・・・・・・・・・・・・・やっぱり花と喋っる?
「・・・ミチ、そんな怒るなよ」
やっぱ今の言葉、花が揺れて・・・喋ってたよ・・・
てか、言葉遣いがおかしくないか?
俺の前の世界によくいたぜ、こういう奴。
まぁ、花が喋ってるとして、あの女の人・・・なんか思ってたより幼いな
「怒ってない!だいたいあんたが、のこのことあんな怖い魔女の所に来るから・・・レンがこんな姿に」
「っ・・・ちがっ・・・俺はただお前が殺されちゃうのかと思って・・・助けようと」
なんか、なかなか深刻・・・
「殺されるわけ無いでしょ!あの頭のおかしい魔女は白雪姫ごっこがしたいだけなのよ」
「・・・・・・・え?白雪姫ごっこ・・・?」
「あの女は私にこう言ったわ『私、魔法の鏡を持ってるの。でも、私には白雪姫がいないわ・・・こんなつまらない事、ある?いない役者は白雪姫だけよ・・・でも、もう見つけたわ。私より美しい女の子・・・それは、あなた』って。だから私聞いたのよ『じゃあ、あなたが森に逃げた私のことを殺しに来るの?』『そうよ・・・これは私の人生を賭けたゲームなの・・・私の作り出した白雪姫は幸せになれるのか・・・ってゆうね』・・・そのあと、あの女は不敵な笑みを浮かべてずっと笑ってたのよ。気味が悪いったら」
「ほぉ~で、そこに俺がのこのこと入っていっちゃったってわけか・・・で、『私の人生を賭けたゲームに邪魔者はいらぬ!!』とか言われて、俺はこの姿・・・あぁ・・・出しゃばり損」
「で、どうすんのよ!あの女ホントに私のこと殺しに来るわよ?」
「俺が助けてあげるよ」
あ・・・ヤベっ・・・つい口が滑って・・・
「「・・・え?」」
男女の声が重なった。
女の子は鳩が豆鉄砲くらったみたいな顔でこちらを見ている・・・
花の方はよくわかんないけど。
「だから、この俺が助けてやるって」
俺は彼女たちに近づいていった
「・・・ん?どうした?」
その女の子は豆鉄砲くらった顔で、さっき俺がいた場所を見つめている
あ・・・もしかして
ハッとして女の子の肩を揺すってみた
が・・・
その女の子はさっきとおんなじ表情のまま後ろに倒れかけた・・・
俺は生まれつきの反射神経の良さで、倒れかけた女の子をキャッチした
ナイス俺!
てか、本当に失神しちゃうんだー
ビックリ!
「やるなぁ・・・お前が噂の失神王子様か・・・俺でも惚れるぜ」
やっぱ・・・は・・・花が喋った・・・
「で、王子様はどこから話を聞いてたんだ?」
「うーん・・・白雪姫ごっこの話あたり?」
「じゃあ、話が早いな。俺の名前はレン」
「俺はユナだ。ってか、お前は地面から引っこ抜いてもいいのか?」
「あぁ、問題ないぜ。埋めたのは、今お前の腕の中で失神してるミチだからな『ずっと持ってると気を使うから』ってさ」
花としゃべるなんて、そうそうないからなー
なんか、不思議だ・・・
俺はそんなことを思いながら、花を優しく引っこ抜いた
根っこはなく、がっしりとした茎が綺麗な花を支えていた
ミチとかいう女の子を、お姫様だっこ状態で抱き上げて、花をその子の腹の上に乗せた
そして俺は、リキノが寝ているところへ向かって歩き出した
「俺の姿は日に日に変わるんだ。そういう複雑な呪いなんだよ」
「じゃあ、明日自分がどんな姿になるかわかるのか?」
「好きで変身してるわけじゃないからな・・・寝て起きないとわかんないなー。てか、ミチは大丈夫?」
「さぁ、失神の後遺症がやばいっぽいけどな・・・夢にうなされるとかって話だぞ。俺は知らんけど」
「ふーん、てかさぁ、お前一生キスとかいろいろできないんじゃない?」
「やろうと思えば出来なくもないんじゃない?ずっと目閉じててもらえば」
てか・・・なんでこんな話を?
初対面のコイツと??
「いやいや!ダメだねー」
何が。
しばらくすると、向こうから誰かが馬を2匹連れて歩いてきた
馬を2匹連れてるとこから、リキノだということがすぐわかった
「おい王子、向こうから誰か来るぜ」
「あぁ、大丈夫、俺の幼馴染だ・・・ってか、花のくせに目が見えるのか?」
「そうみたいだなー、花になったっていうより、花ん中に閉じ込められたってかんじかなー」
「へぇー」
面白そうだな、なりたくはないけど。
ってか、こいつ、俺が王子だって知ってんのに、お友達みたいに喋るんだな・・・
なんか複雑な気分・・・一応王子なんだけど。
「おい!ユナ、どこ行ってたんだよ。探したんだけど」
リキノは、不機嫌そうな顔だった
「や、お前が寝るからだろ?」
「っ・・・てか、誰これ?何この花・・・」
リキノは、やっと俺の腕の中で失神している美少女と花に気がついた
「この子は・・・なんだっけ?名前」
「ミチだよ」
レンの声が聞こえた途端、リキノの目が丸く見開かれた
「今、喋ったやつ誰・・・?」
「この青い花だよ、レンって言うんだ。魔女に姿を替えられたんだってさ」
「そ、そうなのか・・・って・・・ぇぇえええ!?は・・・花が喋ってる?」
「驚かせちゃってゴメンな。はははー」
「いいい、いえ・・・」
というわけで、リキノに2人の事情を話し城でかくまってもらうことにした
ミチが、俺を見て失神したと伝えると
「マジか!!それは面倒なことになるぞ・・・」
「やっぱり後遺症がやばいのか?」
俺より先に、レンがその質問をした
「やばいぞー、うちのメイドはそれで何人クビになったんだっけな?100人はゆうに超えてるな」
「「100人!!!!!!?」」
俺と、連の声が重なった
「あれ?ユナも知らなかったのか?張本人なのに」
や、やばい展開??
リキノが、不思議で仕方ないとでも言うような顔でこちらを向いた
「や、いっぱいいたのは知ってたけどさすがに数字までは・・・な」
ハハハハ・・・は