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遠回り
第四話です。
宜しくお願いします。
あれは――
なんの記念日でもない、
ただただ普通の
平日の夜だった。
いつもの様に夏実と二人で食事をし、
駅まで歩いていた時のことだ。
いつもより少し酔っぱらった夏実は
駅の手前でこう呟く。
「ねぇ、遠回りしよっ。」
いつもの夏実らしくない顔と
俺の腕を握る手が
若干小刻みに震えている様にも思えた。
俺はそんな彼女の様子を察し
「ん~。ちょっとだけな。」
と、言い
一駅だけ歩くことにする。
すると途中見えてくるホテルのネオン。
彼女は
か弱い力で
俺を引き留め
立ち止まる――。
俺達は何も言わず
そこへ入った。