生きる
最終話です。
宜しくお願いします。
手紙の最後には
こう書かれていた。
“実は夏実のお腹には
赤ちゃんがいました。
でも、病気の合併症で、
産むことが困難だと言われ
おろしました。
夏実はその時だけ泣いていました。”
俺はこの時理解した。
何故あの時、SEXを拒まれたのかを。
―――
あれから数年。
俺はあの時話していた
子供の話を思い出す。
今俺に出来ること――
それは
夏実が産むことの出来なかった
俺の子供を作ること。
最初は戸惑った。
違う女性との間に作る子供だ。
“彼女が許してくれるだろうか?”
最初はそう思った。
だけど俺は想う。
いつも戸惑いなくいてくれた
彼女のことを。
そして――
あの日――
あの夜――
確かに彼女はそこにいて――
戸惑いなく交わることができた、
誰にも揺るがすことのできない
彼女との愛の形。
俺は決して彼女を忘れない。
――そんな俺のことを
好きになってくれた人もいる。
今の妻だ。
妻には全てを話し、
理解してくれた。
子供の名前は妻が
「春香」
と決めた。
―――
「オギャーオギャー」
和也「よ~しよしよし!」
夏実――
いつも笑顔だった夏実――
こんな俺を好きになってくれて
ありがとう。
俺は――
春香と、
そして妻と――
夏実の分まで生きてゆく。
穏やかな春の風が
優しい香りを漂わせ
四人の心を
そっと暖かく包み込む――。
FIN.
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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