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二人目の子供
第一話です。
宜しくお願いします。
「運転手さん、急いでください。」
季節は春のある日――
俺は近くの病院へ急いでいた。
運転手「3200円です。」
5000円を支払うと
おつりを受け取らずに病院へ駆け込む。
5階で止まるエレーベーターを
見過ごすと――
階段を使い、
一気に3階までかけ上がった。
「はぁ……
はぁ……
はぁ……」
「む、娘は!?」
病室に入るなり
廊下まで響き渡る大声でそう言う。
するとすぐに視界へと飛び込んでくる
小さな命。
「3200g……
元気な女の子ですよ。」
子供が産まれた。
俺の子供が。
俺は産まれたばかりのその子を
抱き上げる。
「和也……この子のお名前。」
妻がそう言った。
「うん……春香……
この子の名前は、橋元 春香だ……。」
この時俺は命名する。
“二人目”の子供の名前を。
一人目の子供は
もうこの世にはいない。
顔さえ見ることもなかった。
だけどあの子は
紛れもない俺の子だ。
―――
6年前――
俺は夏実と言う女性と
付き合っていた。