<夢透視>第一部
次の日、私と砂沙は学校の屋上にいた。
「で? 今日はどんな夢を見たの?」
砂沙が私に尋ねた。
「ゴホン……」
私はわざとらしく咳払いをした。
「この屋上に無人の気球が着陸。晴れの予報だけど大雪に」
私は続けた。
「神様みたい。デジャブとかじゃないの?」
「デジャブって?」
「ほら、“この場面夢で見た”とかいうときがたまにあるでしょ?本当は夢で見たわけじゃないのにね」
「でも、ありえないことが起きてるじゃない」
「…………今日のいつ?」
「もうすぐ。あっ! あれ! あれだよ!」
私は遠くからゆっくりと近づいてくる気球を指差しながら言った。
やがて気球は屋上に着陸した。中には誰も乗っていなかった。
「傘も必要になりそうだね」
砂沙が驚きながら言った。
「どうしよう……これどういうことなの? 何で正夢ばっかり……」
「正夢っていうか、現実が夢に合わせてる気がするんだけど」
砂沙が言った。
「現実が夢に?」
「でもさ夏乃! それで人を救えたりするんじゃない?」
「どういうこと?」
「事故とか災害とかの夢を見たときに、それを事前に防ぐってこと!」
「でもさあ……私がそんな夢見なきゃそうなることもなかったってことでしょ?」
「人を助けることには変わりないんだよ。それにさ、そうやって夢で見た運命を変えていくことによってその能力も薄れてくるんじゃない?」
「確かに……そうかも……」
「きっとそうだよ。大丈夫、すぐ治るよ」
「ありがとう、砂沙」
「まあ……ね。頭良いと感謝されること多くてさ」
砂沙は照れを冗談で隠しながら言った。
「頭のよろしい砂沙さん。次の授業は数学のテストが返ってきますよ」
私はニヤケて言った。
「何でそんなに嬉しそうなの? 夏乃も大の苦手でしょ?」
砂沙が尋ねた。
私は屋上から階下へ下りる階段のところまできた。
「百点取る夢、見ちゃった」