<嘘つき>
「わかりました。あなたの夢なら、信じてみる必要がありますね」
この警察官の発言に私は頭を下げた。何より、嬉しかった。
「いつ頃来るか、わかりますか」
「明日の早朝です。起きてない人もいる時間帯に」
「わかりました。では今すぐ手をうちましょう」
警官はパンと手をたたき、勢いよく立ち上がった。警官は街内とその周辺の警察署全てにこの旨を電話で伝えた。黄ビタキの街をいくつかの区域に区切り、各区域に警官を割り当て、この非現実的で不確かな事実を伝えるようにした。黄ビタキの街とその周辺とはいえ大変狭く、この一連の作業は何の滞りもなく進んだ。
だが警官の説明を聞いても、当然のようにそれを根っから信じない者が出てきてしまった。
「アンタ、嘘つきだろ? 信じれる訳ないよ」
私が立ちあわせた区域の町民の一人が、私に遠慮なく言った。
「そうだ、そうだ」と一部からヤジも飛ぶ。
「それに最近は全然夢を見ないそうじゃないか。もう能力なんて消えているんだよ。だから昨日君が見た夢はただ普通の夢さ」
私は黙っていた。
「だいたいそんな規模の地震で、この街とその周辺のほんの一部しか被害を受けないなんてのが可笑しい。私は従わんよ」
「信じてください……」 漸くして私は口を開いた。
「信じてください! これが最後なんです! そして私に残されたたった一つの使命なんです!」
人々は皆一斉に静まり返った。
「私は夢の中で親友を亡くしました。だから誓ったんです。その分多くの人たちを救うって……わかってください……親友のためにも」
少し沈黙が続いたがやがて、「オレは信じるぞ!」という一つの声と共に、「オレも!」「私も!」という賛同者が次々と続出した。
それは波のように広がり、ついには九割が賛同者となった。
だが残りの一割の人たちは頑なに反対した。そして終いには暴言を吐き、その場から立ち去ってしまった。