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<事故>第一部
「夏乃! 夏乃……!」
誰かが遠くで呼んでいる。やがて私は目を覚ました。
「夏乃! 良かった」
辺りを見回すとそこは病院だった。
「お母さん? ここは?」
逆光で顔が陰っている母に、私は尋ねた。
「病院よ。 交通事故でここに運ばれたのよ」
私ははっきりと思い出した。日曜日なので、久しぶりに母と買い物に出かけたその帰り道に、青い車と衝突したのだ。
「脳震盪と言われたのに……なかなか起きなかったから心配したのよ」
母が言った。
「大丈夫だよ」
私は半分呆れて言った。
「そう……じゃあ明日から学校へ行けるわね」
母が笑顔で言った。
私は眉を少し吊り上げて、苦笑いをした。