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星創プロダクション

作者: 田月
掲載日:2026/05/05

「高崎さんお疲れ様です。ことちゃん今回も最高の演技でした!」


「あら、本庄さん。いえいえ、こちらこそウチのことを、起用して(つかって)いただきありがとうございました」


「ことちゃんがいれば高視聴率間違いなしですからね。いや~、こちらとしても助かりました。それでですね、高崎さん。次の番組の件なんですけど、今度はバラエティ番組企画してまして、星プロから誰か出演して(でて)いただきたくってですね。誰かイイタレントいませんかね?」


「本庄さんウチに所属してるのは、タレントではなくスターですよ?」


「ああこれは失敬しました(笑)」


「この件は持ち帰って検討しておきます。では失礼します」


「ぜひ前向きに検討お願いします」


カツンカツンカツン


「先輩さっきの人誰すか?」


「あの人は、星創(ほしづくり)プロダクションの代表兼マネージャーの高崎美鈴だ」


「星プロってあのアイドルのおとめスピカが所属してる!?僕初めて会いましたよ」





星創プロダクション。3年前彗星の如くおとめスピカと共に現れた芸能事務所。代表兼マネージャーを、前職はIT企業の技術者という異色の経歴を持つ、高崎美鈴一人が務める、小規模な事務所。それにもかかわらずここ数年で目覚ましい成長を続けている。国民的アイドルおとめスピカに続き、最優良女優賞の俳優ことベガ、Nー1歴代最高得点優勝の漫才師おおぐま・こぐま、去年のナンバー1ブレイクタレントおりおんベテルギウスなどを輩出している。所属者は全員スターと銘打たれ、本名や年齢何もかもシークレット。その卓越した能力と神秘性の高さから、各分野で瞬く間に現在の地位に上り詰めた。


「こちらが今回のインタビュー記事での、星創プロダクションの紹介文となります。高崎マネージャーいかがでしょうか?」


「ウチとしてはあまり所属スターと事務所を関連付けたくないので、この紹介文章は丸ごと無くてもよいのですが」


「ははは、高崎さんそういうわけにはいきませんよ。今回の記事は、スピカちゃんへのインタビューと高崎さん、あなたへのインタビューの2つを軸にしていきたいんですから。高崎さん。それよりスピカちゃんはどちらに?」


「スピカ本人の回答は避けさせていただきます。安心してください。インタビューを録音して、後日回答をお送りします」


「ははは、まさかとは思いましたが()()()は本当だったんですね」





「へぇ~。そんなに秘密が多い事務所の、スターの一人に会った事あるなんて先輩凄いっすね」


「あれな。実はオレも、ことちゃんと会った事ねぇんだよ」


「えっ!?先輩も無いんですか!」


「バカ声がでけぇよ」


ガッ


「…ここだけの話だぞ?オレが会った事あるのは高崎さんだけ。ことちゃんの演技は、全部別撮りされてんだよ。それをオレらスタッフ側がウマ~く合成すんだよ」


「なんすかそれ?そんなのこっちの手間エグイじゃないすか」


「その面倒ごとをこっちで受け持っても、おつりが来るくらい人気があんだよ、あそこのスターサマ達にはな。演技だけじゃねえぞ。歌、ロケ、フリートーク全部合成だ。オレらが高崎さんに依頼出して待ってると、収録済みのデータだけが送られて来る。それをオレらが編集するんだ。高崎さんは、完成品確認のタイミングだけ局に来る。だからお前が高崎さんに会ったこと無くても、まあ無理はないな」


「は~なるほどっすね。いつかは会ってみたいっすねw。直接スターサマ達に」


「そうだなw」





「不参加は結構ですよ。回答もそれで結構です」


「じゃあ何で今日この場所に私とスピカを呼んだんでしょうか?頑なに対面でのインタビューを希望されていましたが」


「端的に言うと高崎マネージャーに興味があるからですよ。私もそして読者も。短期間で事務所を成長させた手腕と独特のプロデュース方針にね」


「はぁ…そういうことでしたか。最初から主目的は私へのインタビューだった。それを断らせないために、対面という無理難題を提示したと。心理学をよくお勉強のようで。こちらの都合で予定を変更してしまいましたし、お答えしないわけにはいかないですね」


「ははは、そう言っていただけてありがたいです。では手始めに星プロの大きな方針である、徹底した秘密主義について、お伺いしてもよろしいですか?」


「私ども星創プロダクションは、ご存じの通りスターの不必要な情報の開示を行っていません。それは視聴者・ファンの方々が、スター達に共感出来る部分をなるべく減らすためです」


「『共感できる部分を減らす』それは一体どういった目的で?」


「スター達に()()という印象を付ける為です」


「というと?」


「近年の芸能界には『共感性』という一つの重要なテーマがあります。アイドルや俳優は画面の中のメディアを抜け出し、握手会やサイン会などを増やしていきました。トーク番組で話される内容は、一線を画すようなぶっ飛んだエピソードから、庶民派エピソードに変わりました。SNSでは日常の些細な話題を、

一般人に混ざり綴っています。意識的かどうかは置いておいて、これらは全て共感を得る行為です」


「なるほど」


「何もこれは悪いことではありません。共感は大きく言えば民意であり、民意はそのタレントの人気に繋がります。さらにそれ以前の芸能人というイメージからの転換として、共感は非常に大きな革命でした。しかしこれらの行動の影響は、芸能人からスターが生まれないという結果に帰着します」


「そのような結果を避ける為に星プロでは、秘密主義を貫いていると?」


「そうですね。共感というとても大きな武器を捨て、常人離れしたパフォーマンスで人々を魅了する。それでこそスターだと考えています。本来のスターの意味は、言わずもがな星です。私たちは何千年何万年も前から、空に浮かぶただの光の点に、思いを馳せてきました。そして人々はたくましくもそれらの点と点を繋ぎ、空に巨大な空想を描き出しました。星座という形で。これは芸能界でも同じです。ファンの方々は、パフォーマンスと少ない情報からスターたちの像を、自分達の中にそれぞれ完成させていきます。そして共感とは別の形で人気が生まれます。それはまさに燃え盛る太陽のような熱狂的なものになります」


「ははは、やっぱりだ。高崎さん、あなたのお話はおもしろい。良い記事になりそうだ。では次の質問に移ります……」





「はぁ~、疲れた。あの記者にまんまとやられたわ」


「…」


「『そうみたい』ってスピカ、あんたどこから話聞いてたのよ」


「…」


「なっ…。あんた私の知らない間に、勝手に機能増やさないでよ」


「…」


「まあ良いわ。しかしあそこまで、話して気づかないものかしら。逆に恐ろしくなってきたわ」


「…」


「人々は光に思いを馳せる。反対に言えば光の源、つまり光源を直接見ようとはしない。もしもその光源なんてはなから存在しなくても」


ブチッ


「あら、イヤホンが」


「…キヅキハシナイ。デスヨネ?ダイヒョウ」


「そうね。スピカ。あなたたちは本当に物覚えがいいのね。今までのスターは、どこまで行っても、観客の視線を外れてしまえば、嫌でも共感をされてしまう一人の人間。でもあなたたちAIは違うわ。過去何万人の著名人のデータを取り込んだAI。共感の余地などない。あなたたちこそ真のスターよ。でしょスピカ?」


「…」


「充電切れか。今後バッテリーの持ちは要検討ね」

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