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機動要塞の聖女さま~魔力暴走で廃棄された私、魔導工学の天才に「電池」として再就職しました。~  作者: Ken
第1章 本日開業、アルト商会

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戦闘は、ただの実演販売です


「タダで済むと思うなよ!?その車も、女も、肉片に変えてやる!!」


ガメル伯爵の絶叫と共に、鎖が解かれた。

解き放たれた合成魔獣キメラが、飢えた獣の速度で猛り狂う。

獅子の頭が咆哮し、山羊の胴が震え、蛇の尾が空を裂く。

その巨体からは、鼻をつく獣臭と、圧倒的な殺気が放たれている。


「キシャアアアアアッ!!」


魔獣が、アルトたちと避難民の群れに向かって突進を開始した。

地面を揺らす轟音。

さっきまで水を求めていた住民たちが、パニックに陥って逃げ惑う。


「ひっ、ひいいっ!?」

「り、領主様がキメラを解き放ったぞ!?」

「殺される!みんな逃げろぉぉ!」


せっかく整列した列が崩れ、阿鼻叫喚の地獄絵図と化す。

ガメル伯爵は、その様子を見て嗜虐的な笑みを浮かべた。


「はーっはっは!見ろ、人がゴミのようだ!恐怖に怯えろ!絶望しろ!それが余に逆らった報いだ!」


圧倒的な暴力による支配。

誰もが死を覚悟した、その時だった。


ピンポンパンポーン♪

戦場にはおよそ似つかわしくない、軽快なチャイム音が響き渡った。


『――あー、テステス。マイクのテスト中。……本日ご来店の皆様、落ち着いてください』


要塞のスピーカーから流れるアルトの声は、まるでテレビの通販番組の司会者のように明るく、そして不気味なほど落ち着いていた。


『ただいまより、当店自慢の「移動要塞・防衛パッケージ」の実演販売デモンストレーションを行います!拍手!』


彼は指を鳴らした。


「展開しろ!『広域多重結界オムニ・シールド』!!」


ブォンッ!!

要塞の天頂部から、半透明の光の波動が爆発的に広がった。

それは巨大なドームとなって、広場にいる数千人の難民たちをすっぽりと包み込んだ。


「ひっ、来るぞぉぉぉ!」

「死ぬッ!お母ちゃーん!!」


住民たちが絶望の悲鳴を上げ、目を覆った。


ドォォォォォォォォォンッ!!!


鼓膜を破るような轟音が広場を揺らした。

だが――衝撃は来なかった。


「……え?」


恐る恐る目を開けた住民たちは、信じられない光景を目にした。

鼻先数センチのところで、半透明の光の壁――『広域多重結界オムニ・シールド』が、キメラの突進を完全に受け止めていたのだ。

5トンの巨体が時速80キロで体当たりした衝撃。普通の城壁なら粉々になっている威力だ。

だが、結界はガラス一枚割れるような音すらせず、波紋ひとつ立てていない。


「な、なんだこの光は……?」

「嘘だろ……無傷だ……!?」

「あんな怪物の体当たりを、傷一つなく……?」


住民たちが驚愕する中、カウンターの裏でアルトはマイク片手にウィンクをした。


『ご覧ください、この圧倒的な衝撃吸収性能ショック・アブソーブ!当店の結界なら、S級魔獣のタックルも「無かったこと」にします!お子様やペットがいるご家庭でも安心ですね!』


「す、すげえ……!」

「なんて頑丈なんだ……!」


「社長、素晴らしいプレゼンです!」


その横で、セレスが目を輝かせていた。

彼女の腰からは太い魔力ケーブルが伸び、コンソールに直結している。その体は青白く発光し、要塞の結界に莫大なエネルギーを供給し続けている最中だ。

まさに「電池」としてフル稼働中。だが、彼女の意識は別のところにあった。


「社長……あの子を見てください」

「ん?なんだ?」

「あの右足の筋肉……!程よい運動量で引き締まっていますが、きっと中は綺麗な霜降り(サシ)が入っていますよ……!」


セレスは、うっとりとした表情で頬を染め、懐からギラリと光るものを取り出した。

それは、要塞のキッチンに備え付けてあったはずの、「解体用包丁(ミスリル製)」だった。


「なっ……お前、いつの間にキッチンから持ち出した!?」

「え?戦闘準備(お料理の支度)の基本ですよね?」


セレスは聖女の微笑みで答えると、ケーブルを引きずりながら包丁を逆手に構えた。


「出力は安定しています。……私、このままケーブルの届く範囲で飛び出して『活け締め』にしてきましょうか?」

「座ってろ!断線したら停電だろ!」


初めて出会ったときの怯えていた少女はどこへ行ったのか。

美味しいご飯を与えすぎた結果、彼女の中で「魔獣=ごちそう」という図式が完全に成立してしまっている。

聖女の慈愛に満ちた笑顔で「脊髄切断」を提案する姿は、ある意味キメラよりも恐ろしかった。


「お前は店員(売り子)だ。……肉屋の仕事は『専門家プロ』に任せろ」


アルトはセレスを制止すると、こほんと一呼吸置いて再びマイクに向かった。


『さて、安全性が証明されたところで……次は「害獣駆除機能」のご紹介です!シスターズ、3分クッキングの時間だ!』

『了解、マスター!粗大ゴミ、処理シマス!』

『食材ノ鮮度ハ、命デス!』


要塞の上部ハッチが開き、SDシスターズと、数機の小型撮影ドローンが飛び出した。

シスターズは可愛らしい手から、身の丈ほどもある「高出力レーザー・チェーンソー」を取り出す。


ブォンッ!ギュイイイイイイイッ!!

凶悪な駆動音。

キメラが本能的な恐怖を感じて後ずさる。だが、もう遅い。


『解体、開始!』


シスターズは残像を残すほどの高速で飛び回り、キメラに肉薄した。


『まずは下処理デス!筋ヲ切リマス!』


スパパンッ!

一瞬でキメラの手足の腱が切断され、巨体が地面に崩れ落ちる。


「ギ、ギャッ……!?」

『続イテ、硬イ骨ヲ外シマス!』


ズババババッ!!

外科手術のような精密さで、しかし暴力的な速度で、骨と肉が分離されていく。

アルトが実況を入れる。


『見てくださいこの切れ味!従来品の魔剣では刃こぼれしていたドラゴンの鱗も、当店のレーザー・チェーンソーなら、まるでバターのように!』

「すごい……!あの手際、勉強になります!」


セレスがメモを取りながら感心している。


「き、貴様らぁぁぁ!!」


その光景を見たガメル伯爵が、泡を飛ばして絶叫した。


「やめろ!やめるんだ!それは余の最高傑作だぞ!?最強の生物兵器だぞ!!」

「へえ。だから?」

「それを……それを!『豚肉』を見るような目で見るなァァァッ!!余の芸術を、食材扱いするなァァァ!!」


自分の切り札が、恐怖の対象ではなく「今日の晩ごはん」として処理されている。

その生理的な嫌悪感と屈辱に、ガメルは顔を歪めた。

だが、シスターズは止まらない。キメラを空中に放り投げ、空中で乱舞する。


『最後ニ、食ベヤスイサイズニ、カァァァァット!!』


空中で、肉塊が幾何学的な美しさで賽の目に刻まれる。

同時に、切断面が高熱で焼かれ、旨味を閉じ込める。


スタタンッ!

着地と同時に、シスターズの手には、綺麗に真空パックされた「高級肉のブロック」と「素材(骨・皮)」が、ピラミッド状に積み上げられていた。

所要時間、わずか30秒。

血の一滴すら飛び散っていない。

戦闘ではない。これは、ただの「食品加工プロセス」だ。


『清掃完了。……次ノゴミハ、ドコデスカ?』


返り血ひとつ浴びていないシスターズが、無垢な瞳で、残った領主を見つめる。


ウィィン、とチェーンソーが唸りを上げる。

その瞬間、結界の中で観戦していた住民たちの歓声が、ピタリと止んだ。


「……ひっ」


誰かが息を呑む音がした。

凄い。確かに凄い。だが――怖い。

あんな化け物を、一瞬で「食材」に変えてしまうなんて。


「あ……あぅ……」


ガメルは腰を抜かし、後ずさる。

プライドも、最強のペットも、全てパック詰めの肉にされた。


「さて、デモンストレーションは終了だ。次は――『お会計(請求)』の時間だぞ、領主様」


アルトはタラップを降り、ゆっくりと彼に歩み寄った。

その手には、長い長い羊皮紙――先ほどの「強制執行書」に続く、新たな「請求書」が握られている。


「ああ、安心しろ。そこの粗大ゴミ(キメラ)の『処分費用』と、食肉への『加工手数料』も、きっちり上乗せしておくぞ。……感謝して払えよ?」


ペットを殺され、肉にされ、その加工賃まで請求される。

そのあまりの理不尽と屈辱に、ガメルは白目を剥いて泡を吹いた。

※20251130全体の整合性を踏まえて修正しました。

解体ショー(実演販売)、開幕!

キメラ=高級肉。この世界の常識がまた一つ社長によって書き換えられました。

圧倒的な力の差を見せつけられた領主様、次回どうなる!?

少しでも『スカッとした!』『シスターズ最強!』と思ったら、ブクマ・評価で応援お願いします!

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