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機動要塞の聖女さま~魔力暴走で廃棄された私、魔導工学の天才に「電池」として再就職しました。~  作者: 朔夜
第3章 空中都市と空飛ぶ請求書

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星(ガイア)は、優良物件になりました


ドクンッ!!!!


地下遺跡の最深部で、アルトとセレスが押し込んだレバーが、星の運命を決定づけた。

二人の寿命を燃料にした、最後の一撃。

それが起爆剤となり、停止していた星の循環機能が、爆発的に再始動する。


シュゥゥゥゥ……!


遺跡のパイプから、黒い煙ではなく、清浄な青い光が溢れ出した。

それは地脈ライフストリームに乗って、地上の隅々へと拡散していく。


・ ・ ・


地上。アーク・ロイヤル。

空を見上げていた元・市長や市民たちが、信じられないものを見たように目を見開く。


「おい……見ろ!霧が……!」


数百年もの間、人類の頭上を覆っていた絶望の「黒い霧」が、急速に晴れていく。

雲が割れ、そこから差し込んだのは、突き抜けるような「蒼穹」と、眩しい「太陽」の光。


「あ、明るい……!これが、お天道様か……!」


さらに、奇跡は足元でも起きていた。

ひび割れた荒野から、ポコポコと緑の芽が吹き出し、見る見るうちに大樹へと成長していく。

アルトたちが投入した莫大な「資金エネルギー」が、枯れ果てた大地を強制的に潤し、緑の海へと変えていく。

死に体だった惑星が、呼吸を始めたのだ。


・ ・ ・


「……ふぅ。工事完了だな」


地下遺跡で、アルトは額の汗を拭った。

目の前のコンソールには、全てのパラメータが「オールグリーン(正常)」を示している。


『……信じられません。星の寿命パラメータが、全盛期の水準まで回復しました』


ガイアのアバターが、呆然とアルトを見つめる。


『貴方は、何者ですか?救世主の定義コードには該当しませんが……』

「ただの社長だ。……それより、忘れてねえだろうな?」


アルトは、空になった財布カードをポケットにしまい、コンソールを叩いた。


「『対価』だ。……これだけの投資をしたんだ。リターンをよこせ」

『……承知しました。契約に基づき、本システムの「管理者権限」を譲渡します』


ピロン♪


軽快な電子音と共に、システムログが書き換わる。


【SystemOwner : AltoCorp.(CEO:Alto)】

【AssetValue : PlanetEarth(Priceless)】


「……よし。商談成立ディールだ」


アルトはニヤリと笑った。

この瞬間、地球という惑星そのものが、名実ともに「アルト商会」の所有物(自社ビル)となったのだ。


「……バカな。計算外だ」


その光景を見ていたメサイア(元教皇)が、震える声で呟いた。

彼は数千年の間、この星の死を確定事項として受け入れ、諦めていた。だからこそ、地上を捨てて空へ逃げたのだ。


「物理法則も、運命プログラムも……金と暴力でねじ伏せて、本当に書き換えてしまうとは……」


メサイアは、アルトの背中を見つめ、どこか晴れやかな顔で笑った。


「……完敗だよ、新オーナー。君は最高の『バグ』だ」


かつての神が、一人の商人に敬意を表した瞬間だった。


「社長……!」


へたり込んでいたセレスが、涙目でアルトに抱きつく。

髪の一部が白くなった彼女は、けれど今までで一番美しく笑っていた。


「生きてます……!私、生きてますよ……!」

「当たり前だ。死なせるために金を使ったんじゃねえ」


アルトは、彼女の頭を乱暴に撫でた。

その髪は、自分の髪と同じ、美しい純白ロマンスグレーに染まっている。


「喜べセレス。今日からこの星は、俺たちの『庭』だ。……管理業務、忙しくなるぞ?」

「はいっ!……喜んで、お供します!」


セレスが満面の笑みを咲かせる。

それは、どんな宝石よりも輝く、最高の笑顔だった。


「さて、と」


アルトは地上へのエレベーターに向かいながら、懐の通信機を取り出した。


「仕上げだ。……おい、ラビ、セレーネ。聞こえるか?」

『ん。準備できてる』

『いつでもいいぞ!……まったく、貴様はどこまで悪趣味なんだ』


地上に出たアルトたちは、見違えるように美しくなった世界を目にする。

緑の大地。青い海。澄み渡る空。

市民たちが感動の涙を流し、アルトたちに向かって感謝の祈りを捧げようとしている。


「おお、救世主様……!」

「神よ、感謝します……!」

「……ケッ。湿っぽいのは柄じゃねえな」


アルトは空を見上げ、指を鳴らした。


「感動のフィナーレなんて見せてたまるかよ。……俺たちは『商売人』だろ?」


ドォォン!!


上空の要塞から、特殊なスモーク弾が発射された。

それは青空に広がり、巨大な「文字」を描き出す。

世界中の人間が見上げる空に、白雲で描かれたのは――


【請求書:¥9,999,999,999,999,999...】

【支払期限:人類が滅びるまで(※分割可、リボ払い不可)】


「……は?」


祈っていた市民たちが、ポカンと口を開ける。

感動の涙が引っ込み、現実に引き戻される。


「おい地球人!タダで直してもらえると思ったか!?」


アルトが、要塞の拡声器を使って全世界に怒鳴り散らす。


「こっちは全財産スッたんだ!ガメルなんて過労死寸前だぞ!……今日からお前らは全員、ウチの『テナント(店子)』だ!家賃分くらい、死ぬ気で働いて返せよォォォッ!!」


呆然とする人々。

そして、爆笑するセレーネとラビ。

頭を抱えるガメル。

そして、呆れながらも幸せそうに微笑むセレス。

全員が声を揃えて、最高の笑顔で叫んだ。


「「「台無しだよ!!!!」」」


救世主オーナーからの、容赦ない請求。

それが、新しい時代の幕開けだった。


・ ・ ・


――数ヶ月後。


再生した地球は、かつてない活気に満ちていた。

アルト商会の管理下で、古代技術と月面技術が開放され、文明レベルは数百年分も跳ね上がった。

人々は「家賃(税金)」を払うために必死で働き、その結果、世界経済は爆発的な成長を遂げていた。

借金という名の「生きる目的」が、人々を走らせているのだ。


だが。

平和になった執務室で、アルトは退屈そうに窓の外を眺めていた。


「……暇だ」

「贅沢な悩みですね、社長。世界征服した直後なのに」


副社長になったセレスが、大量の決裁書類を運び込んでくる。

彼女の白い髪は、丁寧に編み込まれ、以前よりも大人びた美しさを放っていた。


「管理業務なんて性に合わねえんだよ。……俺は『開拓』がしたいんだ」


アルトは椅子を回転させ、天井を指差した。

そこには、モニターに映し出された「銀河図」がある。

そして、一件の通信が入っていた。


【S.O.S.from Andromeda Sector】

【報酬:未発見の超レアメタル鉱脈】


「……へっ。また『いいカモ』が釣れたみたいだな」


彼の目は、まだ死んでいなかった。

むしろ、より大きな獲物を見つけ、ギラギラと輝いている。


地球ここの市場は制圧した。……次は『銀河』だ」

「行くぞセレス。……要塞を『恒星間航行モード』に改装だ」


アルトが立ち上がる。

セレスは苦笑し、けれど嬉しそうに頷いた。


「もう、しょうがないですね」


彼女は、アルトの白髪交じりの頭を、背伸びして優しく撫でた。


「どこまでもお供します、社長。……宇宙の果てまで、商売に行きましょう!」


機動要塞アルト・アガルタ。

その巨体が、再び重力を振り切り、星の海へと浮上していく。

目指すは、未だ見ぬ異星の市場。

強欲な商人と、最強の聖女の旅は、まだ始まったばかりだ。

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