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機動要塞の聖女さま~魔力暴走で廃棄された私、魔導工学の天才に「電池」として再就職しました。~  作者: 朔夜
第2章 深海、時々ブラック企業

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寿司は、最高の配当です


戦いが終わり、制圧されたネフィリム号の艦内は、奇妙な熱気に包まれていた。

場所は艦内の大食堂。

そこには、アルト、セレス、そして実体化したSDシスターズたちが車座になり、テーブルに並べられた「宝石」を囲んでいた。


「……美しい」


アルトが震える手で箸を伸ばす。

皿の上に鎮座しているのは、透き通るような白身、脂の乗った赤身、そして輝くいくら。

ネフィリム号の『時間停止タイム・スタシス冷凍』倉庫に眠っていた、鮮度が永遠に固定された極上の在庫インベントリ


「さあ、食うぞセレス。これが今回の『配当リターン』だ」

「は、はいっ!いただきます!」


セレスがマグロを口に運ぶ。

瞬間、彼女の目が大きく見開かれた。


「んんっ……!おいしい!口の中で溶けました!」

「だろう?これが『寿司』だ。……クソッ、生きててよかった」


アルトもまた、涙を流しながら白身を噛み締めていた。

醤油の香りと、酢飯の酸味。そして魚の脂。

廃棄場での泥水生活から始まり、ここまで走り続けてきた苦労が、この一口で報われる。


『社長サン、コッチノ「大トロ」モ解析完了シマシタ!旨味成分、基準値ヲ大幅ニ超過!』

『お醤油、追加入りまーす!』


義眼サーバーからリンクした姉妹たちも、電脳リゾート内で「データ化された寿司」を堪能しているらしい。

騒がしくも温かい、勝利の宴。

だが、皿が空になるにつれ、アルトの表情は険しくなっていった。

彼は最後の一個――ウニの軍艦巻きを口に放り込むと、熱いお茶を啜り、静かに告げた。


「……味わっておけよ。これが、この星で食える『最後の飯』になるかもしれん」

「えっ……?」


セレスの手が止まる。

アルトは懐から端末を取り出し、空中にホログラムを展開した。

そこに映し出されたのは、「天空を覆う分厚い障壁」の解析図だった。


「この星はもう死に体(倒産寸前)だ。……だから、脱出する。このネフィリムを使ってな」


アルトは、自分たちが今乗っている巨大船の構造図を表示させた。


「こいつは元々、宇宙船のパーツだ。装甲は分厚いし、推力も馬鹿でかい。……だが、今の出力じゃ『天空の障壁バリア』を越えて宇宙に出るには足りない」


天空都市アガルタ。

そこへ至る道は、強力な「対物理・対魔法障壁」によって閉ざされている。


「普通に行けば、障壁にぶつかって蒸発だ。……だから、『全部』使う」


アルトは、恐ろしい計画を口にした。


要塞ウチの炉心と、ネフィリムの動力炉を直結させる。そして、ネフィリムの全質量を『弾丸』にして、障壁の一点に突っ込ませる」

「えっ!?そ、そんなことをしたら、この船は……」

「壊れるな。……いや、『燃え尽きる』」


アルトは平然と言い放った。

せっかく手に入れた、全長300メートルの超巨大戦艦。

それを、たった一度の「壁破り」のためだけに使い潰すと言うのだ。


「もったいないと思うか?だがなセレス、沈む泥船にいくら資産を積み込んでも意味がねえんだよ」


彼は立ち上がり、艦橋の方角を指差した。


「『損切り(カットロス)』だ。……未来(の市場)に行くためのチケット代だと思えば、安いもんだろ?」


その目には、狂気と理性が同居していた。

全財産を賭けた、一世一代の大博打。


「準備しろ!ネフィリム号、発進!……目標、天空都市アガルタ防衛圏!」

「は、はいっ!お供します、どこまでも!」


・ ・ ・


数時間後。

海を割り、巨艦ネフィリムが空へと舞い上がった。

背後には、真っ白な水蒸気の尾が引いている。

MHDと重力制御、そして魔導エンジンの全開運転。船体は悲鳴を上げ、装甲が赤熱し始めていた。


『高度20000!障壁まであと30秒!』

『シールド出力、限界突破!船体が持ちません!』


姉妹たちの悲鳴じみた報告が響く。

目の前には、空を覆う紫色の絶壁――「天空障壁」が迫っていた。


「ビビるな!……こっちには『合鍵』がある!」


アルトは、ネフィリム号のシールド発生装置を操作した。

解析したデータに基づき、天空障壁の波長に対し、完全な「逆位相」の波形を設定する。


「シールド極性、反転!……ぶち破れェッ!!」


ズガァァァァァァァン!!!!

ネフィリム号の先端が、障壁に激突した。

物理的な衝撃ではない。波長と波長が相殺し合い、閃光と共に障壁に「風穴」が開く。

だが、その反動でネフィリム号の外殻もボロボロに砕け散っていく。

同時に、コクピットのコンソールに、真っ赤な警告表示アラートが表示された。


【警告:燃料消費率4000%超過】

【推定コスト:10,000,000G/sec】

それを見た瞬間、アルトの顔色が変わった。


「い、行けぇぇぇッ!!……ああっ!待て!待て待て待て!!」


BGMが最高潮に盛り上がる中、アルトが頭を抱えて絶叫した。


「燃費が悪すぎるッ!なんだこの数字は!?」

「しゃ、社長!?どうしました!?」

「見ろこのカウンター!1秒ごとに俺の金貨が蒸発していくぅぅぅ!」


アルトが指差した画面では、燃料コストを示す数字が、スロットマシンのように回転していた。

ネフィリム号という巨体を、無理やり大気圏外へ押し上げるためのエネルギー。

そのコストは、文字通り天文学的だった。


「ひぃぃぃ!やめろ!止まれ!いや止まるな!でも財布が死ぬゥゥ!」

『報告シマス!現在ノ消費レートハ、毎秒「城一軒分」デス!』


シスター・ワンが、追い打ちをかけるように無慈悲なアナウンスを入れる。


「城一軒だとォ!?ふざけんな!エコドライブしろエコドライブ!」

『無理デス!出力ヲ落とせば墜落シマス!』

「くそォォォッ!!俺の金が!俺の資産がァァァ!!」


感動的な旅立ちのシーン。

セレスは「未来への希望」を見上げて涙ぐんでいるが、その横でアルトは「通帳残高」を見つめて血の涙を流していた。


突破ペネトレートッ!!金食い虫め、とっととくたばれぇぇ!!」


アルトが泣きながら赤いボタンを叩き込んだ。


ボシュッ!

役目を終えたネフィリムの外殻が爆裂ボルトによって切り離される。

重荷を捨てた要塞コアだけが、軽くなって宇宙空間へと飛び出した。


「はぁ、はぁ……。た、助かった……(財布が)」


アルトがコンソールに崩れ落ちる。

だが、その安堵を切り裂くように、艦内にけたたましいファンファーレが鳴り響いた。


パパラパッパパーン♪


『オメデトウゴザイマス、マスター!!』


シスター・ワンが、クラッカーを鳴らすホログラムと共に現れた。

満面の笑み(アイコン)だ。


『ただ今のパージにより、本日の損害総額が確定シマシタ!』

「……あ?」

『ネフィリム号の推定価値、および消費燃料費、締めて……5000億ゴールド!!』


画面にデカデカと『-500,000,000,000G』という赤字が表示される。


過去最高記録ハイスコア更新デス!すごいデス!一瞬で国家予算が消えマシタ!』

「うるせぇぇぇッ!!祝うな!傷口に塩を塗るんじゃねえ!!」


アルトがたうち回る。

偉業を達成した英雄の姿ではない。パチンコで全財産をスッた敗北者の姿だ。


「とどめだ!……食らえ、『質量爆弾』!!」


アルトはヤケクソ気味に入力した座標データに従い、燃え尽きる寸前のネフィリム号を、天空都市の「対空防衛砲台」に向けて誘導した。

どうせ捨てるなら、最後まで使い倒してやるという怨念が籠もっていた。


ドオオオオオオオオンッ!!!!

遥か上空で、太陽ごときの爆発が起きた。

敵の防衛システムが消し飛び、警報が鳴り響く混乱の中、小さな要塞だけが黒煙を纏って都市のスラム街へと落下していく。


「くっ、衝撃が来るぞ!……重力ブレーキ、最大!」

「きゃあああああっ!」


激突寸前。

アルトは炉心の残存エネルギーを全て「逆噴射」に回した。

凄まじいGが二人を襲う。だが、それでも勢いは殺しきれない。


「……クソッ、ここまでか!」


船は失った。金も尽きた。装備も大破した。


ズドオオオオオオオオオンッ……!

土煙を上げて、要塞がスラムのゴミ山に不時着する。

意識が暗転する直前、アルトは確信していた。


「(……次は、もっと燃費のいい乗り物を見つけてやる……!)」


商売は、ここからが本番だ。

※20251130全体の整合性を踏まえて修正しました。

第2章、これにて完結です!

次章、舞台はいよいよ「空」へ。

天空都市アガルタ、そして神殿の頂点に立つ「教皇」との直接対決。

アルト商会の技術は、神の奇跡(という名の独占技術)を超えられるのか!?


「面白かった!」「第3章も楽しみ!」「アニメ化希望!」と思っていただけたら、

ぜひ【☆☆☆☆☆】評価とブックマークをお願いします!

皆様の応援が、アルト・ワークスの燃料になります!

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