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機動要塞の聖女さま~魔力暴走で廃棄された私、魔導工学の天才に「電池」として再就職しました。~  作者: Ken
第1章 本日開業、アルト商会

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神獣は、無料の廃棄物です


ガギィィィンッ!!

皇宮前広場に、重金属が軋む音が響き渡った。

神殿の掃除屋・ベリアルが放った触手を、アルトは左腕一本で受け止めていた。

ガントレットの排熱口から、シュゥーッ……と白煙が吐き出される。


「……硬いですね。ただの行商人にしては」

商売道具カラダは資本だからな。メンテナンスは欠かさない主義だ」


アルトは不敵に笑い、腕を振り払った。

同時に、背後の移動要塞が咆哮を上げる。


ヴゥォォォォォン!!

10メートルの巨体が、まるで生き物のように躍り上がり、アルトと皇帝を庇うように割り込んだ。

側面ハッチが展開し、無数の砲門がベリアルに狙いを定める。


「ふん……。ガラクタを積み上げただけの鉄屑で、神の代行者に勝てると?」


ベリアルは嘲笑い、天を仰いだ。


「交渉決裂ですね。ならば、見せてあげましょう。真の『兵器』というものを」


彼が背中の触手を地面に突き刺した、その瞬間。

広場の石畳が爆発的に隆起した。


ズズズズズ……ドォォォォン!!

地底から這い出してきたのは、悪夢のような巨影。

全長30メートル。腐肉と機械が融合した、多脚の怪物。

背中には無数の排気管が突き出し、そこから猛毒の魔素(瘴気)を噴き上げている。


「神殿の最終兵器、戦略級汚染獣『ヘカトンケイル』。……さあ、蹂躙の時間です」


怪物が咆哮すると、周囲の空気が瞬時に淀み、近衛兵たちが次々と倒れ伏した。

瘴気による即死攻撃。生物兵器としての「格」が違う。


「ひっ、ひいいっ!?」

「ば、化け物だ……!逃げろぉぉ!」


パニックになる帝国兵たち。

だが、アルトは眉一つ動かさず、懐からマイクを取り出した。


『――あー、テステス。……皇帝陛下、およびご観覧の皆様』


戦場に似つかわしくない、クリアな声がスピーカーから響く。


『ただいまより、弊社製品の「対・戦略級汚染・耐久テスト」を行います。……どうぞ、瞬きせずにご覧ください』


アルトが指を鳴らす。

瞬間、移動要塞を中心にして、半透明の光のドーム――「多重環境維持結界エア・カーテン」が展開された。


ジュウウウウウッ!!

ヘカトンケイルが撒き散らす猛毒の瘴気が、結界に触れた瞬間に浄化され、白い蒸気となって消えていく。

結界の内側、アルトと皇帝がいる空間だけは、無菌室のように清浄な空気が保たれていた。


「なっ……!?瘴気が、効かない……!?」


ベリアルの顔が引きつる。

アルトは皇帝に向き直り、まるで新車のセールスマンのように語りかけた。


「ご覧ください陛下。これが弊社の『環境制御技術』です。神殿の祈り(オカルト)とは違い、物理的なフィルターと魔術的分解の二重構造で、有害物質を99.99%カットします」

「お、おお……!苦しくない……!」


皇帝が驚愕の声を上げる。

目の前で怪物が暴れているのに、咳一つ出ない。圧倒的な「安全」がそこにあった。


「小賢しい……!潰せ!」


ベリアルの号令で、ヘカトンケイルが巨大な脚を振り上げる。

数千トンの質量によるプレス攻撃。直撃すれば戦車すらペシャンコだ。


ドゴォォォォォン!!

世界が揺れた。

凄まじい衝撃音と共に、広場の石畳が波打ち、粉々に砕け散る。

土煙が舞い上がり、視界を遮る。


「ひぃぃっ!?」


皇帝が悲鳴を上げ、目を覆う。

だが。


『……衝撃拡散アンカー、接続よし。サスペンション耐久値、減少なし』


煙の中から聞こえたのは、セレスの冷静なアナウンスだった。

土煙が晴れる。

そこには、無傷の移動要塞が鎮座していた。

ただし、要塞の足元の地面はクレーターのように陥没し、無惨にひび割れている。装甲表面に展開された「偏向シールド」が、直撃のエネルギーを全て地面へと逃がしたのだ。


「馬鹿な……!直撃だぞ!?」

「受け止めるから壊れるんだ。……力は『流す』のが基本だろ?」


アルトは鼻で笑い、電卓を弾いた。


「どうだベリアル。お前の『神の奇跡』とやらは、随分とスペックが低いな?カタログスペック詐欺か?」

「き、貴様ぁぁぁ……ッ!!殺せ!休まず叩き潰せ!!」


ベリアルが激昂し、さらなる攻撃を指示する。

ヘカトンケイルが狂ったように前足を振り下ろし、結界を連打する。


ドガッ!バギィッ!ズドォォン!!

雨あられと降り注ぐ数千トンの暴力。

だが、アルトはその轟音をBGM代わりに聞き流し、平然と皇帝への説明を続けた。


「――ええ、少々騒がしいですがご安心を。この程度の質量攻撃なら、あと72時間は耐えられます。防音性も完璧ですので、安眠をお約束しますよ」

「お、おお……(この男、頭がおかしい……!)」


目の前で怪物が暴れまわっているのに、営業トークを続ける男。

その異常性に、皇帝は畏怖を覚えた。


「さて。性能証明デモは十分だ。……そろそろ『在庫処分』といくか」


アルトはコックピットへ飛び乗り、セレスに指示を飛ばす。


「セレス、主砲メイン・カノン接続!あのデカブツを『資源』に変えるぞ!」

「はいっ!……でも社長、主砲を撃ったらエネルギーコストが……!」


セレスが懸念を示す。

主砲「漂白ブリーチ」は強力だが、一発撃てば膨大な魔力を消費し、回路の摩耗も激しい。

報酬5億ゴールドを受け取っても、経費を引けば利益は目減りする。それでは、あの「5億のドレス」が買えない。


「チッ、そうだったな……。割に合わん」


アルトは舌打ちし、モニターに映るヘカトンケイルを睨みつけた。


その時。

コンソールから、鋭い警告音が鳴り響いた。


『ピピピッ!高エネルギー反応、検知』

「……あん?」


アルトがサブモニターに目を走らせる。

マルチスペクトル・センサーが、怪物の体内深くに眠る「異質な熱源」を捉えていた。

通常の魔導炉ではない。極めて純度が高く、減衰しない完全な波形。

彼は素早くキーボードを叩き、魔王城ガルガンチュアからまるごとコピーしてきた『禁忌技術ロストテクノロジーアーカイブ』と照合した。

検索結果、一件。一致率99.9%。

【第3世代・永久機関ロスト・ジェネレーター

神話の時代に失われた、無限の動力を生み出す夢のエンジン。

市場価格、測定不能プライスレス

5億どころか、国一つ買える価値がある「伝説のパーツ」だ。


「ハッ……!そうかよ、灯台下暗しとはこのことか!」


アルトの顔から、「コストへの懸念」が消え失せた。

代わりに浮かんだのは、獲物を見つけた捕食者の、ギラついた欲望。


「セレス!作戦変更だ!」

「えっ!?」

「あの怪物は『ゴミ』じゃない!『宝箱』だ!!」


アルトは操縦桿を握りしめ、狂喜の声を上げた。


「主砲の出力を『パルス化』し、さらに焦点距離フォーカスを表面装甲の厚さ『3.5メートル』に固定しろ!殲滅光を『レーザーメス』に変えて、炉心周囲の肉ごと『ブロック状』にえぐり取る(トリミング)んだ!」

「えっ!?綺麗に剥かなくていいんですか?」

「暴れる化け物相手にそんな危険リスクが冒せるか!商品(炉心)の確保が最優先だ!精製は家に帰ってから安全なガレージでやる!」


現場で完璧を目指さない。まずは安全マージンを取って確保する。

それが、失敗の許されないプロの仕事だ。


「……分かりました!社長の望みなら、細胞一つ残さず焼き分けます!」


セレスが呼応し、自身の魔力を要塞へと直結させる。

要塞の砲門が輝きを増すが、その光はいつもの暴力的な奔流ではなく、研ぎ澄まされた刃のように収束していく。


「レーザー測距、全開!リアルタイム表面追従サーフェス・トレース接続リンク!……焼きます!私のドレスのためにぃぃぃッ!!」


セレスが絶叫し、トリガーを叩き込む。

要塞の砲門が輝きを増し、収束していく。

それを見たベリアルが、狂ったように叫んだ。


「おのれ……!貴様に渡すくらいなら、誰にもやらん!!」


彼は左半身の機械部品を激しく明滅させ、脳内通信リンクを強制接続した。


炉心暴走メルトダウン、強制起動コマンド送信!帝国ごと汚染されて死ねぇッ!!」


自爆。

炉心を暴走させれば、帝都は半径100キロにわたって死の土地となる。

ベリアルは勝利を捨て、道連れを選んだのだ。


だが。


『――Error.AccessDenied.(警告。アクセス権限ガアリマセン)』


無機質なエラー音声だけが、ベリアルの脳内に虚しく響いた。

暴走の予兆はおろか、怪物は指一本動かそうとしない。


「な……!?私の身体システムが……拒絶、だと……!?」

「無駄だ。その怪物システムの制御権(管理者パス)は、さっきのプレゼン中にとっくに奪った」


アルトは冷ややかに告げた。

彼はプレゼンをしながら、裏で電子戦ドローンを飛ばし、ヘカトンケイルの制御系をハッキングし続けていたのだ。


「ハッキング……!?バカな、物理的な接続コネクトなしでどうやって……!」

「お前が撒き散らした『瘴気』だよ。あれはただの毒じゃない。本体と通信するための『伝送路ケーブル』だろう?」


アルトは結界の表面を指差した。


「ウチの結界エア・カーテンの浄化波形を、奴の通信パケットと『逆位相』に同調シンクロさせて、信号を傍受・改ざんしたんだよ。……毒を撒き散らしたのが運の尽きだ」


防御と攻撃の一体化。

敵の攻撃そのものを、侵入経路として利用する。それは技術屋ならではの、悪意ある発想の転換だった。


「チェックメイトだ、掃除屋さん。……お前には『自爆する権利』すら残ってない」

「き、貴様ぁぁぁぁッ!!」


ベリアルが絶望の叫びを上げようとする。

だが、アルトはそれすら許さなかった。


「シスターズ、あいつの口を塞げ(物理)。音声認証ボイスコマンドで無理やり起動されたら面倒だ」

『了解。即硬化性・工業用セメント(ハイ・コンクリート)、注入シマス』


待機していたSDシスターズが飛びかかり、ベリアルの口にノズルを突っ込むと、ドロリとした灰色の液体を流し込んだ。

それは一瞬で石のように凝固し、ベリアルの顎を、岩塊のように固定した。


「――ッ!?――ッ!!!!」


声にならない呻き。顎が開かない。物理的に何も言えない。

完全なる封殺。

アルトはモニターを操作し、皇帝とベリアルの両方に見えるように、巨大なホログラムウィンドウを突きつけた。

そこに表示されたのは、ヘカトンケイルの「査定結果」。

だが、その内容は狡猾な二重の詐術だった。


【査定対象:戦略級汚染獣ヘカトンケイル】

【推定廃棄コスト:国家破綻級(測定不能)】

【弊社引取価格:0ゴールド(特別奉仕)】


皇帝は「あんな危険物をタダで捨ててくれるのか!」と安堵し、ベリアルは「神の兵器を『コスト』扱いされた」と発狂する。

誰も「中身が宝の山だ」とは気づかない。完璧な情報操作。


「皇帝陛下!『あんなもの』はいらんだろう?俺が持ち出して処分してやる!文句はないな!?」


皇帝は涙目で頷き、叫び返した。


「か、構わん!あんな呪われた怪物、くれてやる!一刻も早く消してくれぇぇッ!」


言質は取った。

これで法的にも、所有権はアルト商会へ移転した。


「セレス、やれ!商品ブツを落とすなよ!」

「はいっ!」

「それと、サイボーグ野郎に盗みの瞬間を見られるな!……『全帯域妨害フルスペクトル・ジャミング』をばら撒け!」


アルトがボタンを叩き込む。

要塞から、高密度の魔力チャフが爆発的に散布された。


カッ――!!!!

主砲が放たれた瞬間、世界の色を塗りつぶすような「絶対的な閃光」が、広場にいた全ての者の視界を奪った。

ベリアルの高性能義眼も例外ではない。


『――警告!センサー飽和!視覚情報、ロスト!』

「ぐあっ……!?目が、見えん……!?」


ベリアルが呻く。

マルチスペクトル・センサーが白一色に染まり、熱源も魔力反応も完全に遮断される。

その白濁した視界の裏側で、要塞から伸びた重力アームが、音もなく「商品(炉心)」だけを掠め取っていたことを、誰も知る由はなかった。


「証拠隠滅だ!……残りのガワは分子崩壊させろ!」


シュンッ。

閃光が晴れた時、そこには何も残っていなかった。

神殿の最強兵器は、光の中に消え失せた。

それは、神殿の権威を粉砕し、完全犯罪を成し遂げるための、完璧な「目くらまし」だった。

※20251130全体の整合性を踏まえて修正しました。

神殿の最終兵器vsアルト商会の技術力。

瘴気をハッキングし、自爆を封じ、口にはコンクリート。

さらに皇帝から「所有権放棄」の言質を取り、法的リスクもクリア。

最後に「閃光」で盗みの瞬間を隠す、完璧な完全犯罪。

徹底的なリスク管理と強欲さ(性格の悪さ)で敵を完封してからの「解体ショー」です。


次回、いよいよ決着!

少しでも「続きが気になる!」「ざまぁ期待!」と思っていただけたら、

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