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機動要塞の聖女さま~魔力暴走で廃棄された私、魔導工学の天才に「電池」として再就職しました。~  作者: Ken
第1章 本日開業、アルト商会

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神殿は、悪徳な競合他社です


悪徳領主ガメルの「敵対的買収」から数日後。

大陸の中央に位置する聖都「セント・アーク」。

その中心に聳え立つ、世界最大宗教「聖光教」の総本山――中央大神殿。

その最奥にある円卓会議室は、ステンドグラスから差し込む厳かな光とは裏腹に、凍りつくような沈黙と、怒号に包まれていた。


「……報告します。バルガン支部の今期の売上ですが……『ゼロ』です」


末席の神官が、震える手で決算報告書を読み上げた。


「聖水の売上、寄付金、お守りの販売益……すべてが前月比マイナス100%。完全なる『市場喪失ロスト』です」


ダンッ!!

激しい音が響き、円卓の議長席に座る老人が、高級なマホガニーの机を叩きつけた。

教皇代理を務める最高枢機卿、ベルンハルトだ。


「バカな!たかが辺境の一都市だぞ!?なぜ市場が蒸発する!」

「げ、原因は……新興勢力『アルト商会』による、ネガティブ・キャンペーンとダンピングです」


神官が、ホログラム映像を展開する。

そこには、アルトが行った「聖水分解ショー」の録画映像(隠し撮りされたもの)が映し出されていた。


『――これはただの「未処理の排水」に、強力な「認識阻害魔法」をかけただけの毒物です』


映像の中のセレスが、冷徹に告発している。

その横で、アルトがヘドロをぶちまけ、民衆が神殿の旗を燃やしている。


「こ、これは……!」

「この映像が、魔導通信網を通じて拡散されています。……現在、周辺都市でも『聖水返品運動』や『寄付金返還訴訟』の動きが……」

「ええい、止めろ!今すぐその不愉快な映像を消せ!」


ベルンハルトが絶叫する。

神殿の権威は、「聖女の祈りだけが水を清められる」という独占技術、すなわち「奇跡」というブランドの上に成り立っている。

それが「ただの下水」だと科学的に暴露されたのだ。

これは単なる営業妨害ではない。神殿のビジネスモデルそのものを崩壊させる、国家転覆級の「テロル」だ。


「……アルト商会、か」

円卓の一角に座る、細目の男が呟いた。

神殿の「対外戦略局(マーケティング部)」を統括する枢機卿だ。


「調べましたよ。代表はアルト。経歴不明の技術屋。……そして、彼が使役している『動力源』は、先日我々が廃棄処分にした『機体番号402(セレス)』です」

「なんだと!?あの『不良在庫』か!」


ベルンハルトが目を見開く。


「魔力暴走で使い物にならなくなったゴミを、拾って修理したというのか?」

「ええ。どうやら我々の検品ミスだったようです。……彼女は今、全盛期以上の出力を発揮し、敵の広告塔として機能しています」


会議室の空気が変わる。

怒りから、冷徹な計算へ。

彼らにとってセレスは「救うべき人間」ではない。「自社の特許技術(聖女システム)」を不正使用している「流出資産」だ。


「許されん。これは明確な『特許侵害』であり、『シェアの強奪』だ」


ベルンハルトは、指を組んで冷酷に宣言した。


「放置すれば、神殿ウチの株価……いや、信仰値は大暴落だ。即刻、排除せよ」

正規軍クルセイダーを派遣しますか?」

「いや、手ぬるい。相手は『法』と『技術』で喧嘩を売ってきた曲者だ。正面から叩けば、またどんな搦め手を使ってくるか分からん」


老人は、懐から一枚の黒いカードを取り出し、テーブルに滑らせた。


「『掃除屋』を使え。……これは『敵対的買収(M&A)』だ」


・ ・ ・


聖都の地下深く。

表向きは「古代遺物保管庫」とされているが、実際には神殿の「汚れ仕事」を処理する非合法部門。

その最奥にある「第13拘束独房」。

重厚な鉄扉が開くと、そこには異様な光景があった。

部屋の中央、拘束椅子に縛り付けられた一人の男。

全身を包帯と拘束ベルトで巻かれているが、その隙間からは、生身の肌ではなく「無機質な機械部品」が覗いている。


「……おや?面会ですか?」


男――ベリアルが、顔を上げた。

その左目は、赤く発光する高性能な「義眼」。

背中からは、神経接続された数本の「機械触手アーム」が生え、自律的に蠢いている。

神殿が極秘裏に開発した、対人制圧用生体兵器サイボーグ

信仰を持たず、命令と報酬のみで動く、神の庭の除草剤。


「仕事だ、ベリアル」


訪れた神官が、アルトとセレスの写真、そして移動要塞のデータを投げ渡した。


「ターゲットはこの二人。罪状は『教義の冒涜』および『市場の撹乱』」

「ほう……」


ベリアルは、触手を使って器用に写真を拾い上げた。

義眼がデータをスキャンし、高速で解析する。


「移動要塞……?面白い。この漆黒の装甲……光を一切反射しない表面処理……」


彼は写真を凝視し、口元を歪めた。


「間違いありません。これは魔王城に使われていた『高純度黒曜石』だ。……こんな化石じみた素材を、最新鋭の駆動系と組み合わせるとは。作ったのは、同業者エンジニアですね?」


彼は写真の中のアルトを見て、興味深そうに目を細めた。

獲物を見る目ではない。

難解なパズルを見つけた時の、純粋な知的好奇心。


「神殿の石頭どもが泡を食うのも分かります。これは『信仰』を『技術』で殴り倒すための兵器だ」

「御託はいい。……命令は二つだ」


神官は冷淡に告げた。


「一つ、代表のアルトを『物理的に排除(殺害)』すること。二つ、聖女セレスを『資産』として無傷で回収すること」

「回収、ですか?一度捨てたゴミを?」

「黙れ。……使える部品なら再利用する。それが経営判断だ」


神官の言葉に、ベリアルは声を上げて笑った。


「ハハハ!素晴らしい!さすがは神に仕える身、どこまでも強欲で合理的だ!」


ガキンッ!

ベリアルが腕に力を込めると、鋼鉄の拘束具が飴細工のようにねじ切れ、弾け飛んだ。

彼はゆっくりと立ち上がる。

その背後で、機械触手が鎌首をもたげ、殺意の旋律を奏でる。


「契約成立です。……その『不届きなコンサルタント』には、私が直々に『退職勧告(死)』を届けてあげましょう」


ベリアルは義眼を光らせ、ターゲットの現在地をロックオンした。


「場所は……鉄鋼帝国方面か。ちょうどいい、あそこなら私の『新しい体』のテストも兼ねられる」


最悪の掃除屋が、野に放たれた。

神殿の威信と、市場シェアを取り戻すために。

それは、アルト商会が初めて直面する、「同類プロフェッショナル」からの悪意だった。

※20251130全体の整合性を踏まえて修正しました。

神殿側も、ついに本気(ヤバい奴)を出してきました。

「技術屋 vs 技術屋」。そんなバトルになりそうです。


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