目覚めたら小さな身体
森の木々の間に、朝の柔らかな光が差し込む。
ルシフェル――いや、今は小さな幼児の姿の彼――は、草むらの中で目を覚ました。
「ぐぅ……ぐぅ…」
背中に小さな寝癖をつけ、もぞもぞと体を動かす。
片手で顔を擦ると、まだ子どもの指先がぬるぬるとした感触で、不思議な感覚に戸惑う。
「……う、動け…動けるか……?」
体を起こそうとするも、元のようにすんなり立てない。
足は短く、小さく、力を入れてもふらふら。
「ちっ…これが……俺の体…なのか……」
森の小動物たちが興味津々で集まってきた。
リスが小さな声で「チチチッ」と鳴き、ウサギは耳を揺らしてこちらを見つめる。
ルシフェルは威厳を見せようと、大きく手を振る――つもりが、子どもサイズのためほとんど効果なし。
「……くっ…これじゃ、誰も怖くないじゃないか……!」
デビル級の悪魔として培った誇りと威厳は、まるで泡のように弾けた。
しかも頭の中では、勇者アルトの姿がよぎる。
「あいつ…俺を討ったと思ってるのか……くっ…!」
途方に暮れつつも、ルシフェルは状況を整理する。
•元の体に戻る方法がわからない
•勇者は通り過ぎた
•この森でどうやって生きる?
「……まずは…食べ物か……」
小さな胃袋はすでに空腹を訴えている。
歩きながら草むらや木の実を探すルシフェル。
すると目の前に、きらきらと光る果実が見えた。
「……フフッ…ちっちゃくても、俺の目は節穴じゃない」
手を伸ばすが、枝まで届かず、もぞもぞと跳ね回る。
その姿は、森の小動物たちにとって格好の笑いの種だ。
リスが枝の上から「チチッ」と囁き、ウサギはぴょんぴょん跳ねて応援する。
ルシフェルは必死でジャンプするが、力加減がわからず、ふらふらと転んで顔面を草に突っ込む。
「ぎゃあああっ!」
草に顔を埋めたまま、ルシフェルは思わず泣きそうになる。
しかし、その泣き顔も小さすぎて、かつての恐怖の象徴だったデビル級の悪魔とは別人の可愛さを漂わせる。
そのとき、ふわりと小さな光の粒が舞い、ピコという名の妖精が現れた。
「わぁ!ちっちゃい悪魔さん、こんなところで迷子なの?」
元気いっぱいに声をかけるピコ。
ルシフェルは眉をひそめ、まだ子どもらしい声で抗議する。
「……ちっちゃくないっ…!俺は…最強だっ…!」
ピコは笑って肩をすくめる。
「ふふ、最強の悪魔でも小さくなっちゃうんだね〜」
ルシフェルは、幼児化で威厳を奪われたまま、森での新しい日常が始まることを実感した。
「……くっ…こんな体で、どうやって元に戻るんだ……」
小さな体での冒険、予想外のハプニング、そして森の生き物たちとの出会い――
デビル級悪魔ルシフェルの、ドタバタでチルな幼児生活が静かに幕を開けたのだった。




