表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ちび悪魔とゆるふわ異世界生活  作者: 櫻木サヱ
チビ悪魔、街で大騒動!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/27

悪魔の力、目覚める時

夕暮れの風が、赤く染まった町を吹き抜けた。

パン屋の煙突から立ちのぼる湯気が、いつものようにルシフェルの鼻をくすぐる。

「ふわぁ……パンのにおいって、なんでこんな幸せになるんやろな」

ちび悪魔は小さく伸びをして、満足そうに笑った。


その時、地面が低くうなりを上げた。

「ルシくん!?」とピコが叫ぶ。

空に、黒い裂け目が走る。

──魔界のゲート。

中から、見慣れた紅い鎧の影が現れた。


「……ルシフェル様をお返しいただきましょう」

現れたのは魔界の上級執行官、“紅眼将バルド”。

彼の背から噴き出す闇は、町を覆うほどの圧を持っていた。


ピコが震える声で言う。

「だ、だめだよルシくん! あんなの、今の姿じゃ勝てないよ!」

「せやけど……町の子ら、逃げ遅れとる」

ルシフェルの金色の瞳が、静かに燃え始めた。


バルドの槍が地面を砕く。

吹き飛ばされそうになるピコを、ルシフェルは小さな体で庇った。

「……痛っ。でもな、わし、こう見えても“最強悪魔”やで」

そう笑ったその瞬間、ルシフェルの背に封じられていた黒い紋章が淡く光を放つ。


風が止まる。

時間が静まる。

ピコの目の前で、幼いルシフェルの影が少しずつ伸びていった。


「おいおい……まさか、ほんまに目ぇ覚めるとはな」

声が、少し低くなっていた。

その瞳には、かつて勇者をも恐れさせた“デビル級の輝き”が宿っている。


小さな体のまま、ルシフェルは指を鳴らした。

音もなく、黒い羽が空を舞う。

バルドが目を見開く。

「その力……まさか、封印は──!」

「ちゃうねん。封印はな、ちょっと昼寝してただけや」

ルシフェルの笑みが、どこまでもチルで、どこまでも穏やかだった。


一瞬の閃光。

次に見えたのは、静かに地に膝をつくバルドの姿。

町も、仲間も、誰一人傷ついていない。


風が戻り、子どもたちの笑い声が遠くで響く。

ルシフェルはほっと息をつき、ピコの肩にもたれた。

「……あかん。力使いすぎたわ。お昼寝の続き……してええ?」

ピコは泣き笑いしながらうなずいた。

「もう、しょうがないなあ……世界一チルな悪魔さま」


小さな悪魔は、優しい笑顔のまま眠りに落ちた。

その背中には、薄く消えていく光の紋章──。


そして夜空に、ひとつの流星が走った。

それは、悪魔がまだ“優しかった頃”の記憶を照らすように。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ