2 伝説のパイロットさん先輩兵たちと顔合わせする
学校の教科書には限界まで表沙汰にできる歴史が書かれている。内容を簡単に説明すると
地球連合軍と独立しようとする宇宙合衆国の戦争があった。
宇宙合衆国の敗北と圧政と反発、そして新宇宙合衆国建国と独立戦争、巨大小惑星と宇宙移住コロニー4基を地球に降下させ全長20kmの極大ビーム兵器を地球に発射し、地球連合軍は敗北した。
寒気がすぎ竹林を加え、再生した地球に降り立った新宇宙合衆国は一度、それぞれの勢力に分散し移住する。新宇宙合衆国の中でも軸となった国は名を改めグランパニア国を建国した。
しかし地球連合軍は敗戦後、地下に潜伏し内部からの反社会的、経済的、政治的、宗教的、マスメディア的、暗躍によってグランパニアの盤石な政治支配に意を唱えるラフレシア国を大頭させる。
それにより東の大陸は地球連合軍に静かに着実に奪われていった。
オーバーテクノロジークライシス、謎の小惑星軍に乗って宇宙から無尽蔵に飛来するオーバーテクノロジーを解析したオーバーテクノロジー同士の戦争、人類滅亡手前の第二次星間大戦を経て苛烈な戦火により人類の英知の結晶はその多くが焼き払われ技術力は大きく後退
終戦後、旧人類はラフレシア国を軸にしてついに東の大陸を完全掌握、あえて戦争の忌まわしき名を冠し、反グランパニア国という政治的思想をアピールする名目で新地球連合を樹立、自らを地球の盟主であると暗に宣言する
同時期グランパニア国を中心に地球連邦が樹立、
独立を名目に第二次世界大戦が勃発
オーバーテクノロジーによる核兵器以上の大量破壊兵器同士の戦いは人の細胞すら破壊してしまうほどに戦争倫理に反した凄惨な戦いとなった
そんなことを繰り返すうちオーバーテクノロジーによっていくら肉体を再生しようとも人々の心はすり減り極限まで摩耗していった。
ついにジャブロー条約が締結、すべてのオーバーテクノロジー技術は廃棄され、人類は数世紀分の技術を一度に失い平和を取り戻した。
現在、苛烈な技術競争が繰り広げられ107年がすぎ健全な戦争が実現した。
第三次世界大戦の勃発である
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小規模な基地のドッグに巨大な戦艦があった
ゴライアス級新造戦艦ペリシテ
取調室の中、パイプ椅子の上に座り怖い顔をした軍人と向き合っていた
この怖い顔をした男がラウロ・ザナージ少佐だ。さきほど自己紹介を済ませたのだが彼は一向に俺ことを疑っている
あそこで何をしていた!なぜ我が軍の機体であるロズに乗っていた。パイロットはお前が降ろしたのか!
さてねえ。
この!
頬を殴られるがそのまま前を向く。
この程度の痛みブラジル戦争のときに比べれば手ぬるいと思った
少佐が渋い顔をして椅子に座ると書類を読み上げた
ホラーツ・ギーゼン
30歳
会社員
経歴はすべて偽造。お前スパイじゃないだろうな!
当然違う。俺は傭兵だ。名前だけは本物だがな。
身元不明の外人の傭兵、ふん馬鹿を言え!
戦災孤児でね。子供の頃からBSを乗り回してた
ザナージ少佐が叫ぶ
軍曹!!
はっ!
返事をしたのは密室の隅で息を潜めて棒立ちしていた兵士だった
こいつをどう思う。
連合の青い鷲ヴァジリー・ガゼーエフと言えば大戦時15機を撃墜した凄腕のアドバンスです。
そのアドバンスを撃墜したのは事実、操縦技術に関して言えば逸材かと
血液検査の結果アドバンスは確認されなかった。
ノーマルでアドバンスを撃墜するとは化け物じみた腕前だ。このままにしておくのは惜しくはある。ものは相談だが今日から我が軍に所属する気はあるか?兵士待遇でお前を迎えてやる。階級は軍曹、腕は認めるがそうやすやすと信用する気もない。監視させてもらう。文句があるならいくらでも難癖つけて牢屋にぶち込んでやる。どうする?
それでお願いしましょう。ザナージ少佐
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基地の射撃場には兵士たちが揃って訓練に励んでいた
ザナージ少佐が号令をかけると兵士たちが集まって来るが人数が少ない
昨日の戦闘で大勢戦死したのだろうことはすぐに察した。
男が3、女が2、少年?13歳くらいだろうか。少年が混じっていた。
ザナージ少佐は言った
軍曹、自己紹介をしろ!
はっ、了解であります!
ホラーツ・ギーゼン軍曹であります。よろしくお願いします。
ひとりひとり自己紹介をしてくれる
男
ペッツ・アルマン軍曹だ
ウルフ・シェーグレン曹長だ
ギディオン・ストレイス軍曹だ。
女
テルマ・バスケス軍曹よ。
ヨランデ・ヴォーツェル軍曹さ。
少年
オク・マサルナウ軍曹です。
ザナージ少佐が言った
BSに乗れるのは軍曹からだ。必然的に隊には軍曹が集まるようできている。ギディオン
はっ、
と、ギディオンが返事をする
オク軍曹とまとめて新米の世話を焼いてやれ
はっ、了解であります!
それと明日、補充要員が届く手はずになっている。以上だ。訓練に戻れ!
「「はっ!」」
全員で敬礼をするとザナージ少佐が退室した
さて俺はこの鼻が高く、ヨーロピアン系の肌色と容姿をした軍曹のギディオンから隊の事柄を聞けばいいわけだが
オクが話しかけてきた
よろしくお願いします。ホラーツさん
こちらこそよろしく頼む。オク
13歳くらいの幼い子供だ
なぜその年齢で兵士を?
この間の戦いに巻き込まれたんですよ。
民間人なのか?
ホラーツさんと同じ新兵スカウトですよ。
ふむ、新兵ね。俺は微妙に違うのだが、まあいいか。
ギディオンが言った
彼はアドバンスなのさ。初めて乗ったBSで敵のアドバンスと互角に渡り合ったんだ。
それではこの少年も進化した人類なのだろうか?
きっと彼のBSに対する操縦技術も平均値を大きく超えているのだろう。
この間の敵は連合の疾風、大戦時連邦の多くの兵士を撃墜した最強のパイロットだ
ペッツが話しかけて来た
金髪で体格のいい筋肉質な大男だ。胸のドッグタグが銀色に輝いている。生粋の白人だ
へっ!少佐の推薦とはこいつはすげえ、民間人がそれも二人もいきなり軍曹とはな。
ああ、よろしく頼む。ペッツ
ペッ、
ペッツは床につばを吐く
ここじゃ、俺が先輩だ。同じ階級だからってデカい面するな。
ギディオンが言った
おい、からむなよ。ペッツ、
ギディオン、お前は黙ってろ!おい、おっさん!足を引っ張ったら俺が撃ち落としてやるからな!
若獅子のような男だな。
お前もだぞガキ!
その発言がオクの逆鱗に触れたのだ
オクは言った
はい?人には口の聞きかたというものがあるんですよ。それを適当にするなら人と人はぶつかるしかない。謝罪してくださいよ!
ああああああ?新米が何だその態度は!
先輩なら尊敬できる振る舞いをしてくださいよ!
やろおおおおお!
ペッツが殴りかかって来る
オクがしゃがむと拳をかわしあごに蹴りを叩き込む
動きが素早く正確だ。とても13歳の動きではない。これがアドバンス、進化した人類の力か。驚異的だな。
ぐああああああ!
ペッツがぶっ飛ぶ
ふふふふふふふふふふ、口ほどにもないんですね。先輩!
このおおおおおおお!
ペッツがポケットにあった金属を投げつける
金属はオクの頭上を通過しギディオンの鼻に激突
ぶはあっ!
鼻血が噴き出した
オクが叫んだ
ギディオンさん!・・・こいつうううううううううううううう!
取っ組み合いの喧嘩が始まる
ギディオンが膝を折って呻いている。
やれやれ、
俺は瞬時にペッツのふところに飛び込むと投げ飛ばし気絶させた
さらにオクの手首をつかむとひねってから後ろ手に地面に抑えつけた
2人とも落ち着け。
は、はなせええええええ!
ギディオン、大丈夫か?
ぐ、ぐうう・・・ち、血が止まらない。
片手で通信端末を取り出すとブリッジに連絡をする。
人を呼んだ。おとなしくしていろ。
はなせええええええ!はなせええええええ!
オクの叫びが響いた
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それから止血したギディオンに基地を案内してもらう
オクとペッツは外出禁止命令が出され自室で謹慎処分だ。
ザナージ少佐のおかげで不問に伏され営倉送りにならなかっただけマシだろう。
次の日の朝、新しく兵士たちがやってきた
5人、すべて男だ。歴戦の戦士を思わせる風体、使えそうだな。
自己紹介を手短に済ませる
今日は朝から忙しいからだ
基地内を全員世話しなく動き回っている
準備が整うと国旗でおおった棺桶を全員で並べていく
もちろん棺桶の中には何もない。代わりに詰め込まれた花と故人たちの私物が一つずつ入れられている
国旗を広げはためかせた
前奏に引き続きご唱和ください。国歌斉唱
国歌斉唱を済ませた
兵士たちが一列に整列すると空の彼方を銃で狙った
撃て!
パン!
撃て!
パン!
撃て!
パン!
銃撃が終わると全員が棺桶の前に並ぶ
ソフィアン・ヴィンゲルター
テリー・レッグ
ワレリー・メシチェリン
ハビィ・ビネス
メンチュ・メカ
イヴァーノ・アントーニ
亡き戦友たちに!敬礼!
全員で敬礼した。
いま兵士たちの心は一つとなった。
ファアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
サイレンが鳴る
敵襲!
全員急いで艦内に駆けていく
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男8人が入り乱れるロッカー室でパイロットスーツを着ていく
ペッツがこちらを見ながら言った
おい、新兵ども!足を引っ張るなよ。
俺は平然と答えた
そのつもりはない。
ミスはしないと言っておく。
オクはペッツをにらみつけるも無言でスーツを着ていく
落ち着けペッツ
言葉少なくペッツに注意したのはウルフだ。
ウルフ・シェーグレン曹長は中年の筋肉質な男だ。
歴戦の勇士、豊富な戦闘経験でペッツからも一目置かれる大ベテランのパイロットだ
ペッツも尊敬するウルフの言うことなら聞くようだ
曹長、わかってますよ。
ウルフはパイロットスーツを着ていく
ギディオンが出口の扉から言った
遅いぞ!
ペッツがギディオンとすれ違うときに言った
わかってるよ!
ギディオンが言った
ホラーツ、ペッツのやつのことはあまり気にするな
わかっているさ。
俺はニヤリと笑うとギディオンに言った
実力で認めさせよう
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兵器搬入ドッグに行くとハンガーに並列するように機体が並べられている
ウルフ専用機はカーキカラーにカラーリングされており、肩に狼の頭が刻まれた量産機
連邦で標準装備されている
機体名称はRFー18ロズ
第4世代に位置する優秀な機体だ
・腕部の30㎜ガトリング砲×1基
・ライフルはM160
口径55.6㎜
全長9999mm
55.6x450mm
35000g
その隣にあるのはこの間の戦いで回収した青と赤の特機ペッツが乗り込むようだ
機体名称はLFー21メリカ
連合から鹵獲しカラーリングを変えた連邦のBSだ
第4.5世代に位置する優秀な機体だ
・腕部の30㎜ガトリング砲
・ライフルはM40カービン
口径55.6㎜
全長8509mm
55.6x450mm
26800g
もう一機の特機にはオクが乗り込むようだ
機体名称はRYFー25フィグ、連邦の最新鋭試作BSだ
第5世代BSに位置する。最強の機体だ
・腕部の30㎜ガトリング砲
・ライフルはM40カービン
口径55.6㎜
全長8509mm
55.6x450mm
26800g
俺も鉄橋の上を走り自分の機体へと走る
女兵士のテルマ、ヨランデ、俺も
本来のカラーリングである緑色の量産型のBSロズ
そのコクピットに飛び込みシートベルトを装着
機体に火を入れ
コクピットを閉じる
歩行して滑走路の上に立つと向こう側で誘導棒を持った男が棒を振っている
キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
エンジン音が響き渡る
ホラーツ・ギーゼン、ロズ発進する!
ジュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
轟音を立てて、滑走路を高速で移動していく。
そして滑空、見る見る高度を上昇、コントレール「飛行機雲」を描いて大空を横断していく