96 元通り
石山合戦完結です。
意外にほんわかした話で終わらせることが出来ました。
※実際にこの4人で話し合ったら絶対荒れるはずだったのにな…。
さて、慶松改め吉継の元服を無事に終わらせた僕は翌日、安土城に秀吉様と共に呼び出された。
「なあ、孫四郎。おいらたち何かやらかしたかな?」
そうは言っているけど何やら嬉しそうじゃないですか、秀吉様。まあ大体理由はわかるけど。
「さあ?もしかしたら昨日の元服で清正殿に飲ませすぎたのがばれたとか?」
「それだったら孫四郎だって吉継が襲われている中、堂々と寝ていたのがばれたんじゃないのか?」
「…もしそうだとしたら信長様は相当暇だということになりますけどね。」
「そうだな。…おっとそろそろ来そうだぞ。」
確かに。足音が聞こえる。早めに頭を下げておこう。
「秀吉!孫四郎!久しぶりだな。元気そうで何よりだ。」
「ご無沙汰しております、信長様。お元気そうで何よりでございます。」
「うむ。…では本題に移るぞ。秀吉は何も言わなくてもわかっていそうだな。」
「はい!…因幡―」
「違う。但馬だ。」
但馬?…あ、そうだった。兵庫って昔、播磨と但馬、摂津、丹波に分かれていたんだった。今統一しているのは播磨と丹波のみ。このうち摂津は今年中に何とかなりそうだけど但馬はすっかり忘れていた。
「秀吉もうっかりすることがあるんだな。」
「…はい。我ながら情けない。」
「まあ人間、誰でも失敗はある。余もよく物事を忘れるからな。…で、但馬に行ってくれるな?」
「…もちろんです。何なら鳥取城も年内に落として見せましょう。三木城でかけすぎた時間をここで取り戻して見せまする。」
「その意気だ。では支度が整い次第行け。」
「はっ。」
そう言って秀吉様は部屋から出ていった。
「…孫四郎は話が多いぞ。」
え、まさか本当に悪いことしちゃいました?
「まずは信忠と信澄の件だな。」
ギクッ。それは、確かに…。
「その節は誠に―」
「何、怒っているのではない。…むしろ感謝しておる。息子たちには余とは違う輝かしい道を進んでもらいたいからな。本当にありがとう。」
…急に褒められても困るな。
「…孫四郎は次、どこに行くかわかるな?」
急に質問が来た。話をすぐに変えるのが信長様らしい。
「…加賀でしょうか?」
「流石だな、孫四郎。3日前までは余もそうやって考えていた。だが、今は違う。」
違う?但馬は多分秀吉様1人で十分だし四国は暗黙の了解で攻めなさそうだし…信濃?
「蘭丸、入れ。」
「はい。」
蘭丸?…まさか、森家の!
「お久しゅうございます、孫四郎様。」
「…久しぶりだね、蘭丸。元気にしてた?」
「はい。孫四郎様もお元気そうで何よりです。」
「…ゴホン!お前たちの会話は後にしろ。…本願寺から和解の申し出が来た。条件によっては飲んでもいいかと思っている。その使者を蘭丸にやらせようと思ったが、ちょうど孫四郎がいるならお前に監視してもらった方がいいかと思ってな。」
つまり僕の役割は蘭丸を見守れということね。で、行き詰ったら手助けをしろと。…引き受けるか。可成様との約束もあるし。
「畏まりました。」
「蘭丸は孫四郎だったらどう言うかを考えながら本願寺と交渉すること。良いな?」
「はい。必ず良い知らせを上様に知らせます!」
元気があるのはいいことだけど…蘭丸にこの任務は難しい気がする。まあ、僕がサポートするから死ぬなんてことにはならないと思うけど。
2月3日
「準備できた?じゃあ行くよ。」
「はい!孫四郎様と初めての馬に乗ってお出かけ出来るなんて幸せです!」
それだけで幸せなんて…嬉しいような寂しいような。
「長可殿とは上手くやってる?」
「いつも仲良くやってますよ。…でも最近の兄上は信忠様に仕えるようになってしまったので中々会えませんけど。」
そうか。しばらくは長可殿に会えないのか。また東に行く機会があったらちょくちょく会うようにしないとね。
「孫四郎様も今日は楽しそうですね?」
「え、そ、そうかな?いつも通りだと思うけど?」
「またまた。昔遊んでもらった時に孫四郎様の癖とか性格とかは全て把握してますよ。」
…え?
「孫四郎様の癖はわかりやすいですよ。上様よりも。」
「それは言えるかも。僕は信長様よりはわかりやすい性格だもん。」
そんな会話をしているうちに本願寺に着いた。
色々手続きを終えた後、茶室のような場所に通された。
「おや、見覚えのある顔の子だ。」
いきなり話しかけられてビックリしたよ。あ、あの時の…。
「あの時の御坊様ですね。前田孫四郎利長です。そこにいるのは…。」
「森蘭丸です。」
「本日はよろしくお願いします。」
「信長は若造を出してきたか。ふむ。拙僧のことは顕如とお呼びなさい。」
「教如でございます。」
優しそうな御坊様が顕如で若いお坊さんが教如か。
「今日は2人で拙僧たちを説得しようと?」
「あ、いえ。私はあくまで補助役です。今日は蘭丸に話し合ってもらいます。」
「野田・福島の時の其方の恐ろしさは忘れておらぬ。それを使わぬと言うことは…わかった。拙僧も補助役としよう。」
「え、いいのですか?」
「まあ、拙僧はわかっておる。1勝5敗で我らに有利な条件で結べるはずがない。だったら拙僧ではなく息子に戦ってもらった方がいいと思ってな。」
1勝5敗?僕らからしたら5勝1敗ということか。勝ったのは淀川、第二次木津川口、長島、越前、天王寺。負けたのは第一次木津川口か。
「…始めようか。」
「はい。」
~蘭丸視点~
まずは条件提示かな。
「こちらとしては
一.織田勢は和睦後、早々に撤退する。
二.顕如、及びその一族は和睦後、紀伊国鷺森御坊に退去する。
三.―
以上でございます。異議はございますか?」
私は合計7つの条件を相手に提示した。
「…三~七はいいだろう。だが一と二は納得いかない。せめて御坊を元通りにしてもらわねば私は撤退いたしかねる。」
元通りか。元通り、元通り。もし孫四郎様だったら…そうだ。
「わかりました。では
一.織田勢は和睦成立後、1か月以内に御坊を元通りにしてから早々に撤退する。
二.顕如及びその一族は和睦後、紀伊国鷺森御坊に退去する。但し教如のみは元通りになったのを確認した後、退去する。
これでよろしいでしょうか?」
「…まあよいだろう。これ以上戦を長引かせたら仏の罰を受けるからな。」
決まった。…罠に引っかかってくれた。これで本願寺は終わった。
~孫四郎視点~
会見が終わった後、僕は顕如様とお茶を飲みながら雑談をする。
「教如殿は甘いですね。あんな罠、誰でもわかるはずですが…。」
「まあ仕方があるまい。正直、拙僧は生き残れただけでも感謝しておる。」
「…本当に良いので?お嫌でしたら本当に元通りにしますが。」
「いや、構わんよ。まさか家康と同じ手を使うとは思わなかったが…。」
何か申し訳なくなってくる…。
「顕如様はこれからどうするので?」
「人のためになることをやっていくつもりだが…。」
「慈善活動ですね。」
「そうじゃの。…不思議じゃの。10年前はこの地で戦っていた我らが今、普通に話しておる。」
「そうですね。今日、話している間に顕如様はそんな悪い人じゃないのかなって思えるようになりまして…。」
「…そんな其方にならこれを渡しても構わぬかもしれぬな。」
そう言って顕如様は懐から書状を出した。
「これは?」
「読んで見なされ。」
そう言われるがままに書状を読んだ。…佐久間様、これであなたは終わりましたね。もうあなたには騙されない。
2月7日、石山本願寺は突然燃え始めた。教如はそこで蘭丸が仕掛けた罠に気づいたのだ。元通りとは寺が立つ前の状態と言うことに。残念なことに教如はお金を持っていなかったので1人で寺を立て直すことが出来なかった。そのため彼は本願寺を立て直すために各地に流浪の旅をすることになる。
一方、顕如は信長や孫四郎と急接近をする。特に信長は茶器が好きという共通点からやがて定期的に茶会が開かれることになる。さらに孫四郎も茶器の魅力に気づくことになるが…それはまた別の話。
まさかの顕如が重要人物に昇格する時が来るのか。それはまた先の話までわかりません。
佐久間の書状とは一体何なんでしょうね。次回はと一旦手紙を離れて但馬・第一次鳥取城の戦いです。無理やり1話にまとめたのでかなり長めになってしまいますがお許しいただきますとありがたいです。
次回の投稿日も未定です。




