94 前へ進もう、理想の世には一歩一歩近づいているよ!
前半はお固く、後半は久しぶりの緩い話です。
前半の終わり方が中途半端になってしまっているかもしれないです。ごめんなさい。
今回は通常回の1,5倍の長さです。
天正八年に入った。
正月6日に宮ノ上砦を、11日には鷹尾山城を取ったことにより別所軍の士気はさらに下がった。13日、とうとう別所長治は降伏を申し出てきた。
「…長かったな。孫四郎、久太郎。巻き込んで申し訳なかったな。もうあとちょっとで帰れるからな。」
「本当に長かったです。…処分はどうするので?」
「そうだな。…お前ならどうする?」
僕に聞きますか…。
「…僕だったら別所吉親の切腹で城兵の命を助ける。これぐらいでいいのではないでしょうか?」
「…十分普通じゃないな。だが、同感だ。別所長治と友之は助命しても構わんと思っておる。積極的な攻めには出なかったことを理由としてな。」
そう。今回の主犯は長治の叔父の吉親であることが取り調べにより判明した。まあその裏に例の名ばかり将軍様がいたことは言わなくてもわかっていたけどそれでもまさか当主ではなく叔父が唆したというのが意外だった。浅井家に似ている事例だな。
「ではその条件でよろしいですね?」
「ああ。さあ官兵衛。早くこの戦を終わらせに向かってくれ!あ、小六殿も一応ついていってくれ。騙し討ちがあったら困るからな。」
「畏まりました。」「任せておけ!」
威勢があっていいことだ。…まだ気を抜いてはいけない。秀吉様の言う通り、ここから騙し討ちが起こる可能性も無きにしも非ずだからね。
~別所長治視点~
「それが、秀吉殿が提示する条件か。」
「はっ。此度の戦、長治殿が表向きに関わっていないことは複数の将兵から聞いて事実だと承知しております。これからは秀吉様に―」
「ありがたいことだが辞退させて頂く。」
自分でも驚くぐらいはっきり言えた。
「…何故?」
「此度の戦は止められなかった某にも罪があります。よって別所一族の切腹。これを条件とさせていただきたい。」
「…そうですか。では三日後に再び来ますのでそれまでに準備をよろしくお願いします。」
変わっている使者だな。まあいい。俺のやることは変わらないのだから。
「何⁉其方も死ぬとな?」
「はい。此度の戦、立ち上がってしまったのは私です。よって叔父上だけ死ぬというのは道理に―」
「この大馬鹿者!わしが死ぬのはともかく、何故まだ若いお前が死なねばならぬ!…おのれ、こうなったのは全てあの将軍様のせいじゃ!あの者を討ちにいく!」
この間と言っていることが矛盾している。…止むを得ない。
「すまぬ、叔父上。」
そう言った瞬間、俺は叔父上を刀で刺した。
「な。…そうか。それが其方の…。」
叔父上は絶命した。…こうなった以上、俺も死なねばならないな。
「友之、介錯は頼んだ。」
「はっ。…後から拙者も追いかけまする。絶対に1人にはさせませぬゆえ。」
そうか。小八郎もそうだったがやはり我ら兄弟は最後まで仲が良かったな。
さあ、いこう。新たな時代を迎えるために。
~孫四郎視点~
別所長治が切腹した。何故だ。何故自ら命を捨てた?僕だったら罪を悔い改めて秀吉様の下で一生懸命働こうと思ったはずだ。
「…帰るぞ、孫四郎。皆心配しているだろう?」
「…秀吉様、私にはまだわからないです。皆が何を考えているかなんて。」
「…。俺も長い付き合いでもない限り人の考えていることなんてわからない。それでも、それでもおいらたちは一歩一歩、前に進んでいかなくちゃいけないんだ。昨日までの友が死んでも、目の前で仲間を失っても、な。」
すごく重い言葉のように感じる。長年実戦を積んできた秀吉様だから言えるのだろう。
「そうですよ。私たちは、止まらない。皆が笑って暮らせる世を作れるまでは。」
先生。そうですよね。
「わかったな、孫四郎。」
「はい!孫四郎も皆が幸せに暮らせる世を作れるまでは前を向き続けることを誓います!」
「よしよし、いい子だ。」
そんなに頭をガシガシしないでください。剥げちゃうでしょ?…でも何だか嬉しいな。
早く帰ろう。桜たちが待っているから。
1週間後
久しぶりに帰ってこれた。…怒ってるかな?3年ぶりに帰ってきたからちょっと怖い。…入ろう。
「ただいま帰りました。」「あれ?皆様いませんね?」「なーつー?」
見事に皆、第一声はバラバラだった。2人とも最初に言う言葉はただいまでしょ?いや、久太郎さんは定期的に帰っているから慣れているのかな?
「…居間に行こうか。」
「そうですね。」「もしかしたら何かあったのかもしれないね。」
何かって何ですか!久太郎さん。色々な意味で怖くなってきた。
「誰かい―」
パーン!パーン!
ビックリした!何か爆発したかと思ったじゃん!ってこれはクラッカー?
「孫四郎様!お帰りなさい!」
「「「お帰りなさいませ!」」」
嘘でしょ。これ全部、桜となつと万福丸が作ったの?前世のパーティ会場みたい。
「慶松殿もお帰りなさい!」
「ま、万福丸殿。これは一体…。」
「なつが3年ぶりに帰って来るんだしせっかくなら打ち上げしない?って提案してきたんです。どんな感じかはよくわからなかったんですけど言うことをしっかり聞きながらやったらこんな風になりました!」
桜、説明が雑過ぎない?でもそれだけでも何となくわかった。
「ありがとね、皆。僕は今、一番幸せだよ!」
「あれ?孫四郎様が珍しく子供みたいに振舞ってますね?」
「いいじゃない。たまには孫四郎さんも楽にさせてあげようよ。僕とは違って孫四郎さんも慶松もずっと帰れなかったんだから。」
「そうですね。…久太郎様も無事帰って来てくれて良かったです。」
「なつも、お留守番守ってくれてありがとう。」
「…!そ、それぐらい誰でも出来ますよ…。」
2人ともいい感じじゃん。…僕も楽しませてもらうよ!
楽しいパーティも終わり、皆で後片付けをし始めた。
「今日は本当にありがとね。…寂しかったよ、ずっと会えなくて。」
「私もですよ。いつ帰って来るんだろう、もしかして死んじゃったのかななんて…。」
「まあ今回の戦も何度か死にかけたよ。でもその度に僕は仲間に助けてもらった。だから今の僕はここにいるんだよ。」
「…前よりも一段と逞しく見えますよ。旦那様。」
だ、旦那様⁉
「え、ええと、その。」
「わかってますよ。でも、今だけならいいじゃないですか?永姫様が来るその日までは。」
そっちの問題?いや、僕はそういう意味で焦っているんじゃないんだよ。ええと、その…。
「フフフ。まだ、孫四郎様も子供なのですね。」
「当たり前でしょ。元服したとはいえ数えでまだ19だよ。…そういえば数年前は今ほど余裕がなかったな。」
「…私がこの家にやってくる前の話ですよね?」
「うん。最初はただひたすら信長様のために働いていたけど段々目的が変わってきたんだよね。昔から考えたら相当な出世だよ。7歳で信長様に仕え始めて9歳で鉄砲隊長になった。それから気づいたら軍師のような司令官のような立場になっていたんだ…。あっという間だったな。」
「皆様から早い、早いと言われていた久太郎様より早い出世でしたから当時の孫四郎様は相当、緊張していたのではと考えてしまいますが…。」
「ドンピシャ…じゃない、正解だよ。でも皆優しかったからそんな緊張もすぐ吹っ飛んじゃったけどね。」
「やっぱり孫四郎様は人との付き合いが上手ですよね?」
「昔から父上や母上から人付き合いは大切にしなさいって言われてたからね。…さて、片づけ終わったね。お風呂入ったら久しぶりにやる?」
「…どうしようかな~?なんて。」
「え~⁉」
「冗談ですよ。…そんな孫四郎様も私は好きです。」
どういうこと?…そういうことか。
「僕もだよ。…これからもずっと一緒だよ、桜。」
「はい!約束ですよ!」
本当に幸せだ。時よ、どうか僕たち以外の時間を止めてください。なんて言っても止まらないよね。
そういえばもう19か。前世は22で死んだ。流石に22では死にたくないな。今の僕には大事な家族がいる。家族を守るために僕は絶対にこの乱世を生き残って見せる。絶対に。
「顔、怖いですよ。孫四郎様。」
そんなに怖い顔してたかな?まあそう言うならスマイル、スマイルで風呂に向かおうかな。
「ちょっとなつ!そんなにかけないでよ!」
「たまにはいいじゃないですか!えいっ!」
…何も聞かなかったことにしよう。
次回は石山合戦を完結させる予定です。
いよいよ100話が目前に迫ってきました。ここまで来れたのは皆様のおかげです。本当にありがとうございます。
これからも多くの人にこの小説を読んでもらいたいです。どうか、最後まで応援していただけると嬉しいです。




