82 絶望の炎
更新できてなくて申し訳ないです。
数日前
さて、周りには中川殿以外誰もいないな。では話を始めますか。
「僕はよく信長様に嘘の報告をするんですよ。」
「例えば浅井万福丸事件か?」
何で知っているんだ?あれはそんなに有名じゃ‥秀吉様だな。あの人は何を言い出すかわからない。
「…ええ。でも信長様にはいつも許されるのです。不思議ですよね。十兵衛様や佐久間様は許されないのに。」
「それは織田家にとって良い方向に行く嘘しかつかないからであろう?」
どういうこと?話しかけ方を間違えたかな…。
「まあよい。とりあえずその策とやらを教えてくれ。」
「はい。…信長様はしばらくしたらしびれを切らして燃やせと誰かに命じるでしょう。今の信長様は短気な性格を演じていますから。」
「演じている?」
「そうですよ。あの方は皆を‥おっと脱線しそうになった。で、燃やせと言われたらどうすればいいか。それを説明する前にこの地図を見てもらった方がわかりやすいですかね。」
そういって事前に半兵衛先生にもらった有岡城内の地図を見せた。
「…!地下道だと⁉」
まだ僕何も言っていないんだけど。この人もしかしたら何かしらの才能があるんじゃないか?
「…はい。その地下道を使うと何と尼崎の方に抜けられるんですよ。」
「でも尼崎は荒木殿の―」
「先に落としておくんですよ。でも信長様を心から敬っている一益様に任せるのと後始末が難しい…そうですね、私が信澄様や信忠様辺りに書状を出しておきますか。それで尼崎城を落としてもらいます。あの2人ならきっと逃げる荒木家の方々を悪いようにはしないはずですし。」
「ちょ、ちょっと待て。お主は何を―」
「信長様には任せられないんですよ。あの方は無茶して自分を魔王と化してこの国を統一しようとしていますから。」
先走ってる?いや、これはある意味自分という人間をわからせなくするための作戦なんだよ。
「多分荒木殿はこの地下道を使って逃げるでしょうからそのお手伝いをする―」
「…わからんがわかった。要は尼崎を先に落として荒木殿が逃げるより先に落とす。で、有岡城から避難を始めた荒木殿を尼崎城に俺が先に行くことで荒木一族を無事に逃がせる。そういうことか?」
合っているような、合っていないような…。
「ま、まあそんな感じです。」
「わかった。…ご武運を。」
「ご武運を。」
~信忠視点~
孫四郎から手紙が来た。曰く、
「お久しぶりです。いつもお勤めご苦労様です。孫四郎です。
さて、いきなり本題に入りますが信忠様にお願いしたいことがあってこの度は書状を出させて頂きました。
それは、尼崎城の攻略についてです。
部隊は信忠様を総大将として副将に信澄様、そして丹羽様、信孝様が補佐役として向かってもらいたいです。
なぜ尼崎城を落とすのか。それは有岡城と尼崎城は地下通路で繋がっていて万が一、有岡城が落城寸前に陥ったとしても容易に逃げ出すことが可能だからです。
尼崎さえ落としてしまえば頭のいい荒木殿は1人で勝手に花隈城に逃げ出し、一族の方は尼崎に逃げることでしょう。
ですが尼崎城を落としたことを信長様に知られるわけにはいきません。
もし信長様が知ったらきっと信忠様たちに尼崎で妻子・農兵共々殺せ!などと命ずるに違いありませんから。
なので心から信長様を慕っている方々(一益様や父上など)はくれぐれも部隊に入れないでください。
これは貴方様と信澄様にしかできないことだと思っています。どうか、罪のない人々を守るために検討をお願いします。」
難しいな。仮に父上にばれたら私はどうなってしまうのか‥。
「信忠様!」
「信澄兄者か。その反応からして其方の下にも来たらしいな。」
「どうされますか?勝手な行動を取ったら信長様に―」
「兄者は孫四郎が私たちのみに手紙を出した意味をわかっていないのか?」
「…わかりますよ。罪のない兵士を尼崎から逃がせってことでしょう?そもそも此度の戦は色々おかしいのですよ。荒木殿らしくない戦い方をしている時点で―」
「それ以上言ってはならぬぞ、兄者。皆、薄々気づいているのだ。この戦には黒幕がいると。でも父上はそれをわかっていて恐ろしい策を行おうとしているのだ。父上の暴走を阻止するために孫四郎は、いやあの2人は色々考えてくれているのだ。それとも兄者は父上のことを本気で慕っているのか?」
「…確かに信長様には、叔父上には命を助けてもらった御恩がある。だが、今の叔父上には罪のない者への優しさを感じられぬ。」
「であろう?だったら我らが取るべき道は決まったな。」
「ええ。…尼崎を取りましょう。」
7月2日、信忠と信澄は尼崎城攻めを開始した。城主の荒木村次(村重の子)は急に攻められたことに驚いたのかその日のうちに花隈城に逃げ出してしまった。結果、尼崎城は無血で取ることに成功した。
7月4日
~中川清秀視点~
城が燃え始めた。右近の奴、何のためらいもなく燃やし始めたな。
「瀬兵衛殿!本当に大丈夫なんじゃろうな?」
そう聞いてくるのは荒木久左衛門だ。以前は池田知正と名乗っていたが荒木殿に名を変えるよう言われて変えたらしい。
「大丈夫だ。死にたくなければ絶対に俺から離れるなよ!では尼崎に行くぞ!」
荒木殿、あなたが見捨てた家族や家臣は何とか守り切れそうです。
~信澄視点~
「中川瀬兵衛殿が荒木殿の親族を率いてやってきているようです!」
「承知!船頭に出航の準備をするように伝えよ!それから信忠様に城に油を用意するように伝えよ!」
「わかりました!」
急げ!信長様にばれたら終わる。いや、いずれはばれるだろうな。せめて一刻でも長くばれぬようにせねば…。
「信澄様!」
ようやく来てくれたか。
「瀬兵衛殿!その道を下った先に船を用意してある。確か700人だったな。7隻に別れて乗せていってくれ!」
「わかりました。久左衛門殿!すぐに皆を7つの船に乗せてくれ!」
「え、あ、船?行先は?」
「淡路だ。あそこはまだ信長様の手が入っていない!…早く乗ってくれ!ばれるのも時の問題だぞ!」
「わ、わかりました!皆!早く船に乗るのじゃ!」
「兄者!火をかける準備が出来たぞ!」
「まだかけないでください!今かけたら600人以上の犠牲者が出てしまいます!」
「わかった!…それにしてもすごい人数だな。乗り切れるのか?」
「流石に7隻あれば足りるでしょう。」
早く乗ってくれ。信長様にばれる前までに!
四半刻後
「瀬兵衛殿、これで乗り切ったかな?」
「いや、まだ50人ほど‥あ、来た。お前たち何をしているのだ!」
「申し訳ありません!ですが、宇兵衛がこけてまだ後ろに30人ほどがこちらにこれておりませぬ。」
「どうしましょうか、彼らで最後にしないと、もう…。」
「…もう行かせましょう。助けられる命まで犠牲にしてはいけませぬからな…。」
瀬兵衛殿…。
「船はすぐに出航せよ!信忠様!焼き始めてください!」
すまない、皆。すまない、孫四郎。
地下通路
この通路にはまだ30人が城から脱出しようと逃げ続けていた。
「急げ!まだ間に合うぞ!」
「すまねえな。皆を巻き込んでしまって。」
「気にするな!生き残ったら宇兵衛が作った米を多少もらえれば…嘘だろ。」
彼らが目にしたのは炎々と燃え盛る火であった。
「有岡城に戻ろ―ぎゃあああああ!」
「来太!…くそっ!ここまでか。」
逃げ遅れた30人は地下通路内で有岡、尼崎両城から迫ってくる火に呑まれ焼け死んでいった。
数十人が亡くなった理由、そして信忠と信澄の絆を書いた回でございました。
実際には有岡城に地下通路はございません。ですがその通路があった方が話としては面白いかなって思って勝手に作りました。
荒木家の方々を逃がすために半兵衛や孫四郎は一生懸命策を考えました。そのことを知っている信忠と信澄は彼らに協力して、罪のない人々を助けようとしました。しかし世の中全て上手くいかずに数十人の人は助けられずに炎の中で亡くなってしまった。というのが今回の話のまとめです。
次回で対荒木戦はフィナーレを迎える予定です。村重が迎える最後はどうなるのか。どうか、気長に待っていただけると嬉しいです!




