71 久秀の裏切る理由
今年中に4章終えられなくてごめんなさい。
ようやく帰ってこれた。さて家でゆっくり休みますか。
「ああ疲れた。後で信長様に報告しに行かないといけないのに何か気が緩んじゃうな。」
「此度の戦でも大将の首に致命傷を与えさせたと聞きましたが。」
「僕って不思議だよね。そこにある銃を握るだけで人格が変わっちゃうんだもん。」
「そうでもないと思いますけどね…。」
そんなに怖いかな?
「でも孫四郎様がこの世界で1番優しい人だということは皆知ってますよ。」
「どうだかな。久太郎さんなんか謙信の首に狙い撃ちしてからずっとビクビクしていたよ。」
「それは違うよ、孫四郎さん。」
勝手に部屋に入ってこないでよ、久太郎さん。…あれ?
「もしかして2人って…。」
「あ、バレた?」
何で久太郎さんとなつが一緒にいるか、答えは1つしかない。
「…2人の性格からしてどちらかが強引にお願いと言った感じではないよね?」
「恋愛下手な2人が結ばれるとは思わなかったですね。」
「「何でそんなことしか言えないの!」」
そこまで怒らなくていいじゃん。…似合ってるよ。2人とも。
「で、違うってどういうこと?」
「震えていた理由は上杉に対してだよ。正直、孫四郎さんが何を見せたいかはわかってたし『あ、やっぱり狙撃手としては優秀だな。』って感じたぐらいだし。」
「それ失礼じゃないですか?まあいいけど。」
「…久秀殿がまた謀反を起こしたよ。」
ここでまた裏切るか。フフッ。あの人だけはやっぱり変わってないな。
「天王寺砦を焼き払って信貴山城で籠っているんだって。…何してるの?」
「今回は白い服で行こうと思うんだ。あの老人を殺してはいけないからね。」
「どうして?もうあの人はもう2度も謀反を起こしているんだよ?」
「違うんだ。久秀殿の謀反は信長様を殺したいがためにやっているわけじゃないんだ。」
「…そういえば前にはそのこと話してくれなかったよね。何であの人は裏切りを続けるの?」
「それはね―」
とある日の孫四郎と久秀の会話
「あ、久秀殿。この間裏切りましたよね?信長様は許してくれましたけど私は許してませんよ。」
「孫四郎殿、私が何も考えずに謀反すると思えますか?」
「…そう言われると確かに何か引っかかりますね。」
何でこの人は裏切りを続けるんだろう。
「理由は3つ。1つ目は信長殿に忠義を尽くし続けた者でも腹の奥底では許していないものもいるんだぞというのを伝えるため。」
「確かに織田家内には心から信長様に仕えている人は少ないですからね。…2つ目は?」
「2つ目は織田家の皆に裏切ったらこうなるぞと伝えるため。ですが信長様は許してしまう。甘い。あの方は甘すぎる。これでは皆裏切りまくってしまうのにあの方は裏切り者にさえ情けをかけてしまう。長政殿もそうでしたな。」
浅井長政殿にも最後まで生き残させるために色々な降伏条件を送ったね。でも最後は…。
「天下は織田家に傾いています。でもあの人は間近に敵が多すぎる。荒木殿や別所殿のような明らかに裏切りそうな輩。そして十兵衛や秀吉のような平和を願う者。今は従っておりますがいずれどちらの怒りも爆発するでしょう。」
秀吉様が?…あり得る。
「そんな中で織田家に天下は取れようか、いや出来ない。だがそんな輩を無理やりにでも寝返らせないようにするためにはどうすればいいか。答えは簡単じゃ。わしが裏切って死ねばいい。なのにあの方は―」
「3つ目は何ですか?」
話が長くなりそうだったので無理やり変えた。
「それは生まれ変わって自分の思いのままの国を作りたい。ということだ。」
「生まれ変わる?」
「人というのは不思議なことに生き返れる場合もあるのですよ。もうこの世界にはうんざりじゃ。だから私は民が豊かに暮らせる世を作ってみたい。この世界では無理だろうが別の世界に行けばきっとうまく行ける。」
そんな考えの持ち主には思えないんだけどね。
「でも久秀殿は―」
「わかっておる。でもそれも理由があるのだ。長慶にお前は悪人になれと言われて―」
「そうだったのですね。…ハハハッ。ようやく久秀殿のことを知れた気がします。」
お互いに話を先読みしまくって会話になってないね。
「今の織田で未来があるのは十兵衛と孫四郎だけだ。だが2人の性格は全く違う。それが合わさると強いのだけどな。」
~ ~
「危険な爆発物が出来ましたな。」
「ええ。これも火関係に詳しかった一益様と久秀殿のおかげ。本当にありがとうございます。」
「いや、一番すごいのは孫四郎殿ですぞ。」
「…何も言えませんね。」
「そこはいえいえとか言うべきでしょうよ。」
「私、正直にしか話せないので。」
「…少しは大人になってほしいものですな。」
「いずれ身につけていきますよ。」
「ハハハ。…孫四郎だけだぞ、わしと話してくれるのは。」
「久秀殿と話していると楽しいですもん。…来年は忙しくなりそうですよ。久秀殿はどうするのです?」
「最後の悪あがきをしましょうかね。」
この時に悪あがきの意味を理解しておけばよかったと今になって後悔している。
前田・堀邸
「わかりました?」
「何となく。これ以上聞いても理解できる気がしないからこれでいいや。…でも白服の理由は?」
「私の覚悟の表れです。準備ができ次第行きますよ。」
久秀殿は悪のように見えて実は優しいんだよ。あの方とは違って。殺すわけにはいかない。
10月1日には信貴山城の支城、片岡城が落城した。3日には信長様から信忠様と一緒に信貴山へ向かえと言われた。
「では行ってきます。」
「気を付けてくださいね。」
「わかってるよ。…この戦が終わったらあれをやってもらっていい?」
「え、あ、いいですよ…。」
「なーにやってるの、孫四郎さん。」
あ、バレた。久太郎さんが見ていない間に約束したつもりだったのにな。
「な、な、何でもないです!…行きましょ。」
「ごまかしきれてないけど…まあいいや。行こうか。」
5日からいよいよ信貴山城の戦いが始まった。戦況は一進一退だった。このままなら久秀殿に逆転勝ちされるかもしれない。
「順慶、十兵衛、藤孝。其方らは一旦下がれ。ここは我らに任せよ。」
「信忠様、私はまだ戦えます。あの憎き久秀をどうしても討ちたいのです。」
「それは最終手段だ。先に使者を送る。孫四郎、其方は久秀と仲がいいだろう?」
「え、あ、はい。そうですけど…私でいいのですか?」
「其方しかおらぬ。一益に聞いたぞ。久秀は其方と話しておる時はなぜか笑顔でいると。」
困ったな。…いや、僕が行こう。
「わかりました。」
信貴山城
城門の前まで来たらまずは来た事を報告…じゃない伝える。(?)
「織田家臣前田孫四郎と申します。久秀殿とお話がしたくて―」
「孫四郎殿。そろそろ来るとわかってましたぞ。」
久秀殿が城内から歩いてやってきた。
「…護衛はなしか?」
「はい。…最後のお話をしましょう。久秀殿。」
「またですか、久秀殿。」
「先に其方には言っていたであろう?」
「まあそうですけど…。」
「…最後の話と言ったな?わしの覚悟がわかっているということだな?」
「僕も覚悟を決めてますよ。この甲冑を脱げば…いつもの緑ではなく白装束ですよ。」
「其方を殺すつもりはないのだがな。とりあえず、「お茶をどうぞ。え?」」
同じことを考えてたか。
「…腹黒いぞ、孫四郎。ここで殺そうとするなんて。」
「…頂きます。」
久秀殿、気づいてるんでしょ?ここで飲まなくちゃいけないことに。
「な、何をしておる?」
「美味しいです。ここで毒を入れるわけないことぐらい知ってますよ。」
「…負けた。警戒して飲まないと思ったのにまさか互いに用意して飲み合うなんて一体誰の考えを受け継いだらそうなるんだ?」
「半兵衛先生、父上、信長様、柴田様、秀吉様、成政様、可成様、賦秀さん…たくさんの人の教えを受け継いだだけですよ。もちろん久秀殿の教えも受け継いでますよ。」
「確かに今の茶は秀吉の親切心であり私の騙し心でもあり、そして信長の恐怖心でもあった。」
「上様の恐怖心は2年前に捨てたはずだったんですけどね、また出てきてしまいましたよ。…さあお飲みくださいな。」
「…普通にうまい。お礼に茶器を送ろう。」
「ありがとうございます。…さて本題に入りましょうか。」
「信長殿の下に戻れというのだろう?無理だ。わしはもう決めた。ここで死ぬ。其方と話をしたら火を点けて自害するぞ。」
「そう言うのはわかってましたよ。前に話してたじゃないですか。民が豊かに過ごせる世を作りたいって。」
「…お前は何で白装束何か着ているんだ?別に死な…これは半兵衛の騙し術か。フフフ。やはり其方は面白いの。…この世界での天下泰平はお前たちに任せた。信長に取らせるも良し、お前が取るもよし。全て自由よ。それとわしが死んだ理由は他の奴らには火遊びをしていたら自分の体に燃え移って死んだとでも言っておけ。」
「ごまかしきれるかわかりませんけどね…。まあ何とかしますよ。」
「金ヶ崎から世話になったな。…ありがとう。」
「こちらこそ。爆薬作りの思い出は絶対に忘れません。久秀殿の思いも孫四郎は背負い続けますね。」
「背負わなくてもいいが…でも出来るならやってほしい。…時間じゃ。行け。」
急なお別れになっちゃったね。久秀殿は悪い人じゃないんだよ。でも、でも…。
天正五年十月六日 松永久秀自害
本当にごめんなさい。
体力的にこれが限界でした…。
皆様良いお年をお迎えください。




